|
テーマ:法律(493)
カテゴリ:憲法
憲法判例編 第3章 1私人の間では憲法が適用される? 「私人」とは公人の反対語であり、公務員など公共機関に属する人以外を指します。 早い話、公務員以外の一般国民と思ってくだされば結構です。 日常用語では、「公人」というとテレビに出ている人など、公に姿をさらしている人を指しますが、それとは違いますのでご注意ください。 まず、憲法とは国家権力を行使する公人を縛る物です。 第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。 この条文をごらんになればお分かりの通り、公人のみが憲法を守る義務があり、私人には憲法を守る義務などありません。 つまり、一般国民同士の争いには憲法が介入できない原則です。 しかし、いまや国家権力に人権を侵害されることはあまり無く、私人に人権を侵害されることの方が多いのです。例えば、芸能人の方は、マスコミと言う私人にプライバシー権を 侵害されることが多いです。 そうすると、いくら憲法が国家権力を縛るためだけにあるといって、憲法は私人との間には適用されないとしてしまっては、結局人権が保障されないも同然なのです。 国家権力によってプライバシーを暴くことは無くても、マスコミによってプライバシーを暴かれては、結局プライバシー権が保障されていないのと同じですよね。 じゃあ、憲法は私人にも適用されることにすればよいではないかと思うかもしれません。 それはそれでまた問題となります。 というのも、あまりプライバシー権だけを重視すると、マスコミの表現の自由を侵害してしまいます。 ですから、憲法を私人に適用して、むやみにマスコミの取材を制限するわけにも行きません。 そこで、判例はこう判断しました。 「私人の基本的自由や平等の侵害の態様、程度が社会的に許容しうる限度を超える時は、私的自治に対する一般的制限規定である民法1条、90条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によって、一面で私的自治の原則を尊重しながら、多面で社会的許容性の限度を超える侵害に対し基本的な自由や平等の利益を保護する方途も存する(三菱樹脂訴訟・最判昭和48年12月12日)」 ちなみに、民法1条とは、 「(基本原則) 第一条 1 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。 2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。 3 権利の濫用は、これを許さない。」 であり、 民法90条とは、 「(公序良俗) 第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。」 であり、不法行為に関する諸規定とは主に 「(不法行為による損害賠償) 第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」 を言います。 つまり判例は、私人の間では直接憲法を適用できないが、あまりひどいと憲法の趣旨を民法に読み込んで無効にするよって言ったのです。 つまり、憲法○○条の趣旨に違反するから、民法90条違反となり無効とするということです。 ただ、結局憲法を直接適用した場合とどう違うのかと聞かれると難しいです。 まあ、とりあえず憲法を直接適用は出来ないが、民法を間に挟むことによって権利を救済すると思ってください。 応援してくださる方は、下記のリンクをクリックしてください。 人気blogランキング お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005年02月21日 00時09分05秒
[憲法] カテゴリの最新記事
|