カテゴリ:本
人気時代小説作家・上田秀人は、江戸時代の目付、書院番、奥祐筆、勘定吟味役などの役人を主人公にしたシリーズものでヒットを飛ばしていますが、上田はこれらの役職を 「江戸幕府役職集成」「江戸役人役職大辞典」「江戸時代奉行職辞典」「江戸幕府旗本人名辞典」などの資料から見つけ出したと、自らの著書「武士の職分 江戸役人物語」で明らかにしています。 上田にはぜひ「公人朝夕人(くにんちょうじゃくにん)」シリーズに挑戦してもらいたいものですな。・・・って、無理か?(笑! 冗談はさておき、私は上田のように難しい資料を読み解く才能など持ち合わせていませんから、楽天ブックスからこんな本を探し出してきて、上田が新しいシリーズを出版した時のためにと、ひそかに準備をしています。 「お江戸の役人 面白なんでも事典」 中江 克己 著
冒頭にあげた公人朝夕人(くにんちょうじゃくにん)なる、信じられないような役職についても書かれていました。若年寄の支配下にあって公文書を伝達したり、上申の受け渡しなどをした 同朋衆(どうぼうしゅう)組頭の差配に組み入れられていて、代々土屋孫右衛門が世襲した役職であったことも紹介されています。 江戸時代は260年の天下泰平の世を保ったのは承知のとおり。戦国の気風がまだ漂っていた家康、秀忠の代までならまだしも、こんな役職が果たして必要だったのだろうかと思えるものが、堂々と幕末までに残っていたというのが興味をそそります。 その最たるものを一つあげるとすれば、「貝太鼓役」。正式には「御貝役」と「押太鼓役」に分かれていた。いづれも合戦の時に味方の軍勢を鼓舞し、進退の合図としても使われた、ほら貝を吹きと陣太鼓を打つための武士。それがそのまま役職として残っていたというのですから、これほど硬直した武家社会を象徴すものはありませんね。 幕末になっても「我こそは三河・駿河のころよりこの方、合戦の折に御貝役を務めた○○が子孫、○○某なるぞ。これは三方原の合戦の折に吹き鳴らしたと伝わる貝である」などと、御貝役は胸を張っていたのだろうか? 公人朝夕人しかり、貝太鼓役にしてもしかり。このような役人が幕末になって黒船を迎えることになっても改まることがなかったというのは、幕府は滅ぶべくして滅んだのであろうという思いがして来ます。 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017年05月15日 12時31分08秒
[本] カテゴリの最新記事
|
|