カテゴリ:ひとり言
日経最終面文化欄の連載「私の履歴書」、今月は画家の安野光雅さんの投稿。本日がその5回目です。 大正15年生まれだということですから、私どもの父親の世代にあたる方ですね。 幼いころから絵にひときわ興味があり、修身の教科書の内容などは挿絵で覚えていたというほどの方ですから、これはやはり天職ということなのでしょう。 この「私の履歴書」は、経済人や政治家によるものよりも、俗に言うところの絵描きや物書き(文人・芸術家)の方が、はるかに読み応えがありますね。文人というのは、常に自分の内面と向き合っているのが仕事と言ってもよいような人たちだから、そのような人の人間形成が、人生のいつ、どのような出来事によって影響されたのだろうかということを探ることができると思うのです。 そういう意味で安野光雅さんの今日5回目に登場した、小学校時代に隣席だった貧しい女の子の話は、非常に興味をひかれました。 父子家庭で、たまに弁当を持って来ない日があり、運動場で一人で遊んでいたという女の子。 安野さんは、「わたし(安野さん)は、隣の席だったのに何もしてやることが出来ず、ただおどけて笑わせるのが精一杯だった」と、回想しておられます。 これが安野さん小学校2年生のときのことですから、こういった感性がすでにそのときから養われていたことが分かります。以後60年あまり経って彼女と再開する機会があり、彼女がその後結婚し、4人の男の子に恵まれ、みんな大学にやったこと、農業をやっているが、畑を襲うイノシシのほかに心配はないなどと言ったことを聞き、彼女が子どもの時に苦労したことは無駄ではなかったと述懐している。さらに、同級生には遥かに裕福だった子の方が多かったはずなのに、彼女より幸せだといえる人が何人いるだろうかと考えたとあります。 人間50年・60年を経て、誰しも振り返る人生観というものが感じられますね。 文章も短いセンテンスで歯切れよく書かれており、読みやすいです。絵ばかりでなく文章にも秀でておられるのがよく分かります。 恥ずかしながら、安野さんのお名前は、この「私の履歴書」で初めて知りました。お書きになる絵についても同様です。一度拝見してみたいものだと思ったことでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011年02月05日 14時20分29秒
[ひとり言] カテゴリの最新記事
|
|