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2024.06.25
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カテゴリ:報徳
福祉民俗学とその視角
―柳田國男と宮本常一を中心に―
柴田 周二
大和大学政治経済学部教授

(略)

相互扶助を原理とした自立と協同の人間関係,それを支える小集団の形成に関して興味深いのは,「勤労」「分度」「推譲」と互助を基本とする二宮尊徳の報徳仕法に基づく地域開発の理
論と実践,常会などの組織を中心に運営された報徳社の運動である.
独立自営農民を中心とする民衆生活の互助組織としての報徳社は,幕末から明治にかけて,尊徳の後継者たちによって形成され,静岡県を中心に,東北,関東,東海,近畿に至る広い範囲でいくつかの本社に分かれて活動を展開した.
民俗学の柳田國男も農商務省時代に報徳社の活動に注目し,報徳社の精神団体としての倫理性を説く岡田良一郎とは対照的に(信用組合は実利を主とし,報徳社は道徳を主とする),経済と倫理の一致の上に立って,信用組合としての産業組合へ転換する理論を展開している(柳田,1997a).
報徳社では農村復興のために農民に貸し付けられた資金への事実上の利子返済を「推譲」に基づく「謝金」として位置付け,構成員は「勤労」による謝金を納入して初めて「一人前」の人間とみなされ,常会を通じての農業技術の習得や生活環境の整備などの社会貢献活動を行うなど,構成員の倫理的結合と小規模単位の福祉の実現に寄与した.
その後,報徳社は,様々な経過をたどりながら,第二次世界大戦後には,農村や産業社会の変化や,戦争に利用された暗いイメージなどから衰えた(柴田,2011).
 現在,報徳社の数を正確に把握することは困難であるが 3),その活動は様々であり,むつかしい運営を迫られているところも多い.
しかし,住民が力を合わせて生活していかなければならない山峡,過疎,自然の厳しいところなどでは農協や漁協の精神的支柱や組織として活動を維持しているところもある(静岡新聞社,996).
また,二宮尊徳や報徳社に縁の深い 17 市町村が加盟している全国報徳研究市町村協議会では,毎年,全国報徳サミットを開催して,加盟市町村が一堂に会し,報徳仕法の検証を通じて,これからのまちづくり・ひとづくりに必要な取り組みに関する意見や情報の交換をしている.
そして,震災で大きな被害をこうむった福島県などでは,以前から存在していた報徳社の活動が,人々をつなぐ復興の原理として見直されたりしており,かつて報徳社の活動が展開された地域では,地域福祉の発展の基礎となる社会的資本が残されている可能性がある.
その思想と活動の歴史を追うことは,これからの福祉社会の形成にとって意味があるといえる.
 政治学の丸山眞男は,「歴史意識の『古層』」という論文において,歴史意識の古層を,「持続低音はそのままでは独立の楽想にならない.主旋律のひびきを変容させる契機として重要なんです
ね」(丸山,1992)と述べている.これからの社会福祉の主旋律が何になるかを述べる能力は筆者にはないが,個人の自立と協同の人間関係やそれを支える小集団の形成に求める福祉文化のあり方
を,制度面だけでなく,人々の生活態度の面から考える「福祉民俗学」は,いわば社会福祉の主旋律のひびきを受容し変容させる持続低音や共鳴盤を探ることによって,社会福祉の現実化に間接的
に寄与する可能性を有すると思われる.
生活の思想と福祉社会の通販/柴田 周二 - 紙の本:honto本の通販ストア





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最終更新日  2024.06.25 01:54:38



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