Pastime Paradise

　「Mr.Boo! マイケル・ホイ（許冠文）祭」第7夜の今宵は、前作に引き続きマイケルが監督・脚本・主演をこなし、75年に公開された大ヒット作「天才與白痴」を御紹介。
　ホイ兄弟の作品ながら舞台が精神病院ということもあってか、日本では劇場公開もビデオ化もされなかったが、公開から38年後の2013年に突如「Mr.Boo! 天才とおバカ」のタイトルでDVDが発売された。もう少し発売が早ければ広川太一郎さんの吹替が聞けたかと思うと残念でならない。
　前作同様、マイケル＆サム（許冠傑）っぽい鴨と鶏の印象的なOPアニメーションは區晴氏によるものかな？（タイトルデザインだけかも？）

　恒生精神病院には曾楚霖演じる緑の帽子をいつも被っている統合失調症の患者や、西瓜刨演じる自分が死んだと思って白い布を被りたがる患者やらが大勢入院しており、医者も競馬の電話をしながら心臓手術をこなしたりしている。そこで働くサム演じる看護士の李は時々一人で霊安室に篭っては針で死体を生き返らせる練習をしており、康嘉欣演じる女看護士と霊安室でイチャイチャ。マイケル演じる阿添はその病院で雑役をしており、今日も亡くなった患者を霊安室へ運んだついでに金歯をガメている。
　ある日、喬宏（ロイ・チャオ）演じる鄭明が女性を殴って入院することになった。鄭明は宝だという袋を大事に持っており、鄭和（明朝の宦官で7回にわたる南海遠征を行った）からもらったとのこと。そして公主（姫）は世界一きれいな人だと言う鄭明に、公主との関係を尋ねたサムが公主の婚約者だなと口走った途端、鄭明が暴れだした。
　隔離室に入れられた鄭明に阿添が食事を持っていくと、彼は古びた電鍵を打っていた。公主に渡してくれとラッパや陶器の欠片を受け取った阿添は、すぐさま骨董屋へ売りに行く。陶器は明代に景徳鎮で作られた青花で、完全な状態なら数十万ドルの値が付くという。阿添が店を出ると李が待ち構えており、鄭明の袋のお宝を山分けしようと持ち掛ける。
　鄭明が脳波検査を受けることになり、担当する王琛演じる王先生に李が尋ねる。
李「人は死んだら脳はどうなります？」
王「死に方にもよるが、心臓が止まって息をしなくなっても脳細胞はしばらく活動している」
李「死んだ直後の人は何かを考えているのか」
王「通常、人の脳細胞は一定期間活動する」
李「近くで家族が泣いても聞こえるんですね」
　検査を終え、麻酔で眠っている鄭明の袋を奪った李と阿添は再び骨董屋へ向かう。明代青花、しかも宮廷用の陶磁器ばかりで割れてなければ数百万ドルの価値があると言われたものの、どれも欠片ばかりだったため、二人は荷物をまとめて店を出た。そんな二人を追う怪しげな二人組に彼らは全く気付かなかった。
　あの患者は一体何者なのだ？公主に電報を打っている。公主と聞けば喜ぶが、婚約者と聞けば怒る。…調べる必要がある！
　院内でダンスパーティーが催され、公主に電報を打ったという鄭明に李が公主は奥さん？と尋ねると、またしても殴られる。心配した阿添が鄭明の元へ行くと、この技は公主に海浜ホテルで教えたと答えた後、心臓発作を起こして急死してしまう。
　鄭明の遺体が安置されている霊安室で、阿添は霊を呼んで宝の隠し場所を聞こうとし、李は針を打って生き返らせようとするも、どうにもならない。諦めるしかないか…と思ったところで、李は王先生との会話を思い出す。心臓は止まっても脳は動いてるはず――。脳波を見てみるとやはり動いてはいたものの肝心の宝の在処を聞き出す術がなく、二人は公主を探しに海浜ホテルへ向かう。
　たまたまホテルのプールサイドで二人の会話を耳にした艾綺蓮演じるダイビングインストラクターの女性が声を掛けたことで、公主はこの女性の幼名で鄭明が彼女の父親だと判明する。鄭明は昔は電報の通信士をしていたが、ダイビングが好きでインストラクターに転向。妻の死後は娘を一人で育て上げたが、娘に恋人が出来るといつも不機嫌になり、最近は喧嘩ばかりで先週自分をぶって家を出たきり姿を消したとのことだった。
　二人は公主を鄭明に対面させる。公主が声を掛けると脳波測定針が反応した。脳波検査の音が電報に似ていると気付いた李は、子供の頃に電報を教わったという公主に鄭明が何を伝えようとしているのか尋ねた。
　…公主…親愛的…爸爸一生最愛你……請你原諒我吧！
（親愛なる姫へ　パパは生涯お前を愛していたよ　どうか許してくれ）
公主が「許してあげるわ」と言った後、鄭明の脳波は停止した。
　翌日、鄭明が遺したクルーザーに乗り、彼が生前ダイビングしていたという沈んだ船の辺りにお宝が眠っているかも…と潜る二人。見事に大量の骨董品を手に入れたが、そこに警察が現れ…。

　ホイ兄弟のリッキー（許冠英）も、ホテルのプールでローラースケートをはいたウェイター役でちょこっと出演している。
　そして院内パーティーで演奏しているバンドは、サムがヴォーカルを務めている蓮花樂隊（The Lotus）。voのサムにリードgの周華年、リズムgの李松江にbの蘇雄、そしてdsが張浚英の5人組。

　喬宏（ロイ・チャオ）は前作でも停車違反した男の役でチラッと特別出演していたが、今作では堂々と精神病患者役を熱演。
　石天（ディーン・セキ）も海浜ホテルの従業員役で、前作から引き続き出演している。でもってプールで公主にダイビングを教わっている男性達の中には程小東（チン・シウトン）の姿も。
　また、音楽担当の顧嘉煇（ジョセフ・クー）も軍械法證課（香港警察の刑事安全部刑事部門法医学部門所属で、警察の銃器・弾丸の性能評価や防弾チョッキのテストなどを担当。軍火專家）の阿輝役で最後の方にちらりと出演。
　
　王先生役の王琛、緑の帽子の患者役の曾楚霖、骨董屋役の姜南、死んで金歯を取られた爺さん役の郝履仁、自分が死んだと思って霊安室で寝ていた男役の西瓜刨、脳波検査を受けていたおじさん役の馮敬文など、これまで何度もマイケル出演作に登場しているベテラン俳優さん達が、揃って今作でもいい味を出しているのが嬉しい。

　　　

　天才與白痴　The Last Message　1975年8月21日（香港）
　邦題 ： Mr.Boo! 天才とおバカ　
　監製 ： 鄒文懷　導演 ： 許冠文　編劇 ： 許冠文、薛志雄、劉天賜　
　制片商 ： 嘉禾電影有限公司（Golden Harvest）、許氏影業有限公司（Hui's Film Production）
　演員 ： 許冠文、許冠傑、喬宏、王琛、艾綺蓮、康嘉欣、劉一帆、許冠英、姜南、郭利民、曾楚霖、石天、顧嘉煇、蓮花樂隊
　配樂作曲 ： 許冠傑、顧嘉輝
　語言 ： 粵語（広東語）
　票房 ： HK$ 4,553,662（1975年第1位）