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カテゴリ:本
人気時代小説作家上田秀人の「表御番医師診療禄」は、本編で早くも第10話。その副題には「宿痾(しゅくあ)」とありました。 「宿痾」とはあまり聞きな慣れぬ言葉ですが、字引きで調べてみると、「容易に治らないで、長い間悩まされている病気。持病」とありました。
何としても継嗣をと望む5代綱吉直々の引きで、表御番医師から御広敷番医師に昇進した我らがヒーロー・矢切良衛。綱吉の命で南蛮の懐妊術を習得するために長崎に遊学したものの、わずか3月余りで江戸に呼び戻され、綱吉の愛妾お伝の方付きの大奥担当医を命じられる。 城内の目は、良衛が持ち帰ったとされる阿蘭陀(オランダ)流懐妊術に集まる。 「そのようなもの(阿蘭陀流懐妊術)などあろうはずもない」 全てを承知している良衛のつぶやきだけが、空しく響く。そのつぶやきが消える間もなく、魔の手の差し向ける刃が次々と良衛を襲う。 金の力で娘のお露を大奥に上げ、綱吉のお手付き中臈にまでさせた日本橋の廻船問屋・房総屋市右衛門は、お伝の方より先にわが娘を懐妊させようと、阿蘭陀流懐妊術を奪わんと、良衛がひそかに思いを寄せる患家・伊田美絵に魔手を伸ばす。美絵を人質に懐妊術を得ようというのだ。 さらには幕府典薬頭(てんやくのかみ)半井出雲守(なからいいずものかみ)は、このままでは良衛の義父で同役の今大路兵部大輔(いまおおじひょうぶのだいゆう)に遅れをとってしまうと、手段を選ばぬ行動に出る。 何としても継嗣を得んと欲する綱吉、そして6代の生母となり大奥での絶大な権力を維持したいお伝の方、その懐妊を阻もうとする大奥と幕府内の反対勢力。そして何より阿蘭陀流懐妊術などあろうはずもないのだ。 ・・・良衛危うし。 江戸城内にうごめく野望・野心にまみれた醜き輩の姿こそ、徳川泰平の世を悩ませた容易に治らない病・「宿痾」であるに違いない。 良衛はこの危機をみごと切り抜け、「宿痾」を療治することができるのだろうか? ![]() にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017年08月30日 21時33分09秒
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