映画・海外ドラマ・本 ひとこと言いた~い

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海外の絵本・童話・児童書・ティーンズ小説

August 7, 2022
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みなさん、こんばんは。政府関係者によりますと、東京都内で国内初となるサル痘の感染者を確認したとのことです。外務省は全世界を対象に渡航などに関する注意喚起を促すレベル1の感染症危険情報を出しています。今日はエリザベス女王とローリーの有名なエピソードに関係するマントにまつわる物語を紹介します。

エリザベス女王のお針子 裏切りの麗しきマント​
Tread Softly
ケイト・ペニントン
徳間書店

寵臣サー・ウォルター・ローリーがぬかるみに高価なマントを広げてエリザベス女王を通したという伝説は有名だ。ではそのマントを作った人間も当然いたわけで…ということで本編のヒロインはマントの作り手であるメアリー・デュヴローだ。

 仕立て職人を父に持つ十三歳のメアリーは、刺繍が得意なお針子。花や鳥など、自然の美しさを布に刺していくメアリーの腕は、かなりのもの。父が仕えるシドニー卿のもとにウォルター・ローリーが訪れ、シドニー卿の妻子がエリザベス女王を訪問するのに同行して再び寵愛を得ようと考えていた。そして、その際に身に着けるマントを作るのは、メアリーと父の仕事に。しかしある夜メアリーは、カトリック派の数人の男が、女王の暗殺を計画している話を偶然聞いてしまった。そのうえ、そこに来合わせた父が殺されるところまで目撃。

 ローズマリー・サトクリフも描いているウォルター・ローリーは、功績を見ればそれなりの事はやっているのに、本編では脇が甘い。友人・親戚あらゆる所に借金ばかりしているのに、派手なマントを作らせる金銭感覚の甘さ。まあ当時の貴族は皆こんなものかもしれない。メアリーは美人設定だが彼女にも気のある素振りを見せるわ、彼女の訴えにぴんとくるものがあったにも関わらず自分一人で何とかしようとするわ。年齢的にはまだ若いのか。
 
 それよりも我らがヒロインメアリーの方がよほどしっかりしている。それまでも「母なし子」として貴族の意地悪な母親&姉妹に虐められていたにもかかわらず(まるでシンデレラだ)健気に振る舞い、ロンドンで暮らすことになっても地に足の着いた生活を忘れない。だからこそ陰謀術策入り混じる宮廷で生き残れたのだろう。

 こみねゆらさん表紙絵。



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最終更新日  August 8, 2022 06:10:24 AM
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April 14, 2022
みなさん、こんばんは。自転車ロードレースのツール・ド・フランスでステージ優勝5度の実績を持つドイツ人のトニー・マルティン氏がロシアに侵攻されたウクライナの子供を支援するため2012年ロンドン五輪のタイムトライアルで獲得した銀メダルをオークションで売却することを明らかにしました。今日もケビン・クロスリー・ホランドのちょっと変わったアーサー物語を紹介します。

ふたりのアーサー〈3〉王の誕生
Arthur king of the middle march
ケビン・クロスリー・ホランド
亀井 よし子 (訳)
ソニー・マガジンズ

 アーサー王物語はグウィネヴィア王妃とランスロットの不倫発覚、円卓の崩壊、聖杯のクエスト達成、予言通りの息子モルドレッドとの相打ちによる死、そして湖の乙女が剣を受け取る件まで描かれる。

 一方いよいよ十字軍に向かったアーサーだが、今回の十字軍は、後世において最も悪名の高い十字軍として知られる。なぜならば、当初の目的であった聖地には向かわず、キリスト教国の東ローマ帝国を攻略し、コンスタンティノポリスを陥落させ、略奪・殺戮の限りを尽くしたからである。東ローマ帝国を一旦滅亡させたため、この地域のキリスト教国家の力を削ぎ、後のオスマン帝国による東ヨーロッパの大部分の支配の伏線のひとつとなった。なぜ同じキリスト教徒を攻撃したのか。理由についても明かされる。

 冒頭で、早くもこの十字軍の不穏さ、不自然さはかなり強調して描写される。これから聖戦に出向くというのに、小競り合いで指を落とす者がいたり(→士気が高まっていない)、なかなか集まらない軍勢(→カリスマ性あるリーダーの不在)、船を出すヴェネツィアに払う資金不足等々。煽り文句につられて集まった烏合の衆の態である。
「われわれ人間がことばのうえだけでなく、おこないのうえでもキリスト教徒にならないかぎり、どうしてエルサレムに入ることができるだろう?」
という神父の言葉をアーサーが思い出す件があるが、十字軍は船の建造資金をヴェネツィアに支払えないため、補填としてかつてヴェネツィア領だったザーラを襲撃せよというとんでもない依頼を受ける羽目になる。先ほどの問いが、まさに喉元に突き付けられた形だ。納得がいかないながらもロード・スティーヴンなどは従うが、アーサーの実父サー・ウィリアムスは激高し、珍しく正論を吐く。ただ戦場に愛人を連れてきて、先に顰蹙を買っている。第一片方の眼が見えないので、戦闘員としては役に立たないことが皆にばればれだ。アーサーもまたこの戦闘に疑問を抱き、更にサラディンたちイスラム人が本当に悪人なのかと悩む件が何度も挿入されている。読者に寄り添う現代人感覚を取り入れたキャラクターというわけだ。

 十字軍の現実に傷つくアーサーだが、従兄サールとの仲が復縁するなどいい所もある。自身のクエストとしていた母との再会と領主としての帰還という申し分ないラストだが、一つだけ心残りがある。

 婚約したウィニーが、アーサーの異母兄であるトムとも恋仲になっていた。グウィネヴィア王妃に擬せられているウィニーが「どちらも決められない!」とふてぶてしく宣言する一方で、悩み苦しんだグレイスが俗世を捨てる決意をするなんという清々しさよ。兄弟同士で決闘をするわけにもいかず、ウィニーとの結婚は宙ぶらりんのままだ。物語がここで完結ならアーサーは誰と結ばれるのか。幼馴染のガティとの方がいっそうまくいくのではないか。


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最終更新日  April 14, 2022 01:44:29 AM
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April 13, 2022
みなさん、こんばんは。元乃木坂46メンバーで俳優の若月佑美さんと、俳優の玉置玲央さんがそれぞれSNSで結婚したことを発表しました。今日もケビン・クロスリー・ホランドのちょっと変わったアーサー物語を紹介します。

ふたりのアーサー〈2〉運命の十字
Arthur at the Crossing Places
ケビン・クロスリー・ホランド
亀井 よし子 (訳)
ソニー・マガジンズ


 第一章ラストは
「きょうぼくは氷をぬけ、炎にたどりついた」

 アーサーはいよいよ優しかった養父母や友達のいるコルディコット荘園を出て、ロード・スティーヴンの従者となり騎士になるための修行に向かうのだ。旅立つアーサーを寒さの中見送っていたのは荘園の監督ハムの娘ガティ。一方途中でマントが燃えているまま馬に乗っている燃えたつような赤毛の少女ウィニーを助ける。アーサーは氷と炎、正反対のイメージの女性と同じ日に会ったことになる。

サー・ジョンは折々にアーサーを励ましてきた。
「人間の素性など、たんに血の問題にすぎない、だいじなのは、自分をどうつくりあげるかだ」
「おまえは王になってもおかしくないほどの人間だ」

父と信じていたサー・ジョンがあまりにも理想の父だっただけに、有夫の女性を奪って夫を殺し、しかも自分を息子と知りながら前巻で怪我をさせた乱暴なサー・ウィリアムが父だと知って、アーサーは心穏やかではない。石から覗き見るアーサー王の騎士たちの如く、自分のクエスト=探求として、アーサーは産みの母を探すことと、十字軍遠征を目標に据える。

 てっきり“従兄”のアーサーと結婚できると思っていたグレイスは、彼と異母きょうだいだと知って大ショック。一方危ない所を助けたウィニーは強気なじゃじゃ馬だがいいムードも漂う。アーサー王を挟むグウィネヴィアと異母姉モーガナのようだ。時に自身と同化してまだ見ぬ母に思いを寄せたり、王の行いから自身のこれからの行動への教訓を得たりと、石が語る物語はアーサーに次第に影響を与えていく。

 アーサー王伝説のアーサーは、鉄床の石から剣を抜き、イングランドの王となる。そして母イグレーヌ妃から伝わる大石を円卓とし、王国を守る騎士たちを集める。グウィネヴィア妃と結婚し、円卓の騎士たちの冒険も描かれる。初登場のランスロットに剣を授け騎士にするのはグウィネヴィア妃。もう運命の二人になるしかない!身なりが貧しいからとばかにしていたら、実はアーサーの義理の兄弟だったりと、騎士たちのロマンス&冒険も佳境に入ってきた第二巻。



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最終更新日  April 13, 2022 12:00:21 AM
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April 12, 2022
みなさん、こんばんは。欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長はウクライナ首都キーウ(キエフ)をゼレンスキー大統領と会談しました。ウクライナのEU加盟手続きについて「できる限り加速させる」と約束したということです。今日から3日間ケビン・クロスリー・ホランドのちょっと変わったアーサー物語を紹介します。

ふたりのアーサー〈1〉予言の石
Arthur the Seeing Stone
ケビン・クロスリー・ホランド
亀井 よし子 (訳)
ソニー・マガジンズ

12世紀のイングランドの荘園に暮らすアーサーは、立派な騎士になって十字軍に行くことを夢見る13歳の少年だ。しかし兄サールはそんな彼をばかにして、父はなかなか騎士になることを許してくれない。ある日彼は、友人マーリンにもらった黒曜石のなかに、もうひとりのアーサーの物語が映し出されていることに気づく。伝説の王だったもうひとりのアーサーの少年時代を追体験するうち、やがてアーサーはふたりがパラレルの存在であることに気づく。

 リチャード1世(またの名を獅子心王)が亡くなる所から、少年アーサーの物語が始まる。アラブの奇跡サラディンと死闘を繰り広げた事でも知られる獅子心王は、アーサーや父達の間では評判が良いが、実は英国内でそう人気が高い方ではない。始終戦に出かけているし、父と確執がありフランス出身の母親と親しかったため、ろくに英語が話せなかったという噂だ。男色家という噂もある彼は後継ぎを残さず、そのため愚かと言われる弟のジョンが王位についた。これにもひと悶着あり、シェイクスピア劇に描かれているように、リチャードの弟ジェフリーの遺児アーサーも後継者として有力視されていた。

 彼が12歳だったことから、てっきりアーサーが王位継承者とすりかえられたのか?と思っていたら、そこまでの奇想天外さはなかった。むしろ素直にもう一人のアーサーに寄せている。二人のアーサーを結び付けるのは
「おまえさんが死ぬ日まで、この石以上に貴重なものを手にすることはけっしてないじゃろう だが おまえさんがこれを持っていることをだれにも知られちゃいかん。見られてもいかんし、石について何かを知られてもいかん」
とマーリンに念押しされた黒曜石だ。ここまで言われたらいやでも「この石に何かある!」と読者もアーサーも気がつく。

 同年齢のアーサーの運命が交錯する、いかにもガーディアン賞好みっぽい重層的な構成である。気はいいがおっちょこちょいの所があるケイ、魅力的な魔女の異母姉モーガン、有夫の妻に言い寄る父ウーサー・ペンドラゴン、夫と間違えウーサーと床を共にしアーサーを身ごもる絶世の美女イグレーヌ后のモデルは、アーサー王伝説ファンならすぐわかる。魔法使いマーリンが二つの世界を繋ぐ。アーサーの質問にすぐ答えを返すのではなく「なぜそのような質問をするのか」「本当は何が聞きたいのか」と更に掘り下げ、アーサー自身に考えさせる点は、ちゃらんぽらんに見える外見とは異なり、賢者の風格がある。まさかタイムトラベラー?と思うが、そのような描写はない。

 伝説の剣を引き抜き少年ながら君主と認められた王の中の王アーサー、従者としての人生が始まった少年アーサー。同じ13歳で二人の少年の運命が開けた所で第一巻は幕。次からはいよいよ十字軍に出発だ。

2001年度ガーディアン賞&2000年スマーティーズ賞受賞作。


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最終更新日  April 12, 2022 12:00:21 AM
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December 25, 2021
みなさん、こんばんは。上皇様が88歳の誕生日を迎えましたね。記録確認できる歴代天皇では「最長寿」だそうです。今日も韓国小説を紹介します。


ペイント
イ・ヒヨン
訳小山内園子
イースト・プレス

 少子化が問題どころの騒ぎではなくなった韓国では「そんなに子供を育てるのが大変なら国が育てます」宣言を行った。幸い北朝鮮とは友好関係にあるので福祉に使える金が豊富だ。そこで事情により子どもを育てられなくなった親が、子どもを預ける「NCセンター」が設立された。そこでは子どもが親を選ぶ面接「ペイント(ペアレントインタビュー)」が行われている。そんなNCセンターに在籍する17歳の少年ジェヌが主人公。

  日本よりも儒教精神が強い韓国では、今でも長男が望まれる。そのため男子が生まれるまで何度でも妊娠し、最後の子供が男の子という家庭は多い。そして、家の祭祀を執り行えるよう、長男をしっかり育てなければならない。その韓国で親が「子育てしません!」宣言するのだから、フィクションとはいえ大転換だ。韓国で30万部というから関心を惹くテーマではあったのだろう。

 韓国では、この作品をフィクションとばかりは言っていられないからなのか。ドキュメンタリーでは韓国・ソウルの出生率が0.64だと報じられていた。中でも一番出生率の低いのが高級住宅地として知られる江南地区だという。日本と異なり兵役がある韓国では、人口減は切実な問題だ。だからといって儒教精神やら家を守るためやら昔ながらの題目をおしつけられて、キャリアを断たれてしまう現実を、女性達にだけ受け入れろとはいえない。本編のような、大変な時期だけ子供を育ててくれる施設が本当に必要になるかもしれない。

 ペイントにやってくる親候補の多くは、養子縁組することで受け取れる福利厚生が目的だ。親候補たちのとりつくろった笑顔と透けて見える本音を、長くペイントをしているジェヌは瞬時に見抜く。NCセンターの退所期限20歳までに親をみつけなれば、センター出身という経歴がIDカードに刻まれる。過去にNCセンター出身者による犯罪が行われたことで、社会にはNCセンター出身者への偏見が存在し、その経歴が刻まれないよう、子どもたちは必死にペイントを続けている。期限を3年後に控えたジェヌは、ペイントをしながら、自分の進む道をつかもうとする。一人の若者のビルドゥングスロマンであり、差別について問いかけている。「親は子供を、子供は親を選べない」という大原則を覆したらどうなるか?という一つの例でもある。

「チャンビ青少年文学賞」受賞作。


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最終更新日  December 25, 2021 12:00:13 AM
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December 22, 2021
みなさん、こんばんは。何度もシステム障害を起こしていたみずほ銀行のトップが辞任しました。今日もキンバリー・ブルベイカー・ブラッドリーの小説を紹介します。

わたしがいどんだ戦い1940年
The War I Finally Won
キンバリー・ブルベイカー・ブラッドリー
評論社

 前作表紙では馬の傍らに立っていたエイダが、本作では馬に乗っている。前作との大きな違いは、まずそこだ。彼女は足の手術を受け、歩けるようになった。もちろん、馬に乗ることも。但し前作ではバックが白っぽかったが、本作では戦争を意識してか黒。

 物語が始まってすぐ実母が空襲で亡くなる。読者からすれば鬼母であっても、エイダにとっては実の母。エイダは死を嘆けない自分に対してわだかまりを抱え、ジェレミーが簡単にスーザンをママ呼びするのに、頑なに名前で呼び続けるのが自分への罰のようで痛々しい。

 それでも、前作では自分とジェイミーをそれ以外の社会から守ることに一生懸命だった彼女が、周囲を助けようと動く余裕が出来た所は、大いなる変化である。それだけ周囲の支えが身に沁みて来た証だ。

 また今回、ソールトン夫人の家族がクローズアップされる。町一番の裕福な一家も、戦争においては何らかの犠牲を強いられる。屋敷が接収されて、一家はスーザンに貸し与えた家で同居する羽目に。夫人はスーザンを使用人扱いで進んで家事をやろうとせずにぎくしゃく。夫人の夫は諜報機関に所属しており、ドイツから逃れてきたユダヤ人の少女を預かることになる。ユダヤ人であろうとエイダ達にとってはドイツ人と同じで、最初のうちはあからさまに敵視していたが、ユダヤ人がどのような扱いを受けるか知るうち、彼女に手を差し伸べるようになる。

 登場時には自分の意見を曲げない完璧な女性に見えたソールトン夫人だが、本作ではちょいちょい綻びが見える。パイロットとして出征した一人息子に愛情を注ぐが、娘のマギーがいやがるにも関わらず寄宿学校に預けっぱなし。そんな夫人が一通りの失敗を経て、やっと皆と打ち解けることが出来る課程も描かれる。この親にしてはしっかりしすぎのマギーが頼もしい。

 一九四〇年なのでまだイギリスは劣勢。戦争は道半ばだが、著者は本作でエイダの物語を終えることを最初から決めていたらしい。


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最終更新日  December 22, 2021 12:00:20 AM
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December 21, 2021
みなさんこんばんは。女優の神田沙也加さんが札幌市内のホテルの高層階から転落し、急死しましたね。今日から2日間キンバリー・ブルベイカー・ブラッドリーのYAを紹介します。

わたしがいどんだ戦い 1939年​
The War That Saved My Life
キンバリー・ブルベイカー・ブラッドリー
大作道子訳者

 「親だから子供に優しいはずだ」「厳しかったとしてもそれは愛情のなせる業だ」という思い込みが児童虐待を促進していた事は、現在では知られている。しかし昔はそうではなかった。例えば第二次大戦直前のエイダの場合も。

 自分や弟の年齢さえも定かでないエイダは、先天性の内反足(リチャード3世もそうだったらしい)のため実母に幽閉されていた。ロンドンに空襲が来るという噂が広まり、弟ジェイミーの学校に通う子供達も疎開することになった。密かに不自由な足で歩く練習をしていたエイダは、母親から逃れるチャンスだと思い、弟と共にその列に加わるが。

 疎開の子供達を割り振っていくソールトン夫人が、本編の続編「わたしがいどんだ戦い 1940年」で重要な脇役となる。リストにない二人が加わったのに、大した付き合わせもせず、子育てをしたこともない独身の女性スーザンの元に二人を置いていくなど随分いい加減だ。イギリスが大らかなのか。初めて自分の意思で母の元から逃げ出したエイダは、ソールトン夫人の娘マギーや兄のジョナサン、馬の世話をするフランクらと知り合い、少しずつ世界を広げていく。

 疎開児童の面倒を見るという降ってわいた災難?に誠実に向き合おうとするスーザン。エイダは頑なで、ジェイミーは子供だからなのか、素直に物を言いすぎる。しかし前者は人の善意に接したことがない故の恐怖によるものだ。何しろ生みの母親が彼女を幽閉し、言葉と肉体双方からの暴力を加えていた。近所の大人達も実の親がやっていることだからとエイダを酷い病気扱いしており、誰もまともに話そうとする人がいない。現代ならば無関心な隣人だが、そもそも戦争という平時とは異なる状況下であり、かつ児童虐待など一般的ではなかったので、当時としては普通なのだろう。ぶっきらぼうながらも赤の他人であるスーザンと、いつこの幸せが奪われるのだろうとびくびくしながらもほだされていくエイダの関係がもどかしい。

 ところで彼女達の養親となるスーザンだが、以前一緒に暮らしていたベッキーという女性の死から立ち直れていない。作品中にははっきり描かれていないが、ベッキーはスーザンのパートナーであったようだ。そう考えるとスーザンの落ち込みぶりも、スーザンの牧師の父親に勘当同然という仕打ちも腑に落ちる。物語はエイダの戦いに焦点が置かれているが、スーザンもこれまで人知れぬ戦いを続けてきたのではないか。


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最終更新日  December 21, 2021 12:00:20 AM
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November 16, 2021
みなさんこんばんは。将棋の八大タイトルの最高峰、「竜王戦」七番勝負で、藤井聡太三冠(19)が4連勝で「竜王」のタイトルを獲得し、史上最年少記録を28年ぶりに更新する19歳3か月で「四冠」を達成しました。すごいですね。
 
今日紹介するのは自殺するために集まった少女達の物語です。

ラスト・フレンズ わたしたちの最後の13日間​
All the things we never said
ヤスミン・ラーマン
代田亜香子訳
静山社

まず物語に入る前に、左一頁にわたってこころの健康相談統一ダイヤルや、いのちの電話の電話番号がざっと紹介されている。えっまだ読んでもいないのに?今までこんな書籍はなかったので驚く。

 精神的な不安をかかえ、常に自分をさげすむ頭の中の声“カオス"につぶされそうになっているミーリーン、なんでも笑いとはずふりをしながら、1年前の交通事故で父を失い自身も大けがを負った絶望から立ち直れずにいるカーラ、家族との関係に問題を抱えているオリヴィア。誰にも言えない思いを抱えた16歳の少女たちが出会ったのは、あるマッチングサイトだった。

 日本でもSNSで自殺したいと書き込んだ人達を勧誘した事件があった。さて本書に登場するサイトは入り口は悪に見えて実は自殺願望の人達を救う善意のサイトなのか?いや、そもそも善意ならばわざわざ回りくどい罠を張る必要がない。

 カーラ、オリヴィア、ミーリーンと章が分かれ、持ち回りで彼等の物語が綴られる。希死念慮が大きくなっていることを示すためにフォントも配列も変更され、登場人物の一人の心情が混乱しているのを示すためにわざと文字列を乱した頁もある。読者が読んで明らかに違和感を抱くことを目的にしているばかりでなく、希死念慮に取りつかれている人が読んでしまったら、もしかしたら引きずられてしまうかもしれない内容なので異例の断り書きを入れたのか。人生の最後を決めたからこそ思い切ったことも言えるようになった三人は、次第にお互いを気遣い、助けるようになる。それは図らずも、死に向かう彼等の気持ちを逆に動かすことにもなる。だからといってまっすぐなハッピーエンドにたどり着かないのがリアルだ。

 自殺したい理由は人それぞれで、共感はできなくても理解できるものもある。その中で最も理解しづらかったのがミーリーンのそれだが、それ故に周囲に理解してもらえず、思いだけが突っ走る。友情は苦しんでいる友達の心を救うが、まさに苦しんでいる状況を救うのは、やはり大人の力が必要だ。大人たちも苦しい現代を生きていて不平不満を口にしないが、おとなしそうに見える子供を持つ親にこそ、是非読んで欲しい。


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最終更新日  November 16, 2021 12:00:19 AM
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April 2, 2021
みなさん、こんばんは。センバツ高校野球東海大相模優勝しましたね!
今日はファンタジー小説を紹介します。


ストラヴァガンザ 星の都 (上)
Stravaganza:City of Stars
メアリ・ホフマン
小学館 (SUPER!YA)

21世紀のイギリスにいる少女ジョージアは、親の再婚で兄弟になったラッセルのいじめに苦しんでいた。楽しみは骨董店の優しい主人ゴールドスミスさんと話すことだった。ふとしたことで手にした黒い仔馬の像を護符にして、時空を超え、異次元の世界へと旅立つ。旅立った先は、16世紀のシエナそっくりな街レモーラ。そこでジョージアは翼を持つ馬を世話しているチェーザレと出会う。

 前作「仮面の都」ではヴェネツィアに似た町ベレッツァが舞台だったが、今回はパリオという競馬が行われるシエナの町がモデル。主人公も男性から女性に代わり、自然相手役が男性に。そしてここはご都合主義っぽいが、前回の登場人物ルシアンことルチアーノも再登場。すっかりベレッツァの人になりきり、現在も女公主アリアンナと絶賛両想い中。

 「現実世界では病気で動けないが異世界で動ける」ルシアンに対してジョージアは健康上の問題は持っていない。ただボーイッシュな風貌で、“女らしさ”とは無縁のため、いわゆるフツーの女友達がいない。そしてそんなジョージアの事を母モーラも好ましく思っていないという、ふんわりフェミニズムが漂う設定になっている。やはり異世界の方が生きやすいと思ったジョージアはここで生きていきたいと考えるが、今度は「自分を異世界に連れていってほしい」とキミチー家の末息子ファルコに頼まれてしまう。

 共和国の悪者一族キミチー一族のモデルはメディチ家で、法王を出しており、自治を守るベレッツァを目の上のたんこぶのように思っている。女公主アリアンナと息子の一人ガエターノを結婚させようと画策するのでルチアーノも気が気ではないが、あいにくアリアンナの方が一枚上手だ。

 今回は敵対していたキミチー一族のガエターノとファルコ、ルチアーノとチェーザレらがファルコの異世界移動を巡って心を通わせ合う点がポイントだ。父親とその手下は相変わらず悪だくみに余念はないが、若者世代は恩讐を越えて友情を築くことができるかもしれない。また異世界に来て間もないジョージアにはキミチー一家の悪がわからず、異世界に行きたいというファルコを不憫に思う一方で、実は初恋だったルチアーノと一緒にいたいという気持ちもある。不思議な仔馬を巡る水面下のキミチー一族VS女公主チームの争いはいかに決着するか。


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最終更新日  April 2, 2021 12:00:19 AM
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December 30, 2020
みなさん、こんばんは。松坂桃李さんと戸田恵梨香さんが10日、結婚しましたね。びっくりです。

今日は色をわざと少なく使った作品を紹介します。

ブライアーヒルの秘密の馬 (Sunnyside Books)
The Secret Horses of Briar Hill
小峰書店
リーヴァイ・ピンフォールド
メガン・シェパード

 戦争中肺に水がたまった子供たちを収容する療養所の屋根裏部屋で暮らすエマラインは、ある日翼が傷ついた白馬を見つける。どこからか彼女の事をみていた馬の長と名乗る人物から、馬の名前はフォックスファイアで、ブラックファイアーという馬に追われていること、助けるためには色とりどりのもので囲まなければならないことを教えられる。自らも肺に溜まった水=Stillwaterに悩まされていたエマラインは馬を助けようとするが…。

 動けば動くほど息苦しくなるにも関わらず、色のあるものを集めようとあちこち動くエマライン。見返りがもらえるわけでもなく、自分の体を痛めつけるだけなのに、それでも生に向かわざるを得ない人の業と見るか、たった一つの希望を守ろうとするエマラインの必死さと見るか。

 酒井駒子さんが絵を担当した『赤い蝋燭と人魚』は物語が進むにつれて暗い色が増えていくが、本作の世界はモノクロだ。途中子供達が書いた絵も登場するが、鉛筆で書かれたような炭色をベースとした細かいデッサンで馬が描かれ、クライマックスシーンのみ、ベースの色が白から黒に変わる。周囲を黒にしたことで、小さくとも白馬の存在感が際立つ構成になっている。

 途中から“色とりどりのもの”が出てくるのだから、そこからだけでも他の色を指して良さそうなものだが、敢えて加えない。それは、エマラインが見ている世界がまさに色のない世界だからだ。戦争で物資が少なく、チョコレート一個を子供たちで争うような、心の中も灰色である。病院で面倒をみてくれるのは修道女なので白と黒、白衣の医師、片腕を亡くした若者が連れている犬は“老犬”と描写されているので、恐らく毛並みは悪い。羊もいるが栄養状態は子供とおっつかっつだ。

 唯一鮮やかな色は赤。フォックスファイアーが対好きな林檎の色であり、子供達が最終段階に達した時に部屋に張られる色であり、子供達が身体から吐く真っ赤な鮮血だ。生かす食べ物と死にゆく者から零れ落ちるもの―赤が、生と死両方に共通する色として位置づけられるのは何とも皮肉だ。


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最終更新日  December 30, 2020 12:00:20 AM
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