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2023.07.13
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カテゴリ:牧野富太郎
松村正剛171夜

牧野植物図鑑の謎
俵浩三
平凡社新書 1999
牧野植物図鑑の謎(俵浩三 著) / 古本、中古本、古書籍の通販は「日本の古本屋」
あくまで在野を貫いた稀代の植物学者・牧野富太郎は植物図鑑の開拓者だった。その図鑑製作をめぐる競争相手との葛藤や牧野のユニークな人間性を伝える植物図鑑黎明期の裏面史。
牧野富太郎
一人で日本の植物学を発展させ、一人で植物図鑑をつくり、一人でフィールドワークという歴史をつくった神様だった。日本の子供は全員が牧野植物図鑑で花の名をおぼえ、草の姿を知ったのである。

昭和10年から刊行が始まった『牧野植物学全集』全7巻は誠文堂新光社の刊行である。これは原田三夫がつくった版元で、全国で台風のように売れた。昭和15年からは北隆館から名著『牧野日本植物図鑑』が出て、ますます牧野世界が日本の全土に広まる。

本書はそこに誰もが気がつかなかった一人の犠牲者を掘り出してきた。それが村越三千男という一人の植物研究者であった。

牧野富太郎の『日本植物図鑑』と村越三千男の『大植物図鑑』

前者の初版印刷日は大正14年(1925)9月21日で、発行が9月24日。後者は大正14年9月20日が印刷日で、9月25日が発行。たった一日のちがいなのである。

実際には村越の図鑑はよく売れたし、『普通植物図譜』『野外植物の研究』なども好評だった。それなのに村越の名は植物学の歴史からはすっかり消えている。誰が村越を消したのか。
 村越三千男は学者というより民間の植物研究者であった。「東京博物学研究会」を主宰して、牧野とは別の意味で独力で図鑑編集に熱中しつづけた。

海外には「ニュートンに消された男」(ロバート・フックこと)「ダーウィンに消された男」(これはウォレス)「エジソンに消された男」(ニコラ・テスラのこと)といったたぐいのドキュメンタリーやノンフィクションが数多くある。

本書は、村越三千男という植物研究者を掘りおこした一方で、牧野富太郎の真の業績にも肉薄できた。

牧野富太郎。
 ぼくにはやはり、このひとは“神様”である。植物学の神様であるだけではない。実は「図鑑」というものを日本で最初に発明した“編集の神様”でもあった。


松村任三は村越三千男の『大植物図鑑』の序を書いている。
多分に牧野富太郎の『日本植物図鑑』を意識したものであることが分かる


大植物圖鑑

松村任三




 近來科學知識が一般に歡迎せられつゝあるは喜ぶ可き現象である。併し科學の範圍は廣いから、その總べてに亘る知識を何人もが得ようとすることは、それが各專門の知識であるだけに困難な業である。それで何人にも興味があり、直接必要な知識として歡迎せらるゝは自然科學、殊に動物及び植物に關する知識である。この方面の知識は婦人にも子供にも歡迎せられて、頻りに一般家庭に取入れられつゝある。
 一括して動植物といつても、其處には無限に廣い領野があるから、一通りでもこれを知らうとするは容易でないが、直接日常生活に關係のあるものだけでも知り置くことの便利なるは言ふ迄もない。殊にその中でも植物一般は人間の生活に最も密接な交渉があるから、何人もその方面の知識を多く蓄へて居て生活上に活用することが肝要である。此に於て人々に廣く植物に關する知識を得させるに良き手引となる案内書の必要が生ずる。それには植物圖鑑の如く直接有らゆる植物に親しませるに最も都合よきものを欲しい。然るに從來植物圖鑑も二三あるが、或は簡略に過ぎたり、材料の選擇が適當でなかつたり、往々研究の結果が如何かと思はれたりして、未だ十分吾人の意を充たすに足るものが尠い。これは一般に有用な植物の知識を普及する上に甚だ遺憾のことであつた。そこへ今回村越三千男君の大植物圖鑑が現れて、吾人の從來遺憾とし來つたものが之に依つて略々充たされた觀がある。
 余は當初村越君持參の本書を巨細に見た結果、その内容の充實せるに尠からず滿足を覺えたのであつた。今、余の眼に映じた本書の長所を列擧すれば、分類の整然たること、描畫の精密にして要を得てゐること、説明の懇切にして明快なること、材料の豐富にして遺漏なきこと、索引の至便なること等を數へることが出來る。從來世に出てゐる植物圖鑑には多く本書の著者村越君が關係してゐた樣であるが、未だ種々の點に於て不備なるを免れなかつた。併しそれも最後に本書を作り上げるための準備行爲だつたとすれば、それ等に完成を望むことは無理かも知れぬ。然るに本書は植物圖鑑として稀なる大著であるばかりでなく、總べての點から見て甚だよく整つてゐるので一般には勿論、專門家にも有用なものであらうと思ふ。
 余は以上の理由に因り大植物圖鑑の刊行を學界のために祝し、喜んでこれを江湖に推獎せんとするものである。

大正十四年九月

松村任三識


村越三千男
1872年、埼玉県に生まれた。
埼玉師範学校を卒業し、埼玉県立浦和高等女学校(現:埼玉県立浦和第一女子高等学校)、旧制埼玉県立熊谷中学校(現:埼玉県立熊谷高等学校)を歴任し、植物学と絵画を指導した。
1905年(明治38年)までは教師として勤務していたが、その後退職して上京。
教師時代に動植物の教育水準が低いことを懸念していた村越は、埼玉師範学校時代の同級生である高柳悦三郎(のちの埼玉県立久喜高等女学校校長)らと東京博物学研究会を立ち上げ、植物学のテキストとなる図鑑の発行を計画した。

1906年(明治39年)から、牧野富太郎の協力を得て『普通植物図譜』(村越三千男画・高柳悦三郎編・牧野富太郎校訂)の刊行を始めた。これは月一回のペースで発行されたが、最終的に全5巻60集まで発行され、全5巻に編集された版と抜粋版もそれぞれ刊行されている。

その後も牧野の校訂を受けて『野外植物の研究』(1907)、『植物図鑑』(1908)などを発行していくが、参文舎の社長が死去したことに伴い同社の経営が悪化、それによって『植物図鑑』の版権が北隆館に移ることとなった。この後北隆館が同図鑑を発行する際に、東京博物学研究会の代表者として掲載されていた村越の名が消され、徐々に牧野とも関係が離れていくこととなった。

その後村越は独自に植物図鑑を出版する計画を立て、1924年に『図解植物名鑑』を刊行、さらに次年の1925年には『大植物図鑑』を刊行した。『大植物図鑑』には、松村任三、丹波敬三、本多静六の3人が序を寄せ、その内容を称賛した。
一方『日本植物図鑑』の改訂版を同時期に計画していた北隆館は、『大植物図鑑』に後れを取らないために、牧野が満足に改訂できていない段階で1925年に『牧野日本植物図鑑』を刊行。しかし多数の誤植や内容の誤りがあり、34ページにわたる正誤表が付けられた。

村越はその後も、持ち運びのしやすさを重視した『集成新植物図鑑』(1928年)、多数の原色図版を用いた大型版『内外植物原色大図鑑』(全13巻、1933-1935年)など、多様なニーズに合わせた植物図鑑の刊行を続けた。一方、新種の記載など植物学に関する研究成果を公表することはなく、もっぱら図鑑編集に携わっていた。

1948年(昭和23年)に死去。

著書
以下のリストには、村越が主導的に関わった東京博物学研究会の編著も含む。

東京博物学研究会(編)・牧野富太郎(校訂)『普通植物図譜』(1906年、積文社) - 1907年に参文舎より再版。
東京博物学研究会(編)『普通動物図譜』(1907年、参文舎)
東京博物学研究会(編)・牧野富太郎(校訂)『野外植物の研究』正・続(1907年、参文舎・積文社)
東京博物学研究会(編)・牧野富太郎(校訂)『植物図鑑』(1908年、参文舎) - のちに北隆館に発行権が移された[7]。
村越三千男・東京博物学研究会(編)『有毒植物図譜』(1908年、篠崎純吉)
東京博物学研究会(編)・山内繁雄(校訂)『図解植物名鑑』(1924年、二松堂)
村越三千男『大植物図鑑』(1925年、大植物図鑑刊行会) - 1941年に梧桐書院より縮刷版が刊行[13]。
村越三千男(編)『集成新植物図鑑』(1928年、大地書院)
村越三千男(編)『応用新植物図鑑』(1930年、大地書院)
村越三千男(編)『集成昆虫図鑑』(1932年、フタバ書院成光館)
村越三千男・飯田弥助『趣味の有用植物』(1932年、修教社書院)
村越三千男(編・画)『内外植物原色大図鑑』全13巻(1933-1935年、植物原色大図鑑刊行会) - 1937年に誠文堂新光社より全6巻として再版。
村越三千男『総合新植物図説』(1936年、照文社)
村越三千男『原色図説植物大辞典』(1936年、中文館)
村越三千男『図説植物辞典』(1938年、中文館) - 1936年版の縮小版。
小野田伊久馬・村越三千男『図解動物小辞典』(1938年、照文社)
村越三千男(編・画)『内外植物原色大図鑑』全1巻(1940年、誠文堂新光社) - 1933-35年刊行版の縮小版。





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最終更新日  2023.07.14 21:02:19



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