ツェルマットで聴くみかんの花咲く丘
ツェルマットの中心街を一人でのんびり歩いていた。何か音楽が聞こえる。録音したものではなく生の音楽が確かに聞こえてくる。よく耳を澄ますとモーッアルトのピアノソナタK.331番の第一楽章の変奏曲部分である。音がする方向を探すと、20mほど先にある五つ星ホテルツェルマッターホフのテラスの奥の方から聞こえてくる。赤いシャツを着た男性が音楽を演奏する体のムーブになっているのを見つけた!!私は美しい花壇の前庭を歩いてテラスまで行った。電子オルガンの前で男性が生演奏していた。K.331番の終わりまで演奏するとほんのわずかの休憩があった。私は臆面もなく「I love music」とか、「I love Mozart」とか「I,m from Japan」とか口走っていた。彼は次にはラテン系の音楽を演奏した。とてもリズムが洒落ていたので「テンポ・ルバート」と又しても言ってしまった。ところが彼も「テンポ・ルバート」とうなずき、何となく話が通じた雰囲気になった。 赤いシャツの演奏者 ホテルの洒落たコンテナガーデンそれから彼は「さくらさくら」「知床旅情」「みかんの花咲く丘」を演奏してくれた。もちろん全て暗譜である。これには驚いたし、嬉しかった。それだけ日本人観光客が多いということかもしれないが、異国の空に流れる「みかんの花咲く丘」はしみじみとして旅情に溢れていた。とても温かいものが胸に流れて二人で音楽を共有したのだった。