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テーマ:日々自然観察(9783)
カテゴリ:昆虫(アブ、カ、ハエ)
いきなり眼だけを出しても全体像が分からないので、先ず普通の接写写真を掲げておく。体長は6mm前後、大きさは手頃だが、体に厚みがあるので、多少撮り難い相手である。 翅の先端が黒くなっているのが分かる。「ツマグロ」の所以である。体に艶があるので「キンバエ」と付いているが、汚物に集るキンバエとは関係ない。しかし、汚いキンバエも、このツマグロキンバエも同じクロバエ科に属す。
以前、ツマグロキンバエ(Stomorhina obsoleta)には近縁種が何種か居るのではないかと書いたが、九大の目録を見るとこの属は日本では1属1種である。他にコシアキツマグロキンバエ(Idiella sternalis)と言う種があるが、別属だし「コシアキ」と付くからにはかなり外見の異なるハエだと思われるので、写真のハエはツマグロキンバエとして良い様である。 複眼の縞模様が良く見える。体にも縞があるが、ずっと細かい。
さて、これを超接写するなると、結構シンドイ。今まで掲載した超接写の写真は全て「据え物撮り」である。テーブルの上に被写体を置き、カメラは手持ちだが、椅子に座り肘をテーブルに載せて撮るのでかなり安定している。 しかし、今回は花の上を歩き回る虫を撮らなければならない。絞りを16に絞って(倍率を最大にした状態では実効F32)も被写界深度は0.5mm位、この範囲にハエの眼を入れなければならない。 更に、つい最近分かったことだが、この様な超接写をすると、F16に絞った場合、実際に焦点が合うのは、ファインダーで像がキチンと見える面よりも0.5mm位後になる。絞り開放(F2.8)で実験すると、殆どズレはないから、レンズが非球面でないことによる焦点移動らしい。 焦点は、絞り開放でファインダーで覗きながら、目視で合わせる。開放で0.5mm違うと完全にぼけた状態である。1.5mmもズレれば殆ど何だか識別できない。ソモソモ何処に焦点が合っているのか非常に分かり難いのだが(開放ではフレーアが出た様なボワーとした像になる)、その分かり難い焦点面から少し引いて、0.5mm前でシャッターを切らなければならない。これは、真っ暗な部屋で落とした十円玉を拾うより遙かに難しい(慣れると音で何処にあるかすぐ分かる)。撮った写真の9割5分以上は無駄写真であった。
このハエの複眼の幅(=頭部の幅)は2.1mm、原画の横幅は約12mmなので、何れも部分拡大である。 ストロボの光が直接当たった部分は、模様が不明瞭となり、ややこしい色を反射している。複眼の単位をなす個眼は小さいとは言え複雑な構造をしているので、何らかの構造色が出ているのかも知れない。 複眼にある模様は、正面のよりも、横面の方がハッキリしている。斜めに見た方が模様が分かり易いのか、或いは、ストロボの光が影響しているのかは良く分からない。
少し横から撮った写真(上)と比較しても、大した変化は認められない。やはり複雑な色をしている。この程度の倍率だと、複眼の模様は個眼の中央にあるレンズの色ではなく、レンズの周りにある組織の色の違いにより生じている様に見える。 そこで、上の写真の片眼をピクセル等倍に拡大してみた(下)。
画面中央上の少し青みがかった部分を見ると、縞模様の色の濃い部分とそうで無い部分で、個眼のレンズの色にも多少の違いがある様に見える。しかし、カメラの方向に対して垂直に近い面(画面やや右下側)を見ると、レンズの部分の色には変化が少ない。 どうも、レンズ部分の色はストロボの光が個眼の中で複雑に反射した結果生じたもので、レンズ自体に色は付いていない様な気がする。そうであれば、複眼にどんな奇妙な模様があっても、見る方にとっては何の問題も無い訳である。 しかし、何となく解決した気にならない。推測に過ぎる。やはりこう言う問題は、ストロボで撮ったマクロ写真等ではなく、実体顕微鏡下で資料をためつすがめつし、更に必要であれば、より高度な手法を使って解決すべき問題だと言う気がする。 (なお、これは、専門家にとっては、当然解決済みの問題なのであろう。) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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