大和絵の系譜 その20
【伊勢物語絵巻】 十世紀から現代まで、千年もの長い間語り継がれて来た物語を絵画化した絵巻物の中で、優品とされるのがこれ・・・・ 拡大するとよくわかりますが、黒い斑点が無数に・・絵が隠れてしまうかと思うくらい・・ これは、背景全体に空間表現として、銀箔の砂子蒔き、が施されており、年月を経たことによって、銀が酸化し、黒変したことによるもの。銀箔を刻んで蒔き散りばめてあるのです。 説明がないと、・・・・この黒くて汚らしい絵のどこが優品?? とお叱りを受けてしまいそうですが、黒化したとは言え、繊細堅実な力量を感じさせる確かな線描、と大らかな着彩は、並々ならぬ腕のプロの仕事・・・銀色がハッキリしていたころはさぞかしゾクゾクするような出来栄えであった事は確かです。 源氏物語とはちょっと違う、伊勢物語。昔男ありけり・・・・と言うフレーズで始まる女性の為のファンタジー!? 有名な逸話が満載されています。 時代が下ると本として仕立てられるようになる源氏物語に対して、短編の集合体ですから、掛け軸や、さり気ない装飾美に良く用いられるようになるのです。 伊勢物語の名場面を、工芸品に取り入れた意匠は、ズット後の時代にも造られ続けます。 これも、本歌取りの精神ですね。 ちなみに、本として仕立てられた源氏物語は、沢山造られて、その優品がこれ・・ こちらは【絵合(えあわせ)】・・・源氏物語表紙絵 同じく、【藤裏葉(ふじのうらば)】 同、拡大図です・・・