ゴールデンスランバー 伊坂幸太郎
今年初めての読書は、お気に入り作家、伊坂幸太郎の最新作。首相暗殺の濡れ衣を着せられた男のスリリングな逃亡劇。500ページの長編なのに、一気に読ませてしまう迫力があった。どの章も無駄な箇所が無く、むさぼるように本を読んでしまった。スピード感があり最後まで展開が読めないので、どんどん読み進めていってしまう。周到にはられた伏線、インパクトがありちょっととぼけた会話。登場人物が個性的でそれぞれ魅力に溢れている。名前だけしか登場しなかった稲井氏までもが格好良かった!時間軸をずらしながら話が構成される(これは伊坂幸太郎が最も得意とする手だが)これ以上効果的な順序はないんじゃないかと思うくらい完璧に組み立てられている。読んでいて、ハラハラわくわくどきどきする。緊迫した展開の中、ふと笑いもこぼれるし、涙も出そうになる。時間が途切れて飛ぶ場面も、話の繋ぎがシームレスで違和感が無い。「やはり、この場面にこの話を入れてくるんだよね。納得!納得!」と読者の期待を裏切らない見事な構成力。著者の頭の良さに思わず唸ってしまう。文体は、徹頭徹尾映画を観ているような錯覚に陥る映像感がある。国家や警察権力という得体の知れない大きな組織を敵に回す恐怖感といったらない。マスコミのご都合主義的情報操作へのシニカルな批判も込められている。「人間の最大の武器は習慣と信頼だ。」登場人物の会話の中には、印象深いものも多い。読み終えたばかりだが、またすぐに彼の次作品を期待したくなる。文句なしに面白かった。