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海外の絵本・童話・児童書・ティーンズ小説

May 16, 2020
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みなさん、こんばんは。コロナが落ち着いてくると陰謀説も出てきましたね。
今日はファンタジー小説を紹介します。

ストラヴァガンザ 仮面の都(上下)
メアリ・ホフマン
小学館

 21世紀のイギリスにいる少年ルシアンは、悪性腫瘍のため寝たきりの身。ふとしたことで手にした手帳を護符にして、時空を超え、異次元の世界へと旅立つ。旅立った先は、16世紀のヴェネチアそっくりな街ベレッツァ。そこで彼はある目的をもって男装していた美少女アリアンナと出会う。

 異世界では元気に動けるし、むしろ美少年の部類に入る黒髪で黒い瞳のルシアンは、ベレッツァの女公主にたちまち気にいられる。はいどうぞ、映像化してくださいってくらい、主要登場人物は美形揃い。女公主は自身もストラヴァガンザで魔術師のロドルフォというステディがいるのに、その時々で気に入ったイケメンゴンドラ乗りを恋人に加えてしまう肉食系。処女王エリザベス一世に似ているかも。こんな規格外の人を愛しちゃったら、振り回されるのも恋の醍醐味だろうなぁと魔術師ロドルフォに少し同情。

 水の都、美しい女性が統治者、ベレッツァを狙う共和国の存在と言えば、モデルは16世紀のベネツィアで森川久美さんの漫画ヴァレンチーノシリーズを彷彿とさせる(ヴァレンチーノは男女関係には淡泊だったが)。共和国の悪者一族はキミチー一族で富豪、というところから、モデルはメディチ家と思われる。

 あるアイテムによりタイムトラベラー(物語世界ではストラヴァガンザ)となった少年と、冒険心豊かな美少女の恋物語と一国の独立を揺るがせる陰謀が並行して描かれる。大人向け読者には、替え玉を使って自分の姿を見せず、時には為政者として無慈悲な面も見せる女公主シルヴィアとロドルフォの大人のラブラインも見ものである。

 上巻では少年の活躍と冒険に重点が置かれるが、下巻は脇役と思われた少女の成長が一気に描かれる。冷徹な為政者としての女公主の姿も描かれ、小物感漂う悪党サイドを含めた男達の甘さが浮き彫りにされる。目的のためには親子、恋人、全ての情を殺して長年生きてきた本当にオトコマエな女公主の過去が明らかにされる。女公主に限らず、女性達の方がいざという時の肝の据わり方が違う。


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最終更新日  May 16, 2020 12:00:21 AM
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February 6, 2020
みなさん、こんばんは。大型クルーズ船の乗客にも新型肺炎患者が発生しましたね。
中国での死者がどんどん増えていますね。心配です。
さて、今日はYA小説を紹介します。


わたしが私になる方法 BOOK PLUS
How To Be A Real Person(in just one day)
サリー・ワーナー(著者)
金原瑞人&鈴木亜希子(訳)

デカルトの名言を思い出すまでもなく、わたしは私だ。ならばなぜわざわざ“なら”なければならないのか。誰のために。

 物語は“わたし”ことカーラ・ビッグスが「あのときほど家族がひとつになって喜んだことはなかった」「すべてのことがうまくいっていた―(中略)完璧に近かったと言っていい」十歳の誕生日の回想から始まる。

 本編にはちょくちょく回想が差し挟まれるが“完璧”が崩壊していったのは、どうやら去年のことらしい。それも原因はママ。犬を飼うと言い出したパパにキレたり、高い買い物をするママに、パパは刺激しないよう言葉を選びながら苦言を呈し、カーラはただ見守ることしかできなかった。そのうち苦言を言うパパは離れて暮らすようになり、文句を言わないカーラが残された。

 この状態で母親と主人公を二人きりにできたものだ。仕事に逃げてしまえる父親を、ちょっとずるいな、とも感じた。まあ実質母親が働いてないので父親が稼ぐしかないのだが、それでも。

「幸せなときも悲しいときも、わたしのことなんかたいして考えていなかった」母親の事を刺激しまいと気を使い、学校や近所の人にも本当の事を言えないカーラを支えたのは、それでも母親への愛だった。本作にはいくつもリスト(How To Avoid Having a Family Conference等)が登場するが、総てカーラが日常をリアルに見せるためのルールだ。このルールとお気に入りの本に出てくるヒロインが、当たり前でない日常を生きるカーラの支えとなる。「わたしがなんとかできる」と心強い言葉で母を支えるヒロインの健気さに、ひと筋の光明を見る。


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最終更新日  February 6, 2020 12:00:18 AM
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January 8, 2020
みなさん、こんばんは。ゴーン会長がネットフリックスと契約したそうですね。会見で何を話すのでしょうか。

さて、今日は実際に起きた戦争中の船の沈没事件を元に描かれた作品を紹介します。

凍てつく海のむこうに
Salt To the Sea
ルータ・セペティス
岩波書店


表紙は、白い鳥と黄色い鳥が波間を飛んでいるかのようだ。邦題にも海という文字が入っており、原題にも用いられている(Salt To the Sea)ので錯覚しそうだが、よく見ると白い線の真ん中に結び目がある。これはアウシュヴィッツ収容所の鉄条網だ。

 物語は四人の主人公を中心に展開する。ドイツ人として避難する権利を持っているヨアーナは、本編の姉妹編「灰色の地平線のかなたに」の主人公のいとこだ。彼女には気に病んでいることがある。ドイツ人家庭から逃げてきてコートの下に秘密を抱えているエミリア、同じくリュックに秘密を抱えているフローリアン。それぞれに秘密を抱える彼等は、迫りくるソ連軍から逃げる途中で出会い、海を目指す。

 もう一人の主人公、アルフレッドと彼等は同じ船で出会う。アルフレッドは、三人とは異なる描き方をされる。常に“ハネローレ”という女性にあてて手紙を書いており、彼の行動自体の描写は少ない。そして物語が進むと共に、彼の手紙と実際の描写に齟齬が生じてくる。手紙では総統を讃え、“誇らしい仕事をしている”とえらく勇ましく語るが、実際は一番の下っ端だ。そして彼と出会ったヨアーナらの印象からすると、どうやら容貌も優れていないようだ。また、おかしな事に、次々出て来る手紙が、出している相手“ハネローレ”からの返事を受けた内容になっていない。つまり、一方的に書き続けていることになる。なぜ相手は返事を書かないのか。架空の相手なのか。やはり彼も秘密を抱えている。

 彼等が乗り合わせた船が、グストロフ号だ。避難民や傷病兵を載せていた船は、ソ連潜水艦の魚雷攻撃を受けて沈没した。乗客は詰め込めるだけ詰め込んだので、救命艇も半分以下、救命用具も半数に満たない数となった。それでも生存者は少しだが、いた。子供達が死んでいくなかで、乳児一名の救出が事実として残っている。この史実を元に本作は作られたのかもしれない。

 一旦戦争が始まれば、常に何も持たない弱者が狙われ、虐げられる。そして今は強いと自覚している者ですら、いつか弱者になる。絶対安全な人などいない。だから私たちは、必死で戦争になるのを止めなければならない。凍てつく海の向こうに、誰も消えてしまわないために。


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最終更新日  January 8, 2020 12:00:22 AM
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December 7, 2019
みなさん、こんばんは。来年から開始予定だった民間の英語試験が突然中止になって受験生が大変ですね。国語と数学ももめているようです。

さて今日は作者の伯父が主人公に据えられて描かれた小説を紹介します。

たいせつな人へ
In the Mouth of the Wolf
マイケル・モーパーゴ
あかね書房

 表紙絵の空白部分がちょうど犬の顔のようになっている。実は犬ではなく狼だ。原題はIn the Mouth of the Wolf=狼の口へ、となっているのであわせている。小さく見える人は、虎口ではなく狼口から、ちょうど出て来るところだ。ただ、狼の目は笑っている。いつでも捕まえられるぞ、と言うように。

 90歳の誕生日を大勢の人に祝われる老人の名前は、フランシス・カマルツ。彼もまた、狼口から出てきた男の一人だ。「フランスの全国民を救った」と称えられる彼は、戦争中何をしたのか。

 フランシスは作家マイケル・モーパーゴの叔父である。皆の祝福を受けながら、彼の胸に去来するのは「今日のパーティに参加できなかった人たち」だ。若くして亡くなった俳優の弟、フランシスと共に狼口に入って、出てきたけれど不遇の死を遂げた女性、平和時は登山家だったがレジスタンス活動に参加し、ドイツ兵に射殺された男性、妻と娘が強制収容所送りになった通信士。フランシスが“たいせつな人たち”に語り掛ける口調で、彼等の生涯が紹介される。

 フランシスはもともと平和主義者で、兵役も拒否していた。にもかかわらず危険なレジスタンス活動にかかわることになったのは、弟の死が大きい。戦闘的にできていない彼のことだから、戦後平和になったフランスで、なかなか元に戻れず苦しんだ事は言うまでもない。彼を“非国民”と罵らず別の形の奉仕を求めたフランスという国の度量の広さを感じる。日本だったら、果たしてどうだったか。

 巻末には実際の彼等の写真と生涯がまとめられている。


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最終更新日  December 7, 2019 12:00:21 AM
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September 9, 2019
みなさん、こんばんは。関東台風直撃みたいですね。こわいなあ。

さて、今日はシェイクスピアがちょっと出て来るYA小説を紹介します。

どこまでも亀
Turtles all the way down
ジョン・グリーン
岩波書店STAMPBOOKS

「ジョン・グリーン作品では、『さよならを待つふたりのために』(『きっと、星のせいじゃない』として映画化)しかり、『アラスカを追いかけて』しかり、少年はちょっぴり大人びた少女の後を追いかける」

以前こう書いた。今回もパターンは同じで、少女は少年から積極的にアプローチされる(まあ、羨ましい!)。物語にもよく引用されるウィリアム・シェイクスピアの『テンペスト』が本作のモチーフだ。島にやってきた(本当は復讐のためにプロスペローが呼び寄せた仇)人達を「何て素晴らしい、新しい世界が目の前に!」と迎える天然娘ミランダはアーザ、ナポリの王子ファーディナンドは大富豪ラッセル・ピケットの息子ディヴィスに擬せられる。シェイクスピア版では最後にプロスペローが魔法の力を捨てて、「自分を島にとどめるのもナポリに帰すのも観客の気持ち次第。どうか拍手によっていましめを解き、自由にしてくれ」と観客に訴えるが、本編にはプロスペローに擬せられる人物がいない。子供達がストーリーを動かす役割を担い、スターウォーズやアベンジャーズなど現代の若者にアピールする要素を多く含む。

 現代のミランダ=アーダは何度となく出てくるロマンティックなキスシーンでも「細菌が口の中に入っちゃう!」と気になってしかたがない。彼女にとっては、世界は美しいどころか見えない汚いもので一杯だ。一方、現代のファーディナンド王子=ディヴィスはと言えば、こちらは金持ちのぼんぼんにしては、大変しっかりしている。精神不安定な弟ノア(手がつけられない、というポイントで無理くりキャリバン?)を守り、時にオトナの判断をしつつもアーダに真摯に向き合う。一人称語りなので、どんなに主人公にコンプレックスがあったとしても、自己弁護や承認欲求の内容に傾きやすいが、アーダの親友デイジーを配することで、うまくバランスを取っている。




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最終更新日  September 9, 2019 12:00:22 AM
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January 26, 2019
みなさん、こんばんは。今週末は雪と言われていますね。クリスマスからこっち雨が降りません。
さて、こちらは仲良し4姉妹の物語です。
ペンダーウィックの四姉妹3 海べの音楽
The Penderwicks at Point Mouette
ジーン・バーズオール
小峰書店

 長らくやもめだった父は前作でアイアンサと結婚し、弟という新しい家族も増えた。しっかり者の長女ロザリンドには彼氏が出来、クールな次女スカイはお隣のジェフリーと仲良し。三女ジェーンは相変わらず作家志望出て四女バティ(エリザベス)は相変わらずリトル・タイフーン。

 ペンダーウィック家では、毎年夏に何かが起こる。今年の夏も例外ではなく、父親とアイアンサがイギリスに新婚旅行に出かけ、長女のロザリンドは友達とニュージャージー州に。残された妹たちはクレアおばさんとメイン州の海辺の町で休暇を過ごす…と、家族が3つに分かれて夏を過ごすことに。長女がいないためOAP(Oldest Available Penderwick・ペンダーウィック姉妹の最年長者)となり皆を仕切るのは次女のスカイ。頭はいいが家事なんてやったことがない彼女は、さっそく海で大事な注意書きを濡らしてしまい「えっ、何かしたらパティがふくらんじゃうの?」とお悩みモード。一方今まで『ナルニア国物語』のピーター・ぺペンシーが理想の恋人だったジェーンも、リアル彼氏候補が現れてドキドキ。バティは遅れてやって来たジェフリーと共通の趣味を見つけた模様。

 ジ現代版若草物語と考えると、ジョーの作家気質は三女のジェーンが受け継ぎ、三女ベスのピアノ好きは名前もそのまま四女が引き継ぎ、と少しずつ設定をスライドさせている。大きく変わっているのは現代版ローリーの家族構成。祖父に溺愛されるローリーに対して、ジェフリーには困った母親といけすかない義父がいる。今回この状態にも変化が訪れる。今の所四姉妹はジェフリーに対しては友情モードだが、ずっと成長を描いていくなら姉妹の誰かとの恋愛も浮上するかも。順当にいけばスカイだが、歳の差はあるけれど共通の趣味を持ったバティとのカップルも可能性が出てきた。
 


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最終更新日  January 26, 2019 12:17:46 AM
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January 14, 2019
みなさん、こんばんは。毎日毎日違う人生を送れたら素敵だなって思ってます?
でもそれは、意外と大変なんですよ。
この本の主人公はまさにそんな人生なんです。


エヴリデイ
Everyday
ディヴィッド・レヴィサン
小峰書店

恋に障害はつきものだ。フィクションの恋愛小説を読む時も、障害があればこそドラマが盛り上がり、読者は熱心に読みふける。相手が好きならば、性別も、人種も、年齢も、経済格差も、全て乗り越えられる。これは誰しもが想い描く理想の恋愛だ。

 相手と長く付き合う時間があった場合、長い時間を一緒に過ごすから、乗り越えられない壁だと思っていた事がささいな問題に思えてくる。だが、もし、好きな相手とたった一日しか、同じ姿で生きていけなかったら、それでも相手は、変わり続ける自分を愛してくれるだろうか?例え本質は何も変わっていないとしても?

 ジョン・グリーンとの共著『ウィル・グレイソン ウィル・グレイソン』ではLGBT問題を取り上げたデヴィッド・レヴィサン。今回の主人公は、毎朝、違う人物のからだの中で目覚める。なぜこうなったかはわからない。共通点は、からだを借りる相手はかならず16才。16才なら、男でも女でもあり得る。人種も変わるし家庭環境も変わる。住んでいる場所がメリーランド州の一定範囲内。からだを借りるのは、一日だけ。そして、二度と同じ人物にはならない。肉体も名前も持たない彼/彼女は、自分のことを「A」とだけ呼んでいる。

 Aの中には今まで成り代わってきた人だった時の記憶が積み重なっているが、取り憑かれたような感覚の宿主には記憶はなく、後から周囲の反応で「何か昨日は自分がおかしかったみたいだ」とわかる。Aのアイデンティティは常に脅かされ続ける。確固とした自分を持っていれば、かえって危険だ。

 だからAは、宿主の人生に影響を与えないよう、個性を出さないよう生きてきた。しかし、ある日入れ替わった少年の恋人に恋したことから、一日限りの人生でも出来ることをしようと考える「毎日を違う気持ちで過ごすことが出来たら新鮮なのに」と、現実には変わり映えのしない日常をうっとうしく感じる人もいるかもしれないが、Aからすれば昨日と同じ明日であることが大変なご褒美だ。

 意識が変わったAは、宿主の人生を救うこともあるが、気になる彼女に会いたいあまり取った行動で、Aの存在に気付く人も現れる。成り代われる年齢設定を16歳にしたのは、多感で経験不足で失敗しがちな年齢であるからだ。失敗を恐れずに純粋でいられるぎりぎりのタイムリミットとも言える。年齢の幅を広げてしまうと、大人の世界の話も入ってきてしまう。また、大人としての経験を積んだ主人公が想いのままに突っ走るとは思えないので、あのラストはあり得ない。

 表紙の一人だけ色のついた服を着ているのがおそらくAの恋する相手で、それ以外は全てAが一日体を借りた相手という分け方。全身真っ黒なのがAの中身なのか。それともどこかで中身のAを待っている外側のみのAか。読了した後でじっくり表紙を見直してみては?


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最終更新日  January 14, 2019 12:00:35 AM
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December 25, 2018
みなさん、メリークリスマス!

クリスマスにちなんだ小説を紹介します。
登場するのはトナカイ?なんて思っている方、違うんですよ~。


ヘラジカがふってきた! (ハリネズミの本箱)
Es Ist Ein Elch Entsprungen
アンドレアス・シュタインヘーフェル
早川書房


冬にはいろんなものが降ってきます。雨、雪、そして雹。
でも、まさか、こちらが降ってくるなんて。
そもそも、当の本人でさえ、想像できなかったでしょう。
その証拠には、表紙でその当の本人=ヘラジカのミスター・ムースは
落ちてゆく時、ぱっちりと目を開けて、まっすぐにこちら-読者を見ています。
びっくりして、目を閉じる事を忘れてしまったかのよう。
その下には、家の中でクリスマスの合唱&合奏に余念のないベルティル達家族の姿が見えます。
さあ、これから何が起こるのか?そもそも何でヘラジカが空から降ってくるのか?いかにも好奇心をそそりそうな、プレ物語の風景を描いた、うまい表紙です。

 「赤鼻のトナカイ」では、トナカイの中のみそっかすが注目されましたが、この本では、彼等以外にも橇を引くメンツがいた新事実が明らかになりました。ヘラジカです。トナカイの控えに甘んじているとは、なかなかフクザツなヒエラルキーがあるようです。ちょうど今の時期、契約更改をゴネるプロ野球選手のごとく、トナカイ君は威張っています。それでも人気者ですから、彼等のボス(誰だか、おわかりですね?)は言う事を聞かないわけにいきません。しわ寄せがヘラジカにくるわけです。まったく誰にとっても現代は理不尽にできています。

 一方では、橇を引きたくって、引きたくってしょうのないムース君のような存在もいるのに。
もしかしたら、同じように人間界の理不尽を味わっているベルティル君が、ムースを呼んだのでしょうか?だから、アメリカの34丁目でもないのに、彼がやって来たのでしょうか?
映画の台詞も口にする、大変な事態を引き起こしたにしては、やけに肝が座っているムース君。そして当初こそ混乱したものの、なぜかムースの存在をあたりまえのように受け入れてしまうベルティル達の交流が微笑ましい今風のクリスマスストーリー。

ハリネズミの本箱シリーズ。鈴木仁子訳。ケルスティン・マイヤー絵。


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最終更新日  December 25, 2018 12:00:29 AM
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September 28, 2018
みなさん、こんばんは。温かくなると言われていますが、はたしてどうでしょうか?
さて今日はYA小説を紹介します。
学校が悪者に操られていたらどうしますか?

あやつられた学校—悪魔の校長シリーズ〈1〉
The Demon Headmaster
偕成社ミステリークラブ
ジリアン・クロス

イギリスのある町。元気のいいロイドとおとなしいハービー兄弟が暮らすハンター家に、11才のダイナ・グラスがやってきた。ダイナは1才で両親を亡くしてから、こどもの家で暮らしていた。ダイナは転校第一日目校長室で奇妙な体験をする。緑色の目をした黒ずくめの校長先生が、黒い眼鏡をゆっくりと外す。話し始めると、その後の記憶を失ってしまったのだ。

SPLATのメンバー達が、謎めいた校長の陰謀を暴くメインストーリーに、同い年の女の子ダイナの出現に戦々恐々のロイド、兄に同調するハービー、自分の才能を隠す事が処世術だと割り切っているダイナ達3人の心のふれ合いが、並行して描かれる。

 校長先生の野望達成の方法として利用される、学校対抗クイズ・ショウの馬鹿馬鹿しさにはに、それを止める方法の馬鹿馬鹿しさに、大いに笑うも良し。でも、ちょっと考えてみよう。

 校門から一歩入れば、学校の中は治外法権。大人は先生しかいない。そして、学校外の大人がまず信用するのは、まず大人。たとえ、ほんのわずかの生徒—子供達が、真っ当な事を言ってたとしても。現実ってそうじゃない?

 だとしたら、私達の知らない所で、実はこんな企てが深く静かに進行中かもしれない。ほうら、笑ってる場合ではないでしょう?
子供達に謎解きの楽しさを教えてくれる一方で、見かけのまともさ、正しさに惑わされがちな大人に、軽いジャブ。集団催眠、洗脳というテーマが、柴田昌弘氏漫画『ハトの旋律』と似ている。
本書は1982年に出版され、ミュージカルにもなり、1996年にTV放送されビデオ化もされたシリーズもので、全5册。


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最終更新日  September 28, 2018 12:00:42 AM
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August 24, 2018
みなさん、こんばんは。
大阪の逃亡犯がなかなか捕まりませんね。気になります。

今日は数奇な運命をたどることになった少年が主人公の小説を紹介します。

ミムス 宮廷道化師
Mimus
(Y.A.books)
リリ・タール

 表紙は東逸子さん。首を傾げて視線を送っているのが主人公のフロリーン。彼の視線の先にあるのが道化の師匠のミムス。師弟のほのぼのとした雰囲気を写し取ったもの、ではない。

 フロリーンは敵国ヴィンランドとの和平が成ったとの報せに赴くが罠だった。父王ともども囚われの身になったフロリーンは、その時から身分も部下も名前さえ取り上げられ、仇の国王に宮廷道化師として仕えることになってしまう。チビミムスと呼ばれるフロリーンの新たな人生が始まる。

 「貴族が宮廷道化師にさせられた」という史実に基づくフィクション。とはいえ、甘い所は少しもない。魔法使いが現れて都合良く助けてくれるわけでなく、頼りになるのは自分のみ。嫌々フローリンを押しつけられたミムスが次々と出してくる無茶な課題をこなさないと、満足な食事にもありつけない。

 ここから甘ちゃん王子フローリンが成長する。今まで馬鹿にしていた道化師の賢さに気づき、自らも即興で歌を作ったり飛んだり跳ねたり、当意即妙な台詞で返したりと大活躍。王子の時には知ろうともしなかった庶民の気持ちや父王の過去の所業が明らかになる過程で、「見たままが本当ではない」ことを学んでいく。本当の帝王学を道化によって学んだと言える。

 彼の師匠・ミムスは初老で意地悪かと思いきや、フローリンを助けるために思い切った行動を取る。本名すら明かさず、その真意も誰にもわからないが、その存在感は強烈で、シェイクスピアの『十二夜』に登場するキレ者道化(wise fool)のフェステを彷彿とさせる。一国ならぬ二国を結果的に救っておきながら、身分相応の事しか望まない。例え遠く離れていても彼が見守っていてくれるなら、フローリンは父より賢い王になれるだろう。


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最終更新日  August 24, 2018 12:00:37 AM
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