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2013.12.01
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カテゴリ:Heavenly Rock Town
翌朝、温柔な感触がまだ仄かに残っている唇に口紅を引き、私は少し早目に部屋を出た。ここNew Wave地区の東に隣接するHR/HM地区に先日オープンしたスイーツ店のウーピーパイが美味しいと専らの評判なのだが、仕事帰りに寄るといつも売切れているので今日は朝一番で買いに行こうと思ったのである。
 噂のスイーツ店「Aaliyah」は、01年8月に航空機事故で夭逝したアリーヤことアリーヤ・ダナ・ホートン(Aaliyah Dana Haughton)の店だ。彼女は私と同じく22歳でこの町へ来たという。
 目当てのウーピーパイ10個詰合せを二箱購入して勤務先の書店に向かっていた私は、朝から嫌な人を見てしまった。昨夜、リッキーと熱い口付けを交わしていたリジーである。いくら仕事の為とはいえ、あんなに濃厚な…いやいや、リッキーだって好きであのような事をした訳ではない。そう、彼はそれ程までに必死なのだ。リジーに迫れば背後にいる人物が掴めるのではないかと。
 その彼女がスーツ姿の男性と並んで通りの向かい側を歩いている。ひょっとするとあの男性はリッキーが探している人かもしれない。彼女達は全くこちらを見向きもしなかったが、私はどこの誰かも分からぬ男性の容貌をしかと目に焼き付けた。

「高崎様、ウィルソン氏との面会予約は取られていますか?」
 ウーピーパイ詰合せ一箱を午前中にイアンと平らげ、もう一箱の方をリッキーに差し入れようと昼休みに情報管理センターを訪れた私は、受付嬢のカレンから前回と全く同じ事を尋ねられた。彼女は至って真面目なうえ職務に忠実な女性なのだ。
「いえ、予約はしてないのですが。無理なようでしたらこれを彼に渡していただけないでしょうか?」
 何せリッキーは知る人ぞ知るここの、いやこの町のお偉いさんであるから、いくらプライベートで親しかろうがそう簡単に会えないであろうことは分かっていた。
「お待たせカレン、交代の時間だから休憩に入ってちょうだい。…ん、お客さん?あ、貴方たしか前にも来たわよね」
 どうやら先に昼休みを取ったと思われるどすこいさん、じゃなかったキャスがどすどすと受付ボックスに入るや、私の顔をじろりと見て声を掛けてきた。
「今日もリッキーに用なの?」
「ええ。アポは取ってないので、会えないようならこれを渡していただきたくて」
「彼なら大通りの向こうにある “Wilburys Grill & Bar” にいたわよ。まだいるはずだから行ってみれば?」
 そういえば以前リッキーに昼食を御馳走になった時、いつもあの店に行っていると言ってたっけ。私はキャスに礼を言い、小走りでジョージとロイの経営する店に向かった。
 店の外には席が空くのを待っている人達が並んでいる。ここもかなり人気がある店らしい。彼等の視線を背に受けながら店に入った私は、キョロキョロと店内を見渡してリッキーを探した。
 彼は店の一番奥のテーブルで、二人の男性と共に昼食を取っていた。一人は以前紹介してもらった情報資源部のシーだ。残りの一人もおそらく会社仲間であろう。邪魔をしていいものか躊躇していると、気付いたシーが何やらリッキーに話し掛けながら手招きしてくれたので、私は遠慮がちに彼等の元へ行った。
「食事中に邪魔してごめんなさい。あの、これをリッキーに差し入れようと思って。受付のキャスがここにいるって教えてくれたから…」
「あ、これ美味いって近頃評判のヤツだよね」
 私がおずおずと差し出した菓子箱を見て、シーの隣に座っている男性が声を弾ませたおかげで、場の空気が一気に和んだ。
「へぇそうなんだ、皆で有難くいただくよ。キオ、ランチはもう済んだのかい?」
「うん。もう一箱買ってたのをさっきイアンと5個ずつ食べてきちゃった」
「そっか、じゃあ何か飲んでいく?俺達も今から頼むところなんだ」
 お言葉に甘え、私は空いていたリッキーの横に腰を下ろした。リッキーはいつものように私を隣の子だと紹介し、続いて先程助け舟を出してくれた男性を私に紹介してくれた。システム研究開発部のランディと名乗った彼は、どことなくリッキーに似て温和そうな人である。
 Quiet Riot(クワイエット・ライオット)やオジー・オズボーン(Ozzy Osbourne)のバンドでギタリストとして活躍していたランディ・ローズ(Randy Rhoads)は、82年3月に飛行機事故により25歳の若さでこの町に来たという。
 さぁそろそろ戻るとしようか、とシーが口にしたのと同じタイミングで、隣のテーブルにいた連中が腰を上げた。その中の一人の顔には見覚えがあった。今朝リジーと並んで歩いていたあの男に間違いない!

aaliyah.jpg Aaliyah Dana Haughton (January 16, 1979 – August 25, 2001)
randy.jpg Randall William Rhoads (December 6, 1956 – March 19, 1982)





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Last updated  2023.07.04 20:22:17
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