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長編時代小説コーナ

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龍5777

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Jun 27, 2006
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 勝ったり負けたりの繰り返しのすえ、とうとう借金が三十両にふくらんだ。

六蔵が態度を豹変させるのはすぐであった。

 焦った鍬次郎は六蔵に借金を申し込んだ。

「加藤さま、石垣さまのご紹介で今まで大層な大金をお貸しいたしましたが、

一度このあたりで清算させて頂きます。その後ならまたお貸しいたしますが、

三十両は大金でございます」猫撫で声で六蔵が清算を迫った。

 鍬次郎は絶句した、己の愚かさを悔いたがあとの祭りである。このような

大金をかえすあてはない。「檜垣屋殿、もう少し用立ててはくれまいか」

「それは無理というもの、まずは三十両の清算をお願いしますよ」

 六蔵が赤鼻を光らせ断固とした口調で断った。「何とかできぬか?」

「清算出来ぬと仰せなら、証文を書いて頂きます。期限は半月とさせて頂きま

す。本来ならば賭場の貸し借りは即金が仕来りですが、石垣さまの顔をたてる

意味で特別にご配慮いたします」六蔵が凄味のある顔をはじめて見せた。

「証文と申しても、拙者には何も財産がない」

 その言葉で六蔵の態度が豹変した。

「ご禁制の博打に手をだし、負けた金は一文も払わねえとは虫のいい言い草だ。

恐れながらと訴え出ても宜しんですかえ」鍬次郎は完全に彼等の罠にはまった。

「おめえさんも藩士の端くれだ。そこの所を確りとわきまえて返答してもらいてえ」

 口調ががらりと変わった。

 鍬次郎に怒りが湧きあがった、顔面から血が引き大刀に手がかかった。

「抜くなら抜いてみな、おめえさんの家は家名断絶だぜ」

 六蔵が見逃さず威嚇した。言われなくとも分るが、余りの悪し様な言葉でかっと

なったのだ。「許せ、拙者の落ち度じゃ。半月の間に金策いたす」

「そのように仰せなら、わしらにも人情てなものがござんす。だが期限まで金策が

出来ねえ場合は、ご妻女をあずかりますぜ」「なにっ、妻を差し出せと申すか?」

「左様でございます、この世界では当たり前の仕来りです」

 六蔵が凄み、鍬次郎は返す言葉を失った。妻を借金のかたに差し出す意味は

朴念仁の彼でも判る。「・・・分った」力なく首肯した。

「ならば簡単。貴方さまは上府を控えておられる、金策できずに上府が出来

なくては気の毒。ここに十両ございやす、証文には四十両と書いて頂きやす」

 鍬次郎の目の前に小判が輝いていた。

 十両を懐にして彼は暗澹たる思いで檜垣屋を去った。

 六蔵はお糸を二年あずかると言った、それは江戸でのお勤めが終る期間で

あった。 秘密を守って帰国すれば、もとのまま夫婦として暮らせる。

併し、お糸が承知するか、証文は鍬次郎の懐にある。お糸の返事を聞いてから

差し出す積もりであった。いっそ二人で命を絶つか、色んな思いが交差し鍬次郎

の胸を締め付ける。

 気がつくと屋敷の門前に佇んでいた。入りづらく夜空を仰ぎ見た、漆黒の空が

広がっている。「貴方」玄関にお糸が現れた。

「どうか為されましたか?・・・余り遅いので心配いたしました」

 無言で屋敷に入り座敷に座った、お糸がただならぬ夫の顔色を見逃さずに

訊ねた。


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Last updated  Jun 27, 2006 10:02:26 AM
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