4TEEN 石田衣良
今日は通院日。長い診療の待ち時間に、昔読んだ石田衣良の「4TEEN」を読み返した。この読後感は、なんて爽やかで気持ちがいいんだろう?四人の主人公は、どこにでもいそうな中学生だが、彼らの繰り広げる世界に、中年の私が、気がつくと夢中になり惹き込まれてしまっている。仲間との友情・恋・性への目覚め・病気・暴力・死との対峙、そして未来への願望等、重要なテーマを網羅しつつも、あの年代の持つ等身大の悩みを、ごく自然にさりげないタッチで描いてくれる。自分の忘れていたあの頃を、思い出さずにいられなくなる。当時バスケ部で、まともな本も読まず、ペリーローダンのSFモノや陸奥A子の漫画を読みあさり、音楽はユーミンかビートルズのアルバムばかり偏って聞く、ちょっと自意識過剰でヘンテコな、優等生とは程遠い中学生だった。体と心のバランスがいまいち取れなくて、親や兄弟に八つ当たりしたり、でも友達関係には異様に気を使ったり、生意気盛りで手の掛かる子供だったと思う。そんな私も、今では中学生の子を持ち、あの子達を見る時、パソコンや携帯等便利なツールを器用に使いこなし、欲しい情報を何でも引き出せ、不自由なくモノに恵まれる彼らとの「世代間の隔たり」も、感じなくもない。でも、子供から大人への過渡期を、何を考え、どう乗り越えていくいくか?という、根底の部分では、今も昔も大きく変わってないように思う。家庭・学校、友達・地域。限られた狭い世界ながら、その中で、生きる自分。他者との関わり。自分の個性・適性、家庭の諸事情・経済状況も少しづつ理解しつつ、これからの人生の岐路をゆっくりと選んでいくところは、みな一緒だ。この作品に登場する4人の男の子も、自分の個性をわきまえて、自分が今どうあるべきか、何をすべきか、悩みながらも答えを出していく。その成長過程に、心揺さぶられ、思わず応援したくなる。「大華火の夜に」の、ナオトが老人のもとに一人戻っていくシーン。胸の柔らかい所を、グッとつかまれたような気がした。でも、私は、「15歳への旅」が、何といっても一番好きだ。親に内緒の、わくわくするようなツーリング!!! 自分達で企画し、仲間で協力して実行するオリジナルな旅!それこそ、胸踊るような旅!大人の世界に、足をこわごわ突っ込む彼らの姿が、愛しくてたまらなくなる。新宿の中央公園にテント貼るなんて、あの歳でないと出来ない冒険だ(笑)。ナオトの両親は、きっとゴールドカードの利用明細書で、彼らの旅の嘘を見抜くだろう。でも、多分、その事について、彼らをひどく責めたりしないんじゃないかな?私も、そんな親になりたいと思う。子供たちを、いつも温かく遠くから見守りつつも、でも、どこかで、がっちりつかまえてるような、そんな親になれたらいいなと。でも、これが、一番難しいことなんだけど。病院の待ち時間が、素敵な時間になった。