映画・海外ドラマ・本 ひとこと言いた~い

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日本作家によるノンフィクション&エッセイ・その他のジャンル

September 14, 2021
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みなさんこんばんは。国民民主党の山尾志桜里衆院議員が、政界を引退する意向を示しましたね。今日は中野京子さんのエッセイを紹介します。

名画で読み解く プロイセン王家12の物語​
中野 京子
光文社新書

ハプスブルグ家、ブルボン家と同じくプロイセン王家にも姓はある。ホーレンツォレルン家といい、ホーレンは高いという意味だ。有名人はフリードリヒ大王とビスマルク。前者は国王、後者は鉄血宰相である。

 フリードリヒ大王の肖像画、どんぐり眼が可愛いが、眼差しは鋭い。視線の先は亡き父親か。大王は妻帯したが同性愛者である。若き日に彼氏と逃亡を図ったがあっけなく捕まり、本人は塔に幽閉されたまま恋人の処刑を見せられる(が、正視できず本人失神)。いやいや父王、スパルタが過ぎる。怯んで心を入れ替える事を狙ったのだろうが、性癖は簡単に変えられない。むしろ恨みが募る。

 仮面夫婦はいたが、妻を殺すような君主はいなかった。近臣結婚で血を絶やすこともなく、他の王家に比べて地味という印象だが、話題がないのはそれだけ真面目に国を富ませる事に集中したと言える。さすが質実剛健のゲルマン魂。鯨飲馬食した君主もいたが、国を傾けるようなヴィッテルスバッハ家や悪い賭けに乗るハプスブルグ家の失敗をよそに、ドイツ帝国誕生までひたすら駆け抜けた。中世の軛から抜けられないヨーロッパ諸国をよそに勢力を伸ばし、地図を次々と書き換えたのは、いつか大国になることを夢見るゲルマン魂だった。明治維新当時の日本もお手本としているので国民気質が似ていたのだろう。

 しかし快進撃もここまで。ビスマルクが国際舞台から退場すると、彼の予言通りの末路を辿る。末裔が戦犯として裁かれなかったのがせめてもだ。上り詰めるまでは時間がかかるのに、落ちるのはあっという間の217年(うるうる)。




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最終更新日  October 25, 2021 12:15:03 AM
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March 16, 2021
みなさん、こんばんは。NTTまで接待を受けてたんですね。総務省ずぶずぶですね。
群ようこさんの小説を紹介します。

無印おまじない物語
群ようこ
角川書店

「どうせなら、不幸よりしあわせなほうがいいと思いませんか」(『義理の妹』より)なんて、人に言われるまでもない。誰でも幸せになりたい。でも、幸せになる確実な方法なんてないのだ。そう知っていながらも、つい心が弱った時には、藁だろうが何だろうが、すがりたくなる。本作は、そんな中で幸いにも(?)信じるものを見つけた人達が登場する、どこにでもいる普通人達の行状録「無印」シリーズである。

しかしこんなにたくさん幸せになる方法があるとは、世間は本当に広い。
懸賞にはまった妻のために、夫が望まぬセックスを強いられてしまう『ジンクス』には、笑いつつも夫に同情を禁じえないが、同じ体を使ったおまじないでも、『明るい未来』には爆笑した。通りすがりに呼び止められたおばさんに、はずみで失恋を告白してしまった主人公は、部屋に連れて行かれ、珍妙な体操をしながら、「わっははーい」「るりるりるーん」という意味不明の言葉を言うよう命じられる。奇天烈なかけ声の文字を見た途端に吹き出してしまった。そして笑い終わった後、こんなおまじないをちっとも信じていない主人公が、あり金全部渡すのでなく、千円をふところに残す図々しさを顧みて、「これから何があってもふてぶてしく生きていけるような気がした」くだりを読んで、人間って結構タフだなぁといたく感心してしまった。


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最終更新日  March 16, 2021 12:00:21 AM
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August 21, 2020
みなさん、こんばんは。藤井聡太くんすごいですね。王位と棋聖の二タイトルを最年少獲得です。

今日も米原万里さんの著作を紹介します。
彼女は数少ないロシア語通訳者だったのですがエピソードをたくさん持っています。

ロシアは今日も荒れ模様
米原万里
講談社

 宮城谷昌光氏「孟夏の太陽」に収録された「隼の城」に、こんな場面がある。

趙家の総帥趙鞅(ちょうおう)が、子供達を山に連れて行き、「隠してある宝の符を探せ」と言う。実はこれは後継者選びを兼ねていた。夕方になり、憔悴して戻ってきた子供達のうちで、ただ一人、
「符を見つけました。」
と言ったのが、妾腹の無恤(ぶじゅつ)だった。彼は、次々に項垂れる子供達の顔を見ている父を眺めて、
「そろいもそろって、あなたの子はたわけではありません。」
と言おうとし、前述の言葉となった。
「うちの息子達はみんな駄目だ。」と気落ちする父を励ましたかったのだ。
その時、無恤はどんな顔をしていたか。きっと、ぶるぶると拳を震わせていただろう。

 本書を読んでいると、なぜかあの場面の無恤の表情が浮かんできた。
崩壊後、元気のない旧ソ連の人々の先頭に立った米原氏が、ぶるぶると拳を震わせ、こう言っているように感じた。
「そろいもそろって、ロシア人は飲ん兵衛ばかりではありません。」

 とはいえ、次から次へと出てくる酒絡みの小噺の多さから察するに、事実彼等は、酒をたくさん飲むのだろう。日本人の感覚からすれば、うわばみと言われる位に。だが、一度でも冬の大陸を渡った者ならわかる。地面についている靴を伝って、這い昇ってきた寒さが、遂に頭の
てっぺんに達した時の「ひゃあ! 寒い!」という感覚。半端ではない。
あれだけの寒さに対抗するのには、体の中でぼうぼう火を燃やすしかないのだ。そう、酒には寒さ対策という、立派な健康上の理由もあるのだ!ほら、そう考えると、むげに「ロシア人って飲ん兵衛ばっか!」と言い捨てられないのでは?…と、言ってるそばから管を巻く某政府要人が登場!あーらら、せっかくフォローしたのに。

 と、まあこんな酒絡みのエピソード以外にも、驚きのトイレ体験や、音楽家が日本で気に入ってしまった意外なもの、要人達の素顔などが収録されていて、くすくす笑ったり、呆れたり、読む側は百面相に忙しい。そしてこの中には、後の著書「真夜中の太陽」に育ってゆく、日本への批判の目(芽)、「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」に育ってゆく、国家の影響を受けたごく普通の人々へ向けられた目(芽)等、後に花開き、実を結ぶ双葉が
そこかしこに見受けられた。
「栴檀(せんだん)は双葉より芳(かんば)し」といいますが、この双葉、ちょっとウォッカ臭い。でも、ロシアへの愛に溢れてるから、悪酔いはしないだろう、多分。
我と思わん酒飲みの貴方、どうです? 試してみませんか?


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最終更新日  August 21, 2020 12:00:19 AM
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August 20, 2020
みなさん、こんばんは。渡哲也さんが亡くなりましたね。
今日から二日間米原万里さんの著作を紹介します。
彼女はとにかく文章巧者でした。

オリガ・モリソヴナの反語法
米原万里
集英社

1960年。志摩の通う、ソビエト大使館付属八年制普通学校の名物と言えば彼女だった。ど派手な服装で「ああ、神様!これぞ神様が与えて下さった天分で
なくてなんだろう!あたしゃ嬉しくて嬉しくて嬉しくて狂い死にしそうだね!」
と天を仰ぐその人は、オリガ・モリソヴナ。ダンス教師、特技は反語法。
彼女の仲良しでフランス語の先生、エレオノーラは志摩を見つけると
「あなた、中国の方?」と何度でも聞いてくる典雅な婦人。
そんな二人が揃って「アルジェリア」に示した反応が気になった志摩は、その謎を探る旅に出る。

 私には、名物教師の記憶はないけれど、今でもそらで言える幼い頃に読んだ本の一節が、いくつかある。だから、反語法の数々を30年経った今でもそらで言える志摩にとって、モリソヴナがどんなに印象的だったかよくわかる。

 唐突に遊びに来た友達。転んだ来賓。暗い目をした美少年。謎の娘。小さい頃に聞き流していた出来事の裏が次々と解き明かされてゆく中で、謎が謎を生む展開は、ミステリーとしても手応え十分。おまけに志摩が日本に帰る日は決まっている、いわばタイムリミットつきときているのだから、読んでいるこちらも「果たして間に合うのか?」と、はらはらしながらページを繰る。途中食事のシーンが入る。「ああ、食べてる場合じゃないってば!こういう時に言う、いい反語法表現はないかしらん?」と天を仰ぎたくなった。でも、良く食べるせいか、彼女のフットワークは非常に軽い。劇場、図書館、ミュージックホール、バレエ学校。言葉の壁を持たない翻訳家の彼女は、グラスノスチ以降という時代の流れも味方につけ、開かないドアも友人、知人の助けを得て、見事情報を手に入れる。
 あっぱれ志摩。

 志摩が、収容所の生き残りである女性から聞くスターリン時代の収容所での暮らしは、苛烈を極める。緊張と恐怖の中で、何と多くの、数え切れない程の未来と才能、そして命が押し潰されてきたことか。そしてまた何と多くの希望と善意、数え切れない程の反語法がやりとりされてきたことか。同じ人間に、ここまで酷い事ができるのが人間。それでも尚、こんなに強く、優しくなれるのも人間。人間に対する怒りと感嘆、肯定と否定。ああ、人間って、人間って。何て言っていいのやら。二つの思いを同時に言い表せる言葉が見つからない。
これをすっきりさせる言葉は、やっぱりこれしかないだろう。
「ああ、神様!これぞ神様が与えて下さった天分でなくてなんだろう!」


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最終更新日  August 20, 2020 12:00:18 AM
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February 29, 2020
みなさんこんばんは。2月はコロナウィルス一色でしたね。
さて、今日は電車が好きなある少年の話を紹介します。

昭和電車少年
実相寺昭雄
ちくま文庫

 駅のホームで、一番端に陣取って、カメラを構えている人達を、たまに見かける。だが、やっぱり列車は止まっているのを眺めるより、乗っている方が楽しい。子供の頃にブームだったブルートレイン、今は殆どないディーゼルカー、『青い光の超特急~時速250キロ~』なんて、歌にもなった新幹線。そして、海外に行った時は、バスよりも飛行機よりも、一番手近な交通手段として重宝した列車。それほど生活に欠かせない存在なのに、語り尽くすほどの情熱も、知識も持っていない。

 そんな列車について、ウルトラマンシリーズで有名な、実相寺監督が綴ったのが本書である。「十八時間もかかる寝台列車の旅が好き」(p28)と語ったり、交通博物館への熱い思いを綴った文章を読んでいると、「人って好きなものの前では子供みたいに素直になるんだな」と思った。宇宙人がなぜか列車の中で会話している「宇宙の仇は、長崎で」なんて一篇は、「監督、遊んでるな」と微笑ましく思った。電車の形式の説明や、その頃の周りの様子なども描かれているので、鉄道ファンや、監督と同世代の人達にはとても懐かしいだろう。


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最終更新日  February 29, 2020 12:00:17 AM
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December 20, 2019
みなさん、こんばんは。古本はお好きですか?
小説家の角田光代さんは古本がお好きみたいですよ。

古本道場
角田光代&岡崎武志
ポプラ文庫

引っ越したり職場を変わった時に、まず探すのが図書館と書店だった。なのに今は、実際行って本がないとイヤなので、なるべく無駄を無くそうと「ネットで調べればいい。そしてあったら、ネットで買えばいい」と考える。「古本道を究めた師匠・岡崎氏の指令を受けて、作家・角田氏が実際の書店を訪れ、依頼された本を探す」という本作の企画は、こうした発想とはまるで逆だ。体験記から自然と浮かび上がるのは、「本とは何か」「書店とは何か」ということと、便利さの代わりに我々が失ったもの。「(書店で)棚から棚を見ていくうち、忘れていたいろんなことがぽろぽろぽろぽろ勝手に思い出(p21)」された経験。「とおりいっぺんの現実とはべつに、時間の沈殿する不思議に静かな空間を、その魅力を、知って大人に(p108)」なっていった学生時代。鎌倉の古書店を訪ね、今は亡き米原万里さんを訪問した、なんてエピソードもある。意外だったのは、幕張メッセに行くための通過駅や、出張で新幹線に乗る出発地点としか見ていなかった東京駅構内に、古書店があったこと。せかせかした日常から離れたくなった時、訪れてみようっと。


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最終更新日  December 20, 2019 12:00:28 AM
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December 8, 2019
みなさん、こんばんは。今日は何の日か知っていますか?

朝、目覚めると、戦争が始まっていました
方丈社編集部、武田砂鉄
方丈社

 男女が表紙写真で新聞を広げている。男性は微妙だが、女性は微笑んでいる。表に踊っている見出しは“米英に宣戦を布告”。昭和16年12月8日朝である。運命の日は、こんなふうに穏やかに始まった。

本編はラジオニュース(午前七時)から始まり、ラジオニュース(午後九時)で終わる。今ほどテレビが普及していなかった時代だ。頼りになるのは声しかないし、限られた情報である。午前十二時・東條英機首相演説から九時まで五回にわたって放送が行われた。

 東條英機首相演説では「東亜全曲の平和はこれを念願する帝国のあらゆる努力にもかかわらず、遂に決裂のやむなきに至った」「遂には帝国の存立をも危殆に陥らしむる結果となる」と言い訳が並ぶ。そして「自存自衛を全うするため(中略)立ちあがるのやむなきに至った」と結ばれる。

 「ペルリによって武力的に開国を迫られた我が国の、これこそ最初にして最大の苛烈極まる返答であり復讐 維新以来我ら祖先の抱いた無念の思いを、一挙にして晴すべきときが来た」と捲土重来を果たそうと燃えている者もいれば、わかりやすくラジオに向かって「ばかやろう!」とどなった者もいる。「もっと強くこの戦争に反対することができていたなら」と悔やむ者もいる。

 誰が言ったかは特に書かない。結果から12月8日の言動を見れば二通りの判断ができるが、実はそれは後出しじゃんけんのようで、あまり意味がない。それにここには戦争に兵士を送り出す側の女性の声がない。しかし男性だけでも、これだけ意見のばらつきがあったのだ。誰もが一億火の玉になって進んでいったわけでもなければ、“打ちてし止まん”と竹槍を勇ましく抱えたわけでもない。そんな人達を一つの方向に無理やり向けさせてしまうのが、戦争という最も大きな暴力である。

 太宰治の小説『十二月八日』の主人公は一家の主婦だ。夫は小説家だというので太宰本人を模しているのかもしれない。戦争が始まったらラジオが要るから、新しいのを買ってもらえるかな?とか、国民服どうしよう、とか、身近な心配をしている。それは町の様子が「平生とあまり変わっていない」からだ。とはいえ、ラジオは軍唄のオンパレード、演習でなくなった灯火管制など、少しずつ非日常が侵食している様子も描かれる。何事もない一日だが、何かが変わりゆく一日。そして人々は変化に気づきながらも、その先の大きな変化に思いを馳せるはずもない。変化はこのように訪れ、やがて火だるまになる。私達の周りに、今、くすぶる熾火はないだろうか。


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最終更新日  December 8, 2019 12:00:24 AM
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November 19, 2019
みなさん、こんばんは。今日は、イギリス在住で「ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー 」で本屋大賞第2回ノンフィクション本大賞を受賞したブレイディみかこさんの作品を紹介します。

女たちのテロル
ブレイディみかこ
岩波書店

金子文子の事を最初に知ったのは映画「金子文子と朴烈」。関東大震災で朝鮮人を巡る流言飛語が飛び交い、不穏分子として捕らえられた文子は朴烈と共に圧倒的不利な裁判を戦い抜く。

 彼女は無籍者として育ち、実の祖母や叔母には女中替りにこき使われた。13歳の彼女を突き動かしたのは復讐心だった。

「けれど、けれど、世の中にはまだ愛すべきものが無数にある。美しいものが無数にある。私の住む世界も祖母や叔母の家ばかりとは限らない。世界は広い。」
「そう思うと私はもう、「死んではならぬ」とさえ考えるようになった。そうだ、私と同じように苦しめられている人々と一緒に苦しめている人々に復讐をしてやらねばならぬ。そうだ、死んではならない。」

 だが、復讐心を抱き続けながら生きるのは厳しい。やり切るのは、よほど大きな相手でないと。彼女たちが相手にしたのは国であり、社会だった。

 映画「未来を花束にして」では完全な脇役だったエミリー・ディヴィソン。映画では名優メリル・ストリープがサフラジェット(参政権を女性にも与えるよう主張する活動)のリーダー、エメリン・パンクハーストを演じており、皆を平等に鼓舞していた。しかしマッド・エミリーという二つ名までもらったエミリーは、史実ではその行動があまりにも過激すぎるとして、エメリンとその娘から忌避されていた。ポストに爆弾を投げ込んだりした過激なサフラジェットの彼女は、国王の馬の前に身を投げる。この映像はYouTubeで今でも見られるそうだ。恐ろしくて見られないが、少しも迷いがなくすたすたと歩いていたらしい。皮肉な事に、死んで初めて彼女はサフラジェット活動の役に立つ。彼女の葬儀は壮大なイベントとして、世にサフラジェット達の活動を広く知らしめた。

 もう一人はアイルランド独立運動の一つ、イースター蜂起で活躍したスナイパー、マーガレット・スキニダー。三人のうち彼女だけが病死という(三人の中では)穏やかな最期を迎える。一方で、これだけ「死んではならぬ」と繰り返していた金子文子が自殺という結果も納得がいかない。

 本編は百年前に生きた三人の女性達の生涯を交互に綴る。章タイトルはついていない。前の章の最後の言葉が、次の章で繰り返され、三人に共通の要素があったことを窺わせる。テロルという名称は物騒で、確かに過激な行動もここには書かれている。しかし、“以前よりはましになった”が“♯MeToo”や“職場でのハイヒール”など、未だに女性だけが不自由を感じたり理不尽を味わわされている機会は枚挙にいとまがない。


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最終更新日  November 19, 2019 12:00:25 AM
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November 9, 2019
みなさん、こんばんは。イラストライターであり、映画監督でもある和田誠さんが亡くなってしまいましたね。

さて、今日は医療に焦点を当てた世界史についての本を紹介します。

世にも危険な医療の世界史
Quackery:A Brief History of the Worst Ways to Cure Everything
リディア・ケイン ネイト ・ピーダーセン
文芸春秋

 最初から成功する手術も薬もない。治験やら大学病院のような所で手術をするなど、何にでも初めてはある。しかしその初めてが治療でなく、人の命を縮めるようなものだったとしたら?

 現代で有名なのは、アメリカ一有名なあの一族の女性が犠牲になったことでも有名なロボトミー手術。人の脳をいじくり回すなんて、何て恐ろしい!

 近世で有名なのは瀉血。かのモーツァルトもやられていた。悪いものが入っている血をただ外に出せばいいなんて!そのかわりに新しい血が入っていくわけではないから、どんどん体から血液が失われていくというのに。有名人がなぜ?と思うかもしれないが、有名人だからこそこのような対応が取られたのだ。

 「悪いものは体から出せばいい」という発想で行われた方法が多い。水銀は下から、アンチモンは口から悪いものを出すという発想から生まれたが、そもそも飲んだもの自体が毒なのだから治癒できるはずがない。

 「老人がなかなか死ななくなったから少子高齢化の日本は大変」などとやや嘆き節のように語られる現代の日本医療事情だが、本編を読めば、必ず現代に生きていてよかったと思うはず。家族にとっても、自分にとっても。


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最終更新日  November 9, 2019 12:00:21 AM
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October 27, 2019
みなさん、こんばんは。台風でもないのに、千葉の被害がひどかった模様ですね。

今活躍している年代の青春時代はどんな時代だったか、覗いてみませんか?

ハイスクール1968
四方田犬彦
新潮社

 日本の若者が最も熱かった1968年に、高校時代を送った氏の自伝。昭和生まれといっても、ビートルズも、三島由紀夫も、毛沢東も、映像資料や書籍で知る事の方が多い世代から見れば、本書の内容は、同世代の出来事というより、歴史の一部みたいな感覚の方が強い。同じ時代を舞台にしていても、村上龍の自伝的小説『69』に登場する明るく楽しい高校生の方が、より身近に感じられる。

 距離感が違う理由は、文章から受ける印象だ。まるで日本全体が熱病にかかったかのような時代なのに、それを伝える文章は非常に冷静で、堅い。「随分大人びた高校生だな」と感じるが、人によっては、その「大人びた印象」が、「スカしている/偉そう」というマイナスイメージに繋がりかねない。本書が「当時高校生だった自分の視点」ではなく、「高校生だった自分を含めて、時代を俯瞰している大人の自分の視点」で描かれているからだ。本書が『批評的自伝』と呼ばれる所以だろう。時代のエネルギーをダイレクトに感じたい人は、文章から感じる距離感ゆえに、物足りなさを感じるかもしれない。


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最終更新日  October 27, 2019 12:00:18 AM
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