カテゴリ:共に生き、共に育つ
昨日の続きで、教育における演劇について、さらに深く考えていきたいと思います。
主体的に演じる演劇という遊びを、どのようにして教育の中に取り入れていくのか。 その具体的な実践事例として、とてもおすすめのDVD付き書籍があります。 それが、この本です!↓ 『ユーモア的即興から生まれる表現の創発 発達障害・新喜劇・ノリツッコミ』 (赤木和重 編著、クリエイツかもがわ、2019、税別2400円、DVD付き) いきいきと即興でお笑いを演じる子どもたち、そのクオリティの高さ、そこにある意味について、ズガンと衝撃を受ける本です。 赤木先生の編著になっていますが、主として「キミヤーズ」の村上公也先生の実践を報告した本です。 村上公也先生はユニークな実践をされている特別支援教育のスペシャリスト。 村上先生のことは以前のブログ記事でも何回か書いていますので、よければそちらもご参照ください。 ▼キミヤーズ塾オンラインでの村上先生のお話(「1しか言えない」ではなく、「1が言える」など) (2021/02/27の日記) 村上先生の教え子たちは、卒業してからも村上先生のもとに集まっているそうです。 その名も、イチゴママ塾。 いちおう学習会なのだそうですが、そこでの学びの深さ、レベルの高さに、非常に驚かされます。 村上先生は、次のように書かれています。 ・成長だとか発達だとかを目指し、成果だけを追い求めて、軋み合っている教育現場から離れて、知的好奇心を遊ばせる空間に自由人たちが憩いを求めて集まってくる。 (p90) 「学び」の理想型がここにはある気がします。 「成長だとか発達だとかを目指し、成果だけを追い求めて、軋み合っている教育現場」の住人である僕は、とてもドキリとしました。 成果主義に陥らないようにしようと心がけてはいるのですが、学校というところは、どうしてもそういう傾向から抜け出せなくなってしまいがちです。 だからこそ、本書のような、違った価値観を真正面からぶつけてくる実践本に、出会っておく必要があるな、と思います。 本書では村上実践だけでなく、砂川実践も紹介されています。 砂川一茂さんは放送作家。 誰でも簡単に参加できる「体験新喜劇」の普及に取り組まれている方です。 札幌市教育文化会館のホームページでは、砂川さんがつくられた、「誰でも漫才ができる台本」が公開されていますので、よければアクセスしてみてください。 ▼<教文たまてばこ> 砂川先生からのメッセージ 砂川実践について、筑波大学の茂呂雄二先生は、次のように書かれています。 ・虚と実を超えるパフォーマンス ・どこが演技でどこが演技でないのか、どこが台本通りでどこが台本と違うのか、そんな区別ができない、区別がアホらしくなるパフォーマンス ・台本から外れた大失敗ともいえるものが、じつは大きな笑いにつながっていました。 そうなると、これは失敗ではなく大成功なわけです。 砂川一座のパフォーマンス空間には失敗や間違いという文字はないようです。 失敗がないということは、リスクをとってチャレンジができる発達の空間だといえます。 (p146) ここで紹介されているパフォーマンスを演じられたのは、エコールKOBEのみなさん。 障害のある青年たちです。 通常の学校であれば、障害があることによってできないことが多く、失敗経験を重ねてしまうということが多く見られますが、砂川実践ではむしろそれが逆になるということが痛快であり、気持ちが明るくなるところです。 通常の学校の教育改革にも、こういった要素が、少しでも入っていけたら、と思っています。 赤木先生は本書の中で、今の日本の特別支援教育について 「能力・スキル向上至上主義教育」 「『できる』ことにこだわっています」 「計画通りに、子どもを教えようとする傾向が強い」 と書かれています。 (p161) 僕たち教員は、そのことに自覚的になり、その一方で、教育の中身の幅を広げるべく、努力する必要があります。 それは、多様性を受け入れて、寛容な教育をすることにつながります。 それこそ、全ての子が輝く、インクルーシブな教育です。 赤木先生は、村上実践と砂川実践を受けて、次のように、書かれています。 ・予定通りにいかないことこそが面白い ・「ユーモア」と「即興」です。 (p164) ・ユーモアの奥底にあるのは、「できる」ことではなく、「できなさ」を含み込んだ子どもの「ありのまま」に注目しているところです。そして、その「あなたのありのままが面白いよね!」というメッセージを子どもに伝えているところです。 「能力の向上」ではなく「存在の肯定」を大事にしています。 (p165) 今の日本の学校教育とは異なる価値観が、ここにはあります。 どの子もみんなの中で輝く、インクルーシブな学校を作ろうとするなら、ユーモアをとりいれることは、必須のことかもしれません。 最後に、本書にはコラムとして、東京学芸大学の渡辺貴裕先生も、寄稿されています。 そのテーマは、ズバリ、「演劇と学校教育」。 その中で、「先生が実況中継風にナレーションを入れる」という例も、書かれていました。(p78) 子どもが間違ったセリフを言っても、子どもが何をしても、実況中継のナレーションで「今日はなんだか、ちいさいヤギが中くらいのやぎっぽい!」(p79)などと、フォロー(?)をすることができるそうです。 今はYouTubeでも実況中継の動画が、はやっているようです。 先生が実況中継風のナレーションをつけることで、何が起きるか分からない状況を楽しんだり、予測がつかないことをする子どもたちに舞台上での活躍の機会をあげたりすることができそうですね。 「即興演劇」には、演劇の醍醐味がつまっています。 日常を即興演劇として楽しむことができれば、どんな状況でも楽しめるようになりそうです。 渡辺貴裕先生は、『なってみる学び』という本を書かれています。 買ってからしばらく本棚に置いたままにしていましたが、そろそろ読み始めていこうと思います。 『なってみる学び 演劇的手法で変わる授業と学校』 (渡辺貴裕) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022年12月05日 20時56分36秒
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