孤宿の人(上)
およそ1年ぶりとなる宮部みゆきの時代小説に時を費やした。主人公が超能力の持ち主というわけでもなく。事件がおぞましいほどのセンセーショナルなものでもなく。次へ続く展開が謎めいて頁をめくるのも惜しくなるほどでもなく。つまるところ、この物語にこれまで慣れ親しんできた『宮部みゆき』らしさはさほど感じることができずにいる。幾つかのサイトを漁ってみたところ、この作品は宮部さん自身も何度も挫折しかけたほどの苦心の作品とのこと。私はといえば、登場人物の『人となり』がうまくイメージできずに困っている。それぞれの人の顔だけでなく、その人たちが醸し出すオーラといったものも。それとは反対に丸海藩という架空の場所(とはいえモチーフは香川県丸亀市であることは容易に想像がつく)の美しさは、文字だけでよくもまぁこれほど映像化させるなぁ、と。 ・海うさぎ ・波の下 ・鬼来る ・闇は流れる ・孤独の死 ・涸滝の影 ・遠い声 ・死の影