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カテゴリ:GIS
お台場の日本科学未来館で開催されていたG空間EXPO2016は今日が最終日。
Geoアクティビティコンテストの結果発表があった。 Geoアクティビティコンテストは「G空間情報に関する独創的なアイデア、ユニークな製品、画期的な技術等を持つ中小・ベンチャー企業、大学関係者、NPO法人等による展示やプレゼンテーションの機会を提供し、関係者間の交流を促進」が目的とされており、公募から審査を突破したプレゼンターが3日間ブースを出すほか、審査員の前で公開プレゼンテーションを行い、優秀な作品が表彰される。 昨年までのGeoアクティビティフェスタが今年から従来別に表彰されていた電子国土賞と統合されてGeoアクティビティコンテストに生まれ変わったものだが、実質的には第5回目を数える。 審査結果は以下のとおり。 <最優秀賞> 「高校・大学連携による津波避難評価シミュレーションシステム」焼津高校・京都大学防災研究所 畑山満則 <部門賞・電子国土賞> 「本四高速における地理院地図を活用した GIS の構築(舗装マネジメントシステムと防災情報支援システム)」本州四国連絡高速道路株式会社 「国土地理院提供データを活用したクロスメディア展開」北海道地図株式会社 <部門賞・測量新技術賞> 「国内最大規模の地盤情報データベース 『G-Space』」アサヒ地水探査(株)佐藤 瑞穂 「車輪型移動体向け自律航法に基づく屋内外測位技術」サイトセンシング株式会社 興梠正克 <教育効果賞> 「ドローンを活用した近赤外画像撮影による水稲の生育状況の把握」愛媛県立伊予農業高等学校環境開発科 村井麻里亜 「高校生がおこなう空間科学研究-AED の空間配置-」兵庫県立加古川東高等学校 小橋拓司 <地域貢献賞> 「〜 観光客の緊急事態を救え!〜安心して観光できるのは奈良 鹿(しか)ない! 」チーム緊急事態 青木和人 「高校・大学連携による津波避難評価シミュレーションシステム」焼津高校・京都大学防災研究所 畑山満則 <審査員特別賞・社会貢献賞> 「空輸中映像のオープンデータ化 - CC-BY な空中写真を皆さんに-」スカイマップ株式会社 三田友規 <審査員特別賞・地図デザイン賞> 「現代の江戸切絵図」慶應義塾大学環境情報学部 吉田桃子 <審査員特別賞・G空間未来賞> 「GISで小学生を笑顔にプロジェクト」坂井市役所教育委員会学校教育課 北岡武 <奨励賞> 「地図から作る!誰でも罹災証明!」あっとクリエーション株式会社 植田粋美 <来場者賞> 「ドローンを活用した近赤外画像撮影による水稲の生育状況の把握」愛媛県立伊予農業高等学校環境開発科 村井麻里亜 受賞者が多くなったのは全体のレベルが高く、拮抗していて審査が難航したからとの審査委員長談があった。 実際にユニークで画期的、実用的、そしてバラエティに富んだ作品が多いという印象を受けた。 各ブースを回って、個人的に気になったところを取り上げたい。 最優秀賞を受賞したのは焼津高校・京都大学防災研究所の畑山満則さんの「高校・大学連携による津波避難評価シミュレーションシステム」。 大学側がプログラミングを伴うソフトウエア部分を提供、システム構築に必要な調査とデータ作成はすべて焼津高校の高校生が担っている。 もともと津波リスクが高く、避難が間に合わないことも想定される地域の中で、生徒たちが各家をヒアリングしてシミュレーションと対比させながら、最善の解決策を考えていく。 生徒たちがデータをつくり(時にプログラムもしたそう)、地域の中に入り、各家にオーダーメイド避難を提案する取組自体が画期的なことに加えて、それを実践するための独自の避難訓練も行っている点も興味深い。 避難訓練ではシミュレーションに従って、「ツナミスト」と名づけられた生徒たちが、一列になって津波に見立てた青い布を掲げながら避難する人を(津波の速度に合わせて)追いかけてくるという方法がユニーク。 高校生が地域防災の電子化に関与するだけでなく、実際に地域の人たちの中に入って、一緒に最適な避難を考えて行くことで、地域全体の防災への認識が高まっている点も含めて、素晴らしい取組だと感じた。 地図デザイン賞を受賞した慶應義塾大学環境情報学部・吉田桃子さんの「現代の江戸切絵図」は地図を扱った作品として非常に斬新だった。 江戸切絵図を現代の地図に幾何補正するようなものはこれまでに色々出てきているが、こちらは切絵図のデザイン性に着目して、現在の街を江戸切絵図の図式で表現しようという試み。 徒歩のナビゲーションマップを指向していることから、広い車道を川に見立てるなどアプローチもアイディアもユニーク。 入賞こそしなかったが、パスコ・谷口絵梨果さんの「オープンデータを活用した市民が地図をデザインするサービス Mappin’ Drop(マッピンドロップ)」も地図的視点からは面白かった。 行政がGoogleマップを印刷して配布するなど著作権的に問題のある使用が報道されたりする中、市民が独自のデザインで気軽に印刷できる地図を提供しようという仕組み。 国土地理院が刊行している数値地図(国土基本情報)から生成された地図データを、ユーザーが用意されたいくつかのデザインスタイルの中から好みのものを選択して、自由にテキストやアイコンを配置することでオリジナル地図を作製できるサービスになっている。 クラウドサービスで生成した地図は画像としてダウンロードする形で印刷にも対応している。 オープンデータをより有効に使ってもらえる意味で行政にも有益なサービスになりそう。 北海道地図の「国土地理院提供データを活用したクロスメディア展開」は博物館などを対象にして、巨大な床地図や大型ディスプレイ映像、Webサイトなど複数のメディアを組み合わせたコンセプトワークで地図を展開する取組。 同社ならではの美しいコンテンツが最大限に生きるアプローチともいえるが、地図そのものが持つ魅力を多角的に見せる点は汎用性が高いように感じた。 正統派の地図調製の会社がこういう形で入賞するのも嬉しいこと。 スカイマップ・三田友規さんの「空輸中映像のオープンデータ化 - CC-BY な空中写真を皆さんに-」はコンセプトの良く、社会貢献賞というのが凄く納得できる取組。 撮影を生業にする同社が、撮影地への空輸中にも撮影をして、その成果を誰もが使えて再配布可能なCC-BYのオープンデータとして公開しているもの。 昨年水害があった鬼怒川の増水後の画像を公開したところ、それを利用してオルソモザイクするマッパーが現れるなど、オープンデータとしての効果が既に表れている。 撮影を生業にしている会社が写真をオープンにするのは勇気があることだと思うし、こういう志は応援したくなる。 愛媛県立伊予農業高等学校環境開発科・村井麻里亜さんの「ドローンを活用した近赤外画像撮影による水稲の生育状況の把握」は農業高校らしく、水稲栽培におけるさまざまな問題の解決策として、ドローンの近赤外画像からNDVIを求めて生産管理をしようという試み。 農業高校らしくなどと簡単に書いてしまったが、サポートがあるであろうとはいえ高校生の取組としては非常にレベルが高いもので、このコンテストでもブース対応からプレゼンまで、1年生の女の子がほぼ一人でこなしていたことは大変な驚きだった。 来場者賞も受賞しているように、一般来場者の評価も高く、彼女の今後にも期待してしまう。 将来G空間の世界で活躍する人材になってくれたら嬉しいこと。 高校生がらみでは兵庫県立加古川東高等学校・小橋拓司さんの「高校生がおこなう空間科学研究-AED の空間配置-」もレベルが高かった。 理数科の生徒が課題学習としてAEDの空間配置における危険エリア(5分以内で処置できない)を通路ネットワークや建物の階層も考慮したバッファから推定するもので、GISやエクセルを使いつつも予算を考慮してさまざまな工夫を施している点は感心させられた。 また、学校での取組では坂井市役所教育委員会学校教育課・北岡武さんの「GISで小学生を笑顔にプロジェクト」も良かった。 何と小学校での取組で、しかも小学校3年生からGISを使っているというのはあまり聞いたことがない。 北岡さんは学校の先生ではなく市役所の職員で、公開GISをどうやったら使ってもらえるのかを考えた結果、小学生に使ってもらうことで波及させるという方法を思いついたとのこと。 アプローチとして面白いうえ、子どもたちが楽しみながらGISを使っているという点もいい。 チーム緊急事態・青木和人さんの「〜観光客の緊急事態を救え!〜安心して観光できるのは奈良 鹿(しか)ない!」は、もユニーク。 観光地ではトイレの数が足りたいことから、トイレ待ちで時間を無駄にしがちという観点から、簡易的なセンサーでトイレ街の列を計測してクラウドデータベースに取り込んで、待ち時間の少ないトイレの情報をスマホアプリで提供しようというもの。 これは目の付けどころが素晴らしいことに加えて、リアルタイムオープンデータとしての可能性や、データを蓄積することでトイレの適正配置などに繋げることもできるなど応用性が高い。 あっとクリエーション・植田粋美さんの「地図から作る!誰でも罹災証明!」は災害時に負荷の大きな業務となる罹災証明の発行を、市町村の日常業務である固定資産税管理と統合する形で地図と連携させ、タブレットで簡単に行えるように工夫された仕組み。 実際に今年高知県黒潮町の防災訓練で使われており、同社のかんたんマップのコンセプトどおり、簡単に使える点がポイントとなっている。 実用性・汎用性が高いことから製品として比較的軌道に乗るのが早そうという印象。 こうして見てみると確かに全体にレベルが高かったことはよく理解できる。 高校生がこれだけ入ってきて、しかもレベルの高いプレゼンをしていることにも驚かされたし、画期的なことだとも感じた。 このあたりはコンテスト形式で続けてきた一つの成果と言っていいのかも知れない。 GeoアクティビティコンテストはG空間EXPOのアトラクションの中でも「ユニークさ」という点ではぴかイチで、実際にプレゼンターとやりとりができる面白さもあるので毎回非常に楽しみにしている。 ここから大きくブレイクする製品が出ることを願いつつ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016.11.27 03:52:52
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