カテゴリ:生の欲望の発揮
東京に岡野雅行さんという金型、プレス職人がいる。6名ぐらいの家族経営の町工場の代表社員である。社長といわないところが面白い。
その岡野さんが、痛くない注射針をテルモの依頼で作り上げ、グッドデザイン大賞に輝いている。 その人の考え方がユニークだ。 岡野さんが手がける仕事は単価の安い仕事と技術的に誰も出来ないことだという。 ふつうの町工場は誰もができて、単価がそこそこのものをみんなが競ってやるという。しかしそのやり方では3年たてば、競争原理が働き商品は単価が下がり、儲からないスパイラルに落ち込んでしまう。またそういう仕事は中国などの新興国にとって代わられるので意味がないという。 岡野さんは逆にそういう新興国でさえも単価が安すぎて投げ出したものを、大量生産していく。だから競争相手はいない。逆に言うと競争相手がいないものしかしない。 自分独自の道を絶えず探し求めている。大量生産するためには、機械で自動化していく必要がある。そういう金型からプレス機は自分の腕の見せ所であるという。一から作り上げる。 ところが一旦作り上げても、3年から5年をめどにして、場合によってはすべてのプラントを売りにだしたり、外注に出す。 変化を読みどんどん仕事内容を変えていくスタイルを貫く。一つのプラントを作り上げても、自己満足して、それに胡坐をかき固執することは、会社の存続の危機を招くという。 森田を学習する人はここのところから学んでほしい。森田先生のいう諸行無常である。すべてのものは変化流動しているのであって、周囲の状況に合わせて絶えず自分を変化させないと自分の存在そのものが危うくなるということであった。感情をそのようにとらえて、絶えず変化流動させれば、神経症に陥ることはない。 さて他方で開発困難だが、6割の成功の見込みがある開発の仕事は引き受けるという。そして完成したあかつきには、金型とプレス機、その後のメンテナンスまで含めてプラントとして販売するという。特に潤滑油はプレス機独自に配合しないとうまく機能しないという。これは企業秘密だという。 相手は有名な大手企業ばかり。NASAからも依頼が舞い込んだこともあった。それでも他に作れるところがないので、売値は自分のいいなりであるという。1000万円のプラントでも1億ぐらいにはなるようだ。もっとも開発にある程度の期間がかかり、試行錯誤もあるので、その費用もたくさんかかっているのだろう。でも自分の提示した見積もりがそのまま通るので、大企業のダンピング要請に応じることは全くない。そんな仕事を年に2つから3つこなしている。 私が参考になったのは、人と同じことはしない。人と違うことをする。自分の特徴を活かして独自の路線を追い求めていく姿勢である。人の顔色をうかがう必要はない。気楽である。人の顔色を気にしないのでストレスで胃潰瘍になることはない。 今後多くの町工場が生き残っていく道はあるという。それには競争に巻き込まれてはダメだ。特に新興国と競争になっては負けてしまう。競争しなくても生き残れる道はある。そのためには自分の特徴を活かして、独自の道を開拓していくしかない。 森田理論を学習している人は、この姿勢を岡野さんから学んでほしい。人と同じような生き方を真似しなくてもよいのだ。人に追随して、人と同じことをする事は楽ではあるが、自分の主体性、積極性、意欲が骨抜きにされて、悶々とした人生に甘んじなければならない。 自分が主役として、自由にのびのびと生きてゆける道を目指したかったら、人の顔色をうかがうことはやめた方がよい。岡野さんを参考にして「生の欲望の発揮」の意味をみんなで議論していこうではありませんか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013.07.22 07:13:07
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