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テーマ:日々自然観察(9784)
カテゴリ:昆虫(ハチ)
セイヨウミツバチかニホンミツバチかは、翅脈を見れば簡単に分かる。しかし、クリスマスローズの花は下向きなので写真が撮れない。花を起こせばハチは逃げてしまう。其処で一計を案じた。 生け捕りにして冷蔵庫で冷やし、動けなくしてから写真を撮るのである。早速、捕虫網で1頭を捕らえ、網の中でシャーレに入れて冷蔵庫行き。このミツバチ達は越冬しているのだから、冷蔵庫程度の低温で死ぬことはない。
1時間程よ~く冷やしてから取り出すと、ミツバチはシャーレの中でひっくり返っていた。一見死んだ様に見えるが、死んではいない。翅を畳んだ状態なので、此の儘写真を撮っても余り翅脈の見易い写真にはならない。其処で、動き出すまで暫し待つことにした。 やがて、脚と触角がゆっくりと動き始めた。更にもう少し経つと、今度はチャンと起き直って翅を少し拡げた。撮影のチャンスである。急いで翅の写真を撮った頃には、もうかなり元気になっていて、机上で接写をする時に使う台紙の上を歩き始める有様(最初の写真)。 しかし、翅脈が綺麗に撮れていることを確認するまで開放する訳には行かない。また、シャーレに戻って貰って、冷蔵庫行き。
1回目はピンぼけ写真だったが、2回目にはチャンと翅脈が撮れていた。やはり、セイヨウミツバチ(Apis mellifera)(ミツバチ科:Apidae、ミツバチ亜科:Apinae)であった。2番目の写真で、右がセイヨウミツバチ、左がニホンミツバチ(Apis cerana japonica)である。ニホンミツバチでは後翅のM脈末端がRs脈との接点(正確にはr-m脈)以降も少し伸びている(白い矢印)が、セイヨウミツバチにはそれがない(M脈はRs脈との接点で終わる)。 これは、晶文社の「あっ!ハチがいる」の検索表や、色々なWebサイトで示されている両種の見分け方である。しかし、他にもう一つ翅脈上の違いを見つけた。ニホンミツバチの前翅のr-m(?)脈にある「枝」(黒い矢印)である。セイヨウミツバチにはこれが見当たらない。この様な翅脈上の枝は、時として個体変異として現れることがあるらしいが、数年前に撮った別の写真にもチャンと写っていたし、また、Web上を探すと、同様な枝を持つニホンミツバチの写真が見つかった。まァ、例数が少ないので、今後ニホンミツバチを見つけたら出来るだけ写真を撮って確かめてみよう。
さて、写真もチャンと撮れたので、ミツバチ君(雌だが・・・)を開放することにした。まだ飛べないので、取り敢えず、ヒラタアブ類の餌として植えてあるノースポールの花の上に置いた。ミツバチはクリスマスローズには沢山やって来るが、このノースポールは全く無視されている。従って、ノースポール上のミツバチは不自然で、ヤラセと言える。しかし、それでもお腹が空いたのか、将又、仕事熱心なのか、何回も筒状花に口吻を差し込んでいた。
やがて10分もすると、午後の日に照らされて体も充分温まったらしい。プーンと一気に飛び上がり、2度程小さな輪を描いてから、北の方へ飛んで行った。 数10年前読んだ本に、ミツバチは太陽の位置を判断して飛行の方向を定めると書いてあった。太陽が隠れていても、青空さえ見えれば、偏光を感知して太陽の位置を知ることが出来ると云う。しかし、身柄を確保してから2時間は経ったと思うので、太陽の位置は30度も西にずれている。間違った方向に帰って迷子になるかも知れない。少し心配になったので調べてみると、ミツバチは帰巣に際して視覚を有効に活用しているらしい。多分、チャンと帰ることが出来るだろうが、まァ、仮に迷子になったとしても、餌もねぐらも何処にでもあるのだから、死ぬことはあるまい。 セイヨウミツバチは、この数10年間、我が家では見ていないと思う。一体、何処からやって来たのであろうか。ミツバチの行動範囲は半径数km(通常2km位)にも及ぶと云うが、我が家のクリスマスローズ程度の蜜源に遠くからやって来るとは考え難い。この辺りには500坪を越える御宅もかなりある。何処か近くに、庭で養蜂を始めた蜂好きの御人が居られるに違いない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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