『あなたに不利な証拠として』 ローリー・リン・ドラモンド
『あなたに不利な証拠として』著:ローリー・リン・ドラモンド男性社会の警察機構で、闘い苦悩する、5人の女性警察官たちを描く十篇を収録。『2006このミステリーがすごい』海外編第1位『週刊文春2006ミステリーベスト』海外部門第1位といっても、ミステリー小説、という感じではなく、異常な日常を送っている女性たちの、日常の物語。各話によって主人公が次々入れ替わり、話し手も入れ替わり、なのにそれぞれお互いに、関係していたりと、混乱するけれど。想像もできない彼女たちの日常に、恐怖に似た感情を持ちながらも、引き込まれる。そして、バトンルージュ市警に5年間勤めた筆者が描く、生々しい被害者の姿。現場に踏み込むに当たって、嗅覚が重要だと、主人公の一人に語らせているが、その通り、死体が放つ臭いの、あまりの細緻な描写に、思わず顔をしかめてしまう。いつ呼び出されるか分からず、悲惨な現場に赴き、凶悪な犯人と対峙する。命を奪われた人の惨状を目の当たりにする。自分も、命を奪われるかもしれない。自分が、命を奪うかもしれない。常に、緊張の連続。過酷なストレスに日々さらされている彼女たちは、プライベートでも、武装したまま。女性であれ男性であれ、警官という職に就いている限り、そのストレスは恒常的なものなのだろうけれど、女性警官として、女性にしか分からない悩み、苦しみ、悲しみ、怒り、哀れみ、強がり、弱さ、迷いが、リアルに描かれている。全てから逃れようと、ニューメキシコにやって来た、主人公のうちの一人。そこでも心の武装を解くことができず、煩悶するが、そこに暮らす人々と触れ合ううちに、次第に、心が解きほぐされそうな兆しが見えるところで、本書は終わっている。タイトルは、アメリカの映画やドラマでお馴染の、犯人を逮捕する際に警官が言う、「ミランダ警告」からきているらしい。ランキングもよろしくお願いします♪♪本日のBGM読書感想★そのほか話題の記事はコチラ→