映画・海外ドラマ・本 ひとこと言いた~い

映画・海外ドラマ・本 ひとこと言いた~い

全594件 (594件中 1-10件目)

1 2 3 4 5 6 ... 60 >

海外のミステリー&ファンタジー小説

July 30, 2022
XML
みなさん、こんばんは。「走れコウタロー」シンガー・ソングライターの山本コウタローさん死去が73歳で脳内出血で亡くなったそうです。

今日はミステリを紹介します。

噤みの家
Never Tell
リサ・ガードナー
小学館文庫

 ある夜、ボストンの住宅街に響いた銃声。警察が駆けつけると、部屋には頭を撃ち抜かれた男の遺体と12発の弾丸を受けたコンピュータ、そして銃を手にした男の妻がいた。殺人容疑で逮捕された妊娠中の妻イーヴィは容疑を否定するが、彼女は16年前の16歳の時に、父親を誤って射殺してしまった過去があり、当時彼女を取り調べたボストン市警部長刑事のD・D・ウォレンは早速この事件の捜査に乗り出した。一方、6年前に472日間にわたる誘拐・監禁から生還者した女性フローラは、事件を知り愕然とする。彼女はかつてジェイコブに連れられて行ったバーで、一度だけ被害者の男に会っていたのだった。

 D・D・ウォレンと第一作『棺の女』で長年に渡って幽閉されていた男を自らの手で殺した壮絶な過去を持つフローラコンビの第三作。

 解説に出てくるカリン・スローターのウィル・トレントシリーズとグラント郡シリーズも、女性を毎回とんでもなく悲惨な目に遭わせているが、フローラもなかなか壮絶さでは負けていない。忘れたい過去から離れるどころか、同じような体験をした人達を助ける仕事をしている。何度となくトラウマに苦しめられていそうなのに、勿論人前ではそんな素振りは全然見せない。今回はなんと自分が苦しんだ場所に行き、もっとも辛かった記憶を引き出そうとするのだ。決めた後で躊躇いながらも、結局自分で何とかするしかない!という思いにたどり着くまでの葛藤が見事。正直メインプロットよりも彼女の内面の戦いの方が印象に残った。

 Never Tell=が口を噤(つぐ)む=噤みの家となる今回の邦題はナイス。


噤みの家 [ リサ・ガードナー ]​​楽天ブックス







最終更新日  July 30, 2022 12:00:23 AM
コメント(0) | コメントを書く


July 26, 2022
みなさん、こんばんは。 女優の島田陽子さんが7月25日、都内の病院で亡くなりました。69歳でした。島田さんはかねて大腸がんで闘病生活を送っていました。

レオ・ペルッツが太陽王時代を舞台に描いた歴史小説を紹介します。

テュルリュパン ――ある運命の話
Turlupin
ちくま文庫
レオ・ぺルッツ
垂野 創一郎 (訳)

むかしむかしパリにとんでもなく思い込みの激しい床屋の若者がおりました。名前は
テュルリュパン。自分が貴族の御落胤と信じているテュルリュパンは、いわくつきの葬式に出かけて自分をじっと見つめる女性こそが生みの母である!と確信(とんでもなく思い込みの激しい)し訪ねる決心を致しました。ところが名宰相リシュリュー枢機卿のもと、泰平の世であったはずのパリは、風雲急を告げようとしていたのでありました。

 リシュリュー枢機卿はルイ13世治下で勢力を伸ばしていましたが、後に貴族達と衝突するようになりました(これはホントの話)。絶対王政を目指すリシュリューにとって、貴族は邪魔者以外の何者でもなかったのです。そこで彼が考えた奇策とは、実際は1789年に起こったあの出来事を、自身の手で起こしてしまおう、ということです。但しここで倒すのは国王ではなく貴族です。バイイ、ラファイエット、ジロンド派、タレイランら、フランス革命の立役者に代わる人物はそれぞれいました。そして欠かせないキャラクターの一人、ミラボーに代わる人物を、枢機卿は既にパリ市内に潜入させて、市民を扇動する日まで決めていました。そんな彼の行く手を阻んだのは、とんでもなく思い込みの激しいあの男でした。

  「神はサイコロを振らない」は因果律の存在しない法則をどうしても受け入れることができないアインシュタインの言葉です。物事には全て原因があるはずだというのです。ならば思い込みの激しい性格だったテュルリュパンが偶々決心した日と、リシュリュー一世一代の賭けが決行される日が同じだった事にも原因がある理屈になりますが、どこをどう転がしても、見えてこないのです。やはり神もサイコロを振りたくなるのでは。まあ、暇だと何かしたくなりますよね、誰でも。

 しがない床屋の若者が当代きっての権力者とどうやってつながりを?という疑問は、そこはそれ、360度ひねってもとの位置に戻ってきたストーリーが「あれ、なぜこうなった?」を作り出してきたペルッツのストーリーテリングの冴えをご覧あれ。


テュルリュパン ある運命の話 (ちくま文庫 へー13-3) [ レオ・ペルッツ ]​​楽天ブックス







最終更新日  July 26, 2022 12:00:22 AM
コメント(0) | コメントを書く
July 12, 2022
みなさんこんばんは。安倍元首相が銃撃され死亡した事件の犯人の背景が段々明らかになってきましたね。戦時下のベルリンで起きた殺人事件に挑むミステリを紹介します。

ベルリンに堕ちる闇
Blackout
サイモン・スカロウ
ハヤカワ・ミステリ文庫
訳北野寿美枝

 1939年、ベルリン。自らの信条によってナチス・ドイツへの入党を拒否している元レーシングドライバーの警部補ホルスト・シェンケは、部下達と共に配給券偽造事件の捜査に当たっていた。ところがある日、ゲシュタポ局長ハインリヒ・ミュラーから呼びつけられて、元女優である党幹部の妻ゲルダが殺された事件の捜査を命じられる。党内派閥の摩擦を引き起こさないよう、党の体面を損ねないよう、犯人を突きとめることを命じられるシェンケは、どの派閥にも属さず、一歩間違えれば党内の勢力図を変えかねないこの事件を調査するのに適任だった。だが、捜査を進めていくうちに、もう一つの事件が起こり。

 第二次世界大戦下のベルリンを描き出した歴史ミステリ。金髪の野獣と呼ばれたラインハルト・ハイドリヒ(後に暗殺)など、実在の人物も登場。第二次大戦に突入しようとする、ひたひたと忍び寄る思想統制の闇が不気味であり、当時のドイツ社会の閉塞感や市民に広がる疑心暗鬼、ユダヤ人排斥の空気、些細なことで密告される恐れのある重苦しい雰囲気が詳細に描かれており、現在のロシアもこうであろうかと想像される。

 同僚の中には体面を保つためにナチ党に入党している人ハウザー部長刑事のような人物もいる。ある意図を持って捜査を誘導しようとする見えざる力=ゲシュタポからお目付け役の軍曹をつけられながも、圧力・妨害などをかいくぐり事件を追うシェンケ警部補が頼れるヒーロー像を体現している。ゲシュタポのやり方に疑問を抱いているものの表立って楯突くことができず、それでも彼等の権威を最大限利用して事件解決に邁進するシュンケの葛藤する様子がとても生々しい。


ベルリンに堕ちる闇 (ハヤカワ・ミステリ文庫) [ サイモン・スカロウ ]​​楽天ブックス







最終更新日  July 12, 2022 12:00:24 AM
コメント(0) | コメントを書く
July 11, 2022
みなさん、こんばんは。ジョンソン英国首相が辞任しますね。今日はミステリを紹介します。

木曜殺人クラブ (ハヤカワ・ミステリ)
The Thursday Murder Club
リチャード・オスマン
羽田 詩津子 (訳)

引退者用の高級施設クーパーズ・チェイスで、未解決事件の調査を趣味とする老人が集まる〈木曜殺人クラブ〉が結成される。彼らは、施設の共同経営者のひとりが何者かに殺されたのをきっかけに、事件の真相究明に乗り出すが。

 全二部構成。第一部【1】は【ジョイス】の語り掛け口調から始まる。てっきり彼女視点で物語が展開するのかと思いきや【2】はドナ・デ・フレイタス巡査の三人称語りになる。警察側の人間を引き入れておかないと、いくら安楽椅子探偵でも情報入手に壁があるので、これは妥当である。そして【3】は誰の視点でもなく、物語の舞台となるクーパーズ・チェイスの歴史が語られ、そしてまた【4】でジョイス視点に戻ってくる。ジョイス視点は彼女がつけた日記という設定であり、若干くだけている。くだけた口調は読者を物語に引き込む効果があるが、ジョイスの日記にした理由がわからない。わかりすぎている人の視点に設定したとしても、書きようによっては面白く書けたのではないか。せっかくジョイスを主な語り手とするならば“彼女だけが知っている何かがある”ようなメリットをラストにどかんと持ってきた方が良かったが、今回その役割は別の人物に割り振られている。特に意図がないならば、視点がころころ変わると読者としては読みづらいので整理して欲しい。

 とある人物が、なぜあれだけの人脈と肝っ玉を持つに至ったか?という背景が明かされていない。ドラマ脚本を書いていたとのことなので、視点で埋まらなかった所は映像化した時に埋めれば何とかなるという発想なのか。


木曜殺人クラブ (ハヤカワ・ミステリ) [ リチャード・オスマン ]​​楽天ブックス







最終更新日  July 11, 2022 12:00:26 AM
コメント(2) | コメントを書く
July 10, 2022
みなさん、こんばんは。欧米などで幼い子どもを中心に報告が相次いでいる原因不明の急性肝炎について、国内でも同様の症状が報告されていることから、子どもの肝臓病の専門医などで作る団体が詳しい症状などを調査することになりました。
今日はらせん階段のあるお屋敷のある一夜を描いたミステリを紹介します。

らせん階段
Some Must Watch
エセル・リナ・ホワイト
山本 俊子 (訳)
ハヤカワ・ポケット・ミステリ・ブックス

​荒涼とした田園地帯にそびえ立つ“サミット”邸。夫を銃で撃ったという噂のあるレディ・ウォレン。彼女の血のつながらない養子であるウォレン教授とその妹ミス・ウォレン、教授の息子ニュートンと、教授の教え子スティーヴンにモーションをかけるその妻シモーン、一風変わった家族が住む屋敷にメイドとして雇われたヘレンは、不吉な予感に震えていた。近隣の町で若い女が連続して殺されていたからだ。そして激しい嵐の夜、殺人鬼の影に怯えるヘレンの耳に聞こえてきたのは、屋敷裏のらせん階段を歩く何者かの足音だった。

 ヘレンは同じく雇われ人の立場の家政婦ミセス・オーツから“普通はレディしか雇わない”家に仕方なく雇ってあげたのよ、と言わんばかりの事を言われる。実は次々とメイドが亡くなり変な噂が立ったので、まともなメイドが応募しなくなったのが真相だが、屋敷側の人間としてミセス・オーツはおくびにも出さない。

 挨拶に行ったレディ・ウォレンはこの屋敷の一番偉い人として恐れられながら、体も弱っていて自分一人では何もできないと周囲から見做されている。初対面のヘレンを孫の妻だと思っていたレディ・ウォレンがメイドと知るなり
「この家から出てお行き 木が多すぎる」
と意味深な事を言ったかと思うと
「あんた、今夜あたしと一緒に寝ておくれでないか」
と頼む。その直後彼女がピストルを隠し持っているのを知ったヘレンは、てっきりレディ・ウォレンがおかしくなったのだと思って、夜の付き添いを回避しようとするが、屋敷からは一人、また一人と頼りにできる人がいなくなってしまう。うーん、『そして誰もいなくなった』っぽいですね、ここの展開は。

 新参者のヘレンは、先入観がないからこそ様々な不審事が見てとれるのに、新参者故に信じてもらえない。一方、精神を病んでいるのではなく、屋敷の中で唯一真実が見えていた大奥様も、挙動不審故にヘレン同様言っていることを信じてもらえない。信じてもらえない者どうし早めにタッグを組めばいいものを、階級制度が壁になる。
屋敷の女性達の年代層として、最も若いのが19歳のヘレン、次が若奥様ミセス・ウォレンやミセス・オーツ、ミス・ウォレンの中間層、最後が女性陣のトップに立つレディ・ウォレン。若くて未経験でおどおどするが好奇心だけが強い若年層、結婚しても悩みがつきない中間層に比べて
「するべきことをしてしまうまで、死ぬわけにはいかないんだ」
と秘密と哀しみを長い間胸のうちに抱え続けた大奥様の強さよ。

 ロバート・シオドマク監督が映画化し、その後三度にわたって映像化されたゴシック・サスペンス。


『中古』らせん階段 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)​​KSC







最終更新日  July 10, 2022 12:00:24 AM
コメント(0) | コメントを書く
July 5, 2022
みなさん、こんばんは。先進7カ国(G7)はドイツの首都ベルリンで外相会合を開き、アフリカや中東各国で深刻化する食料危機はウクライナ侵攻を続けるロシアによって引き起こされたとの認識で一致しました。今日はミステリを紹介します。

匿名作家は二人もいらない
アレキサンドラ・アンドリューズ
早川書房
訳大谷瑠璃子

 作家になることを夢見るフローレンス・ダロウはある日、匿名のベストセラー作家、モード・ディクソンのアシスタントとして雇われる。最初はまじめに仕事をしていた彼女だったが、次第にモードの原稿へ自分の文章を入れ込み、共同執筆者じみたことに快感を覚えるようになる。そしてとある事故がきっかけとなり、作家になりたいというフローレンスの野心が顔を出し。

 「ある女流作家の罪と罰」という映画がある。伝記を書きたいと思いながら出版社に企画を受け入れてもらえない一発屋作家が、お試しで書いてみた有名作家をかたった手紙が売れた事から、次第に自らが作家になったかのように錯覚していく。

 本編のフローレンスも、モードの文章をただ筆写するのではなく、自分で考えたアイデアを入れるうちに、まるで自分が作家になったような感覚に陥る。実際編集者は違和感なく受け入れているし、ただモードが世に知られているから彼女の作品だと多くが見做すだけで、どこまでがモードでどこからがフローレンスの作品かなどという事は実際の所曖昧だ。

 昔から作家になりたい一心で頑張ってきたモードが道を踏み外していく様を見ている前半は痛かったが、後半は彼女をも驚かせる人物の所業が明らかになる。

 解説を見ると本作のオマージュとされる作品が出てくるため、絶対に解説から読まないように。

 ユニバーサルピクチャーが映画化権を取得、20ヵ国以上で翻訳が決定。


匿名作家は二人もいらない (ハヤカワ・ミステリ文庫) [ アレキサンドラ・アンドリューズ ]​​楽天ブックス







最終更新日  July 5, 2022 12:00:22 AM
コメント(0) | コメントを書く
July 4, 2022
みなさんこんばんは。KDDIは2日から続いている通信障害の復旧作業について、西日本エリアは3日11時頃、東日本エリアは17時30分頃に終了予定としています。
さて今回はヴァンパイア小説を紹介します。

ヴァンパイアはご機嫌ななめ
Undead and Unwed
メアリジャニス・デヴィッドスン
早川書房

 長身でブロンドの元モデルベッツィ。職業はエグゼクティブ・アシスタント。高価なブランドものの靴を買うのが大好き。そんな彼女の30歳の誕生日は、最低最悪だった。まず寝坊してバスに乗り遅れ、会社に遅刻すると解雇を言いわたされ、天気が悪くて誕生日パーティーは中止、そのうえなんと、交通事故にあって死んでしまった!さらに最悪なのは、目が覚めると棺の中で、安っぽいドレスに継母のお古の安物の靴をはかされていた!ショックのあまり、もういちど死んでしまおうとするが、ベッツィは死ねなかった。不死身のヴァンパイアになっていたからだ!?けれど、ヴァンパイアになったにしては、教会に行っても、十字架を持っても、聖水を浴びても、とくになにも起こらない。おまけにノストロなんていうヴァンパイアのボスからは手下になれと脅されるし、エリック・シンクレアという吸血鬼からは、「あなたこそヴァンパイアの女王だ」なんてつきまとわれて、もうほんと、やってられないわ!

 と惹句の如く、ベッツィが一人称で自らの境遇を語りつつ、結構楽しくヴァンパイア・ライフを送っていくシリーズ第一弾。シリーズ化されているのに日本には続編が来ていない。原題はUndead and Unwedでシリーズ作は全て「Undead and」が原題についている。ちなみに軽くノストロなんて書いているが本名はノストラダムスだ。当年とって500歳。

 ベッツィの本名はエリザベス・テイラー。両親が訳ありで亡くなった親友で大富豪のジェシカ、ベッツィの事が大嫌いだが彼女の靴コレクションには興味がある継母、まだよくヴァンパイアの習性がわかっていない時にベッツィが噛んだ医師でゲイのマーク、エリックをヴァンパイアにしたティーナ、ベッツィの生前の最後の恋人で警官のニック、ヴァンパイア一族も含めて皆キャラクターが濃い。ベッツィはなりゆきでジェシカが買い取った家にマークと同居中。一人暮らしができないのは、戸籍上一度は死んでしまったから。生前はぱっとしなかったのに、ヴァンパイアになるや否や、ありとあらゆる男性がベッツィに「血を吸ってくれ!」と言いながら色目を使ってくるようになり、動物までも彼女に夢中になる設定が爆笑もの。『ポーの一族』のバンパネラのイメージと真逆。

 電子書籍から書籍刊行という道筋を辿った本書はエロティック描写が凄まじい。いや映像化するのか(したいのか)?ちょっとハーレクイン・ロマンスっぽい表紙絵が誤解を生みそう。


【中古】ヴァンパイアはご機嫌ななめ / メアリ・ジャニス・デヴィッドスン​​ネットオフ楽天市場支店







最終更新日  July 13, 2022 05:23:31 AM
コメント(0) | コメントを書く
June 24, 2022
みなさん、こんばんは。映画監督の河瀬直美氏が、自身が代表を務める映像制作会社「組画」のスタッフに暴行し、スタッフが同社を退職していたことが「 週刊文春 」の取材でわかりましたね。
今日はフレンチミステリを紹介します。

ヌヌ 完璧なベビーシッター
Chanson Douce
集英社文庫
レイラ・スリマニ

 子守りと家事を任された“ヌヌ”であるルイーズが、若い夫婦の幼い長女ミラと長男アダムを殺した。そしてルイーズも後を追うように自殺を図る。突然の事に動揺する子供達の両親ポールとミリアムは錯乱するばかりだ。

 本作は捜査担当役の捜査官が最後に登場する。よって「なぜこんな事が起きたのか」を現在進行形で探る探偵役はいない。しかしルイーズがやってきた所から、事件が起こった現在まで遡る経緯を辿っていくと、ルイーズが告白しなくても彼女が殺意を抱くに至った理由は何となくわかる。

 ルイーズには20歳になる娘がいるが、ヌヌをずっと仕事にしてきた関係で、ろくに面倒も見てこなかった。ルイーズの結婚相手も借金を残して亡くなり、彼女の本当の家族はいない。

 ヌヌとして訪れていた雇用者を家族と勘違いしていて、その間違いに気づいたから殺したのではない。ヌヌはそもそも乳離れしない子供、一人で放っておいても大丈夫な子供がいる家庭では必要がない。「メアリー・ポピンズ」でメアリーがマイケルとジェーン、双子達に対してかなり威圧的だが、彼らが成長すれば関係性は変わる。彼女がナニーでしかないからだ。ヌヌは一生続くものではなく、一家を渡り歩く職業なのに、いつしかルイーズは自分がこの家に居続けるためにヌヌとして働く条件を作ろうとまでし始める。もともとヌヌが必要だった環境に偶々自分が来ただけなのに、環境を自分が都合よいものに変えようとし、無意識に意識のすり替えが行われた。

 あまり人付き合いをしないルイーズの心情に気づいた者はおらず、唯一仕事仲間の一人だけが意識の変化に気づくが、言っていく先がないし忠告するような関係性でもない。ポールとミリアムも彼女の意識の変化に気づくが、辞めてもらえばいいだけと軽く考えている。なぜならヌヌなどいくらでも取り換えのきく存在だからだ。家政婦としてやってきた女性が、勤め先一家を惨殺する『ロウフィールド館の惨劇』と似ている。

 2016年ゴンクール賞受賞。


ヌヌ 完璧なベビーシッター (集英社文庫(海外)) [ レイラ・スリマニ ]​​楽天ブックス







最終更新日  June 24, 2022 12:00:20 AM
コメント(0) | コメントを書く
June 19, 2022
みなさん、こんばんは。NHK党の立花孝志党首が16日夜、生放送で出演していたニュース番組「報道ステーション」を途中で退席する一幕がありました。いわゆる放送事故というやつです。
今日は時をかける女性が主人公の小説を紹介します。

アディ・ラルーの誰も知らない人生 上下
The Invisible Life of Addie Larue
V・E・シュワブ
早川書房
高里 ひろ (訳)

 1714年、フランスの小さな村で、望まぬ結婚を強いられたアディは古い神々のひとり闇の神であるルークと取引をする。アディは「永久に誰にも属さず、自由でいる」ことを願い、ルークはひきかえに彼女の魂を求めた。望みどおり自由に生きる時間を手に入れる。老いない身体、瞬く間に癒える傷、決して消えない命。しかし、その取引には落とし穴があった。彼女は誰の記憶にも残らなくなるのだ。ところが2014年のある日、翌日も彼女を覚えていてくれる男性ヘンリーと出会い。

 時空を越えて生きられるなんてヴァージニア・ウルフの『オーランドー』のようだ。ただしオーランド―が性を変えられるのに対してアディはずっと契約時の状態-若い女性-のままで様々な時代を生きる。但し自分の証明書は書けず、他人が誰も記憶してくれていないため、ひと所にずっといることは難しい。胡散臭い神との取引などそんなものだ。

 上巻・下巻とも、そもそもの契約の始まりになった十八世紀からフランス革命、第一次世界大戦、アメリカ禁酒法時代、第二次世界大戦を経て現在までの彼女が辿る人生と、現在の彼女を描く2014年パートを交互に登場させる。本編を読んで思い出したのはあしべゆうほさんの漫画『悪魔の花嫁』だ。と書いたらおそらくアディが取引した相手は想像できる。神は何としてでもアディに現世を捨てさせ魂を得ようとするのだが、アディが特定の相手と真剣になるにつれ、彼女への執着を露わにし始めるあたりが『悪魔の花嫁』のデイモス=悪魔と美奈子の関係に似ており、後半は三角関係のラブストーリーの態になる。自分のために永遠を手に入れたアディが何と引き換えならせっかく得た自由を手放すことができるのかを見届けるまで一気読み。


アディ・ラルーの誰も知らない人生 上 [ V・E・シュワブ ]​​
アディ・ラルーの誰も知らない人生 下 [ V・E・シュワブ ]​​楽天ブックス







最終更新日  June 19, 2022 12:00:21 AM
コメント(0) | コメントを書く
May 11, 2022
みなさん、こんばんは。俳優のウィリアム・ハートさんが亡くなりましたね。今日はミステリを紹介します。

ゲストリスト
The Guest List
ルーシー・フォーリー
ハヤカワ・ポケット・ミステリ

 アイルランド沖、泥炭と湿地に覆われた孤島にて、メディアで活躍するふたりの豪華な結婚式が開かれる。花嫁は急成長中のオンライン雑誌の創設者、花婿はテレビで自分のサバイバル番組をもつ人気者。だが、誰もが憧れるカップルへの祝福の裏には、さまざまな思惑が潜んでいた。謎めいた警告の手紙、姉妹の秘密、過去の遺恨。そして婚礼の夜、ついに凄惨な事件が発生する。徐々に明らかになる事件の全貌。誰が殺し、誰が殺されるのか?

 “時系列を交錯させ巧みに描いたミステリ”の惹句通り冒頭から嵐の中孤島を歩き回る男達の描写が断続的に現れる。美男美女でそれぞれに成功した者同士、友人にも恵まれているそんな絵にかいたような結婚式なんて、そうそうあるはずがない。それも格安で。ほら、怪しい匂いがぷんぷん。

 というわけでタイトル通りの胸が悪くなるような人達が多数登場。というか、名門学校卒業という割には柄悪くないか?もっと友達選ぼうよ。それとも類は友を呼ぶという奴?

 途中からある人物の化けの皮が剥がれてくるので“ああ多分殺される人って…”と殆どの人が想像できてしまう被害者当ては易しいミステリ。では加害者はというと、こちらはやりたい動機とできそうな機会が与えられている人物が複数いるので一瞬迷うかも。

 うーん孤島にする意味って何だったんだろう。普通は犯人を特定するためにクローズドサークル化させる環境作りとして選ばれるのだけれど、そもそも結婚式という狭い世界の話だから、容疑者は増えようがないんじゃ?



ゲストリスト (ハヤカワ・ミステリ) [ ルーシー・フォーリー ]​​楽天ブックス







最終更新日  May 11, 2022 12:00:21 AM
コメント(0) | コメントを書く

全594件 (594件中 1-10件目)

1 2 3 4 5 6 ... 60 >

PR


© Rakuten Group, Inc.