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カテゴリ:民法
土地を引き渡そうと思ったら何とその土地の一部は他人の物だったらどうなるのでしょう。 例えば清水君は三島さんと土地の売買契約をしたのに、その一部は草薙充のものでした。この場合、どうなるのでしょうか。 この場合も条文があります。 (権利の一部が他人に属する場合における売主の担保責任) 第五百六十三条 売買の目的である権利の一部が他人に属することにより、売主がこれを買主に移転することができないときは、買主は、その不足する部分の割合に応じて代金の減額を請求することができる。 2 前項の場合において、残存する部分のみであれば買主がこれを買い受けなかったときは、善意の買主は、契約の解除をすることができる。 3 代金減額の請求又は契約の解除は、善意の買主が損害賠償の請求をすることを妨げない。 まず、1項から見てみましょう 「売買ノ目的タル権利」とは売買の内容となっている物です。 この場合は土地をさします。 つまり、売買の内容となっている物が一部他人の物であったら「代金ノ減額ヲ請求」ができるということなのです。 また、2項・3項を見ると「善意の買主」つまり一部が他人の物であることについて知らなかった買主は「解除」「損害賠償の請求」ができるとあります。 とすると、1項には「善意」と書いていませんから、一部他人の物であることについて知っていても代金の減額を請求できると言うことになります。 これは何故でしょう。なんで一部他人の物であることについて承諾して売買をしたのにあとになって代金の減額を請求できてしまうのでしょうか。 それは、契約の内容が「今は他人の物だけどいずれ何とかするからその分を見越してお金を払いましょう」と言うものである場合もありうるのです。 例えば、三島さんの土地のみならず草薙の土地も欲しい清水君が 「三島さん、僕は貴方の土地とそれに隣接する草薙氏の土地も欲しいんだ。 隣人のよしみで三島さんが草薙氏に交渉してよ」といって三島さんと草薙氏の2つの土地の分のお金を予め支払うこともありえます。 そうして、草薙氏との交渉が決裂した場合、三島さんが「清水君、申し訳ない。草薙氏との交渉は決裂した。よって私の土地だけで勘弁してくれ。もちろん、草薙氏の土地分のお金はお返しする」と言えば誰も損するわけではありません。 このような場合を想定して563条1項は善意で無くても適用されるのです。 ところで、2項・3項の損害賠償・解除をみて「何だ債務不履行か」と思った方もおられるかもしれません。しかし、ちょっと違います。 債務不履行の条文である415条と比較してみてください。 (債務不履行による損害賠償) 第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。 563条2項3項には415条のように債務者の責めに帰すべき事由によってなど「債務者のせいで」と言う意味の言葉がありません。 つまり、債務不履行の場合は債務者のせいで債務不履行にならないと解除や損害賠償ができません。 しかし、563条の場合は債務者のせいで一部他人の物となったりしなくても適用されるのです。ということは債務者(売主)のせいでなくても563条の場合は解除や損害賠償ができることになります。 これは公平のためだといわれています。仮に債務者(売主)のせいでなくても一部他人の物であればその分債権者(買主)は損していることに変わりは無いですし、債務者(売主)は他人の物についてもお金を貰い得していることになるからです。 法律も結構考えているのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005年01月13日 17時50分57秒
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