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海外のミステリー&ファンタジー小説

May 11, 2021
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みなさん、こんばんは。
前田敦子と勝地涼が離婚届提出したとか。あれ、結婚して間がないんでは?

ホテルを舞台にした小説を紹介します。

ホテル・ネヴァーシンク
The Hotel Neversink
アダム・オファロン・プライス
青木純子訳
ハヤカワ・ポケット・ミステリ・ブックス

「売り家と唐様で書く三代目」という諺がある。初代が苦心して財産を残しても、三代目にもなると没落してついに家を売りに出すようになるが、その売り家札の筆跡は唐様でしゃれている。知り合いにも丁度三代目になる企業があり、やはり次代はなさそうだ。コロナがなくても早晩売り払うだろう。何代も続く企業が稀有なのだ。

 さて、ニューヨーク州の山地にそびえ立つホテル・ネヴァーシンクも三代目にして潰れる。シレジアからの移民が民宿もどきを立ち上げたのが一代目、大統領も宿泊に来る人気ホテルにのし上がる。しかし二代目の時に子どもが行方不明になる事件が発生し、三代目は別に放蕩三昧したわけでもないのに滅びに向かってゆく。

 本編の語り手は自ら語ることのなかった一代目を除いて二代目、三代目、その親戚や使用人など多岐にわたり、時系列に沿って登場する。ホテルを舞台とした複数主役による、所謂グランド・ホテル形式の物語であり、経営者一族の歴史を辿る物語でもある。ゴシックロマンの風もあり、「あれ、これはあの映画のオマージュでは?」みたいな話もあり、

発でも楽しめる。語り手-例えば三代目―は少年期、結婚した時、晩年などのように何度も登場するため、折々の過程においてそれぞれの言動と境遇は変わる。よく言えば“成長過程を追える”わけでもあるが、果たして成長したのかどうか。子供の失踪事件はその中に埋没する出来事の一つであり、ミステリとしてずっと話題に上るわけではない。しかし決して忘れられていない証拠には、ここぞという所で時限爆弾のように真相が明かされる。不沈などと名付けてみたとて、出ずる日すら沈むのだ。いわんや、ちっぽけな人の建てたホテルをや。


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最終更新日  May 11, 2021 12:00:18 AM
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May 9, 2021
みなさんこんばんは。
またクルーズ船で感染者が出ましたね。

アン・クリーヴスのぺレス警部が主人公のミステリシリーズを紹介します。


地の告発
Cold Earth
アン・クリーヴス
創元推理文庫

 ペレス警部がマグナス(旧シリーズ第一作「大鴉の啼く冬」登場)の葬儀に参列している最中、大きな地滑りが発生。周辺住民の安否確認をすると、崩壊した空き家から身元不明の女性の遺体が見つかる。ところが検死の結果、女性が死んだのは地滑りの前、しかもその死は他殺によるものと判明。警部は殺人事件の被害者探しと犯人探しを同時に行う。地面から死体が登場し、誰も知らない殺人を明かしたわけで、邦題通り大“地”が人の犯罪を“告発“したことになる。

 新シリーズはぺレス警部の復活/再生の過程であると共に、都会VS田舎(=シェトランド)の対比が描かれる。島では住民皆が顔と各々の家の事情を知っており、地域行事には住民が集まり交流を深める。そんな場所では刺激もない代わりに、とても犯罪など起こらない…というのは、主に都会人が抱く固定観念に過ぎない。今回のように事件が起きると、隠れていた亀裂が先鋭化する。

 今回多かった感想は、ぺレス警部と新パートナーになりそうなウィローとの恋愛模様に関するものだ。亡き妻フランの忘れ形見キャシーほど感情をオープンにできない性分の彼が、身なりを構わない割には結構内々で考えているウィローとどのように関係を深めていけるのか?年長読者の方に、より二人を見守る気持ちが強く、ぺレスの親戚と化している。女性読者が多いのか。さて次でいよいよ四部作も完結。これまで新シリーズでは犯罪の種子は都会から持ち込まれてきた。変わりゆく都会に抗して島は島なりの矜持を守る事が出来るのか。それとも変化には逆らえないという道を選ぶのか。

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最終更新日  May 9, 2021 12:00:19 AM
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April 21, 2021
みなさんこんばんは。スペインでは前国王フアン・カルロス1世の不正疑惑で大きく傷ついたスペイン王室の信頼が、さらに揺らいでいるとか。今月上旬、国内では新型コロナウイルスワクチンの接種対象になっていない50代の王女2人が、中東で接種を受けていたことが報じられ、国民の反発を招いたそうです。そりゃあね。

今日は映画化された作品を含む短編集を紹介します。

ボーダー 二つの世界
Pappersvagger
ハヤカワ文庫NV
ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト

表紙絵は森の中の湖。ちょうど湖と森との境目が白くなっている。自然と人の住む世界、生と死、異世界と現世。二つは隔てられているように見えて、実はたいへん近い。特定の人物だけが、その事に気づく。短編集は“気づいてしまった”がために狭間に踏み込む人達を描く。

 表題作『ボーダー二つの世界』は映画化もされた。主人公ティーナは罪を嗅ぎ分ける能力を活かして税関で働いていたが、特殊な容貌のためパートナーがいない。彼女の過去が一部紹介されるので、てっきり特殊能力はその事が原因だと思っていたら、更に深堀りされた事実が浮かび上がる。邦題ではっきり示されている通り、二つの世界が存在する。未見だが原作はどの程度まで再現されたのか。そしておそらく著者は芋虫が好きだ。なぜなら疾走感溢れる『最終処理』にも登場させているからだ。

 「二十年前にあったあの悲惨な事件」「自分をヴァンパイアだと思い込んでいる頭のおかしな奴の手で、ふたりの子どもが殺され、さらにひとりが誘拐」(p118)などという記述からこちらも『ぼくのエリ』の番外編と見なされるなどという記述からこちらも『ぼくのエリ』の番外編と見なされる『坂の上のアパートメント』は、アパートが傾いている事に気づいた男性が主人公。彼が辿る末路はもう一つの短編『見えない!存在しない!』と共通。後者は煩いパパラッチへのリベンジとも取れる。

 22年ぶりに友人から学校で撮った写真を持ってきてくれと友人マッテに頼まれた主人公は、臨時教員としてやってきた女性についてしつこく聞かれる。マッテは母と兄を亡くし、父親が引きこもりになって学校に来られなくなっていた。だから奇妙な事を言い出すのだと納得していた主人公だが、マッテに言われて現実社会を見ると…ブラッドベリ短編を萩尾望都さんが漫画化した『ぼくの地下室においで』ラストを思い出す『臨時教員』

 本当の『ぼくのエリ』の番外編『古い夢は葬って』『Equinox』『臨時教員』『エターナル/ラブ』『音楽が止むまであなたを抱いて』『マイケン』『紙の壁』『最終処理』収録。


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最終更新日  April 21, 2021 12:00:21 AM
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April 20, 2021
みなさん、こんばんは。「まん延防止等重点措置」が適用されている府県でも、やっぱり歓送迎会やっちゃってるんですねぇ。
今日は黄昏のウィーンを舞台にしたミステリを紹介します。

探偵ダゴベルトの功績と冒険 (創元推理文庫)
Detective Dagoberts Taten und Abenteuer
バルドゥイン・グロラー
垂野 創一郎 訳

探偵は事件を未然に防いでこそというのなら、本編の主人公であるダゴベルト・トロストラーは合格だ。ただシャーロック・ホームズのような名探偵を想像すると肩透かしを食らう。彼がやっていることは、ほとんどがやんごとなき身分の人達のスキャンダルのもみ消し&恐喝対応だからだ。だから派手な逃走劇とは無縁で、殆どが“実はこういう話だったんですよ”と後から語られるパターンになる。ホームズと同じく無能な警察が出て来るが、ダゴベルトをてこずらせるような強敵は出てこない。

 舞台となる街も霧の町にして女王が君臨するロンドンと、ハプスブルグ帝国の都ウィーンという町が持っている雰囲気の違いがある。ロンドンならばベーカー街B221でニコチン中毒のシャーロックがタバコをふかしながら語る顛末は、ダゴベルトの友人で紡績工場の所有者&銀行頭取他多くの肩書を持つアンドレアス・グルムバッハ邸にて、食後のシュヴァルツァー(チョコレート)を嗜みながらユーガに語られる。艶っぽい話は依頼話の中にはあるが、トロストラー自身はグルムバッハの二十歳ほども若い妻ヴィオレットにプラトニックな愛情を抱いている。当初二人の結婚に反対だったとの描写もあるので動機は推して知るべし。表紙からではわからないが、ダゴベルトの髪型は“使徒ペテロ風”らしい。つまりわずかな前髪以外はすっかり剃っている。元女優で才気煥発なヴィオレットの頼みならば何でも聞いてしまうダゴベルトに萌え要素あり。

 召使がいる間は事件の事は一切話さないというルールが徹底している。身分制度は厳然とあり、貴族の子弟を救うためには平民の死は顧みられないという、現代感覚からすれば受け入れがたい展開もある。ホームズのライバルとも呼ばれる彼の推理の原動力はデータベースだ。何せ警察よりも信頼されているらしいので、犯罪関係のデータベースにもアクセスし放題。こちらも現代感覚で言うと「個人情報だだ漏れじゃん!」と抗議したくなる。

『上等の葉巻』『大粒のルビー』『恐ろしい手紙』『特別な事件』『ダゴベルト休暇中の仕事』『ある逮捕』『公使夫人の首飾り』『首相邸のレセプション』『ダゴベルトの不本意な旅』収録。


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最終更新日  April 20, 2021 12:00:17 AM
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April 19, 2021
みなさん、こんばんは。日本企業の東芝が外資に買収されるかも?
カリン・スローターの人気ミステリシリーズ最新作を紹介します。
ヒロインのサラが若い頃に遡っています。

ざわめく傷痕 (ハーパーBOOKS)
Kisscut
カリン・スローター

 表紙がスニーカーということは、当事者はまだ若いと察せられる。そして血を踏んだらしきスニーカーの跡がべったり。そう、本編は少年少女受難の物語だ。

 ウィル・トレントシリーズでウィルのパートナー候補であるサラが、元夫ジェフリーと別れて二年経った頃の話である。原題は邦題とは全く関係のないKisscutで、デザインなどの用語で 台座を傷つけずに表層だけを切り取ることを意味する。

 本編でサラと二人ヒロインを張るのは『開かれた瞳孔』で双子の妹シビルを殺され、自身も酷い目に遭った警察官レナだ。トラウマに苦しみながら過去を思い出させる事件に果敢に向かってゆく様は、大元を変えずに自身を塗り替えてゆくKisscutそのものだ。ただ邦題は更にその先を行き、それでもなおかさぶたがはったはずの傷痕がうずくようなイメージかもしれない。

 サラが警察署長の元夫ジェフリーとスケート場で待ち合わせするというのどかな始まりは、サラを慕う生徒ジェニーとすれ違った彼女が、自分の服についた血を発見する辺りから俄にきな臭くなってゆく。そしてジェニーが男子生徒に銃を向け、制止しようとしたジェフリーが射殺してしまう。検死解剖の結果更に悲惨な事が明らかになる。トイレには赤ん坊の死体、そしてジェニーの体には痛ましい傷跡が見つかった。彼女は加害者であり被害者なのか?なぜ男子生徒を銃で撃ちたいほど憎んだのか?

 毎回女性がひどい目に遭うカリン・スローターシリーズなので、初めての本がこれという人はかなり覚悟した方がいい。いや、そんなにキツいならば、ちょっと和む所は?という向きには、ウィル・トレントシリーズを先に読んでいる読者には気恥ずかしくなるくらい、若きサラがジェフリーに愛情たっぷり、甘々な所を是非どうぞ。そんなに愛情が残ってるのなら、別れなければいいじゃない!と思うが、若い故に頑なな所があったのだろう。まあ、ここで別れてくれないと次の出会いがなかったわけだが。



ざわめく傷痕 (ハーパーBOOKS 147) [ カリン・スローター ]​​楽天ブックス







最終更新日  April 19, 2021 12:00:20 AM
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April 12, 2021
みなさん、こんばんは。V6が解散するらしいですね。
今日もミシェル・ビュッシのミステリを紹介します。


彼女のいない飛行機
Un Avion Sans Elle
ミシェル・ビュッシ
集英社文庫

 1980年12月、イスタンブール発パリ行きのエアバスが墜落。ただ一人、生後間もない女の子が生存していた。同機には身体的特徴が著しく似た二人の赤ん坊が乗っており、どちらの両親も事故死していた。DNA鑑定のない時代、二組の家族が女の子は自分たちのものだと主張する。そして謎を追うべく雇われた私立探偵が、18年の時を経て最後に見つけた手がかりとは?

 …ときて、邦題を見たら「あれ、初めから答えが出てるじゃん!」と思う。しかしこれは1981年にフランスで大ヒットした『翼のない飛行機のように』という歌に引っ掛けているのだそうだ。翼aileと彼女elleはフランス語でどちらも同じ音になる。作中でもこの歌が登場する。

 1981年のフランスというと、日本では人肉事件が検索の最初に出てきておおっとなるが、フランス人感覚で言えば、社会党第1書記のフランソワ・ミッテランがジスカールデスタンを破って当選した画期的な年である。1958年にシャルル・ドゴール将軍によって発足した第五共和政の下でジョルジュ・ポンピドゥー、ジスカール・デスタンと3代にわたって続いた保守政権にピリオドが打たれたわけで、今に続くミッテラン人気が生まれた。現代のフランス人からすれば郷愁の年というわけらしい。

 その時一度決着がついたはずの事実が、探偵の長い長い調査記録(本当に長い!)によってひっくり返される様を、奇跡の子として騒がれたリリーを探す一組の男女の追跡行と絡めて描く。「『ミレニアム』みたい」という感想があったのは、追跡行の片割れ、マルヴィナのキャラクター設定故だ。

 依頼主への報告なのになぜか小説みたいな(小説だから)探偵の調査記録と、彼女の行方が気になって仕方がないのにそれをショートカットしない彼氏(読者視点で物語を追うため)の速度で本作を読むことにイラつく読者もいたようだ。さて、あなたの感想はいかに?


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最終更新日  April 12, 2021 12:00:21 AM
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April 11, 2021
みなさん、こんばんは。フランスのデザイナー、ピエール・カルダンさんが亡くなりましたね。
今日から2日間ミシェル・ビュッシのミステリを紹介します。

黒い睡蓮
Nympheas noirs
ミシェル・ビュッシ
集英社文庫

「ある村に、三人の女がいた。ひとり目は意地悪で二人目は嘘つき、三人目はエゴイストだった」

 冒頭の語り手は、全てをみそなわす神視点の老女。語り手を務めるのだから、彼女が最後まで生き残ることは読者に容易に想像がつく。彼女が語るのは、あと二人の女性の運命。一人は三十六歳の若き小学校教師ステファニーで夫はいるが子供はいない。もう一人はもうすぐ十一歳になるファネットで美術が得意。夢も希望も行動力も才能もある若い二人には、いつか村を出たい彼女達を応援してくれる男性がいる。

 二人が持っている全てを持たない老女は、もうすぐ亡くなる夫を病院に見舞いに行く。これまで村を出ることはなく、村を出る予定もない。ただこの小さなコミュニティーで起きる様々な事を、事件も、そうでないこともつぶさに見ている。読者への語り手としてはうってつけだ。

 そんな時村で女好き&美術愛好家の眼科医ジェロームが亡くなる。また、ファネットの絵の才能を高く評価するアメリカ人の老画家ジェイムズが何者かに殺された。捜査にやってきた刑事は、過去に起きた少年の死も疑問視し始める。

 モネの睡蓮で名高い美しいジヴェルニーで起こる立て続けの殺人事件。“美しい桜の樹の下には死体が埋まってる”の言葉にも似て、観光客から見れば画家が愛した美しい村でも、住まう人々の心の中にはどろどろした物が埋まっている。泥の中にあっても睡蓮が美しい花を咲かせるように。

 全てを知っているらしい老女はなぜ真相を刑事に話さないのか。そんな彼女は明らかに犯人にとって危ない存在なのに、なぜ狙われないのか。なぜ彼女の名前は明かされないのか。

 読み進むうちに湧き上がる疑問と、恋愛大国フランスらしく始まってしまうめくるめくロマンスの行方を追ううちに、あっという間にラストにたどり着く。個人的感情に大きく左右される署長と、冷静な妻と仲良くやっている部下の掛け合いが楽しい。


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最終更新日  April 11, 2021 12:00:17 AM
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April 10, 2021
みなさん、こんばんは。作詞家のなかにし礼さんも亡くなりましたね。
今日はレジナルド・ヒルのダルジール警視シリーズを紹介します。

午前零時のフーガ
Midnight Fugue
レジナルド・ヒル
ハヤカワ・ポケット・ミステリ・ブックス

  周囲の反対を押し切って職場に復帰したダルジール警視だが、体調はすぐれず、仕事の勘も戻らない。古い知り合いの警視長パーディーから、七年前に失踪した部下の刑事について調べて欲しいと依頼される。パーディーは部下の死亡推定を前提に、その妻と再婚するつもりだった。だが最近妻のもとに夫と思われる人物の写真が掲載された雑誌が送られてきたのだった。ダルジールは非公式に捜査をはじめるが、背後には危険な影がうごめく。

  物語は8時10分に始まり、同じ日の23時59分に終わる。まるでダルジール版24だ。しかし英国版ジャック・バウアーと謳うには、巨漢すぎる。動いたら目立って仕方がない。本編の中でも、名前を呼ばれずに何度“巨漢”呼ばわりされたことか(とほほ)。それでも、本作がシリーズ最終作となれば、パートナーの彼女がいながら他の女性に目移りしたり、肝心な所で居眠りするツッコミどころも、逞しくなった部下のパスコーとのツンデレなやり取りも全てが微笑ましい。

 『ダルジールの死』で爆破事故に巻き込まれ、瀕死の重傷を負ったダルジール警視(誰です、憎まれっ子世に憚る、などと言った人は?)。『死は万病を癒す薬』では療養中のはずなのに事件を解決してしまう(お約束だから)。さて、次作たる本編では、いよいよ本格的復帰が描かれるのかと思いきや、間違えて休日出勤してしまう。そんなダルジールと、彼に相談を持ち掛ける相手と関係がありそうな街のボス達の、とある一日の出来事が時系列に沿って描かれる。途中に前奏曲と銘打ってフォントの異なる章が挿入され、後奏曲が結びとなる。実はこの部分はダルジール警視も知らず、読者だけのお楽しみだ。伏線回収の見事さに唸るしかない。


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最終更新日  April 10, 2021 12:00:20 AM
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April 6, 2021
みなさん、こんばんは。河合議員がやっと議員辞職しましたね。しぶとい。

今日はネレ・ノイハウスの人気ミステリシリーズ最新刊を紹介します。

森の中に埋めた
Im Wald
ネレ・ノイハウス
創元推理文庫

プロローグの日付は1972年8月31日。ある意図を持って若者を迎え入れた“あたし”の心情描写だ。もちろん“あたし”が誰かはすぐには明かされず、彼女の目的が達せられた所でフェードアウト。

 次に登場する日付は2014年10月7日、恋人のために薬物依存治療中の若者が登場。但しこちらも簡単に名前は明かされない。ヒントは彼の恋人の名前だ。“あたし”との関係はまだ明かされない。

 三番目に登場する日付は2014年10月9日。ここでようやく主役の一人、オリヴァーがキャンピングトレーラーの火災を目撃した女性と共に登場。但し、両者は離れた場所にいる。ここからやっと“現代の事件パート”に入って来る。複数視点はその後も登場し、次第に繋がってゆく重層構造になっている。

 
「この仕事はずっと前から金を稼ぐだけの手段ではなくなっていた。オリヴァーは身も心も捜査官だ。州刑事局や警察本部で出世に躍起になる気は毛頭なかった。だがこの数年、なにかが変わった。以前は事件と難なく距離を置けたが、突然激しく心を揺さぶられ、気持ちが切り替えられなくなるようになったのだ。勤務を終えたあとも仕事を忘れられないことが度重なった。事件がどこまでもついてまわる。警官になったのは、正義を信じていたからだ。この世にはルールが存在し、善悪の違いがあると思っていた。その信念が失われてしまったのだ。これまでは狩りをする喜びが味わえた。充実感があり、彼を駆り立ててきた。それが感じられなくなった。人にだまされ、振りまわされることにうんざりしたのだ。なにか隠している奴を相手に、気の重いはてしない時間をすごすなんて人生の無駄じゃないか。逮捕に必要な状況証拠や物的証拠を集めても、知恵のまわり弁護士があらわれて、無期懲役を十五年の保安拘禁や精神科病院送りにしてしまう。そしてそのうち犯人は自由の身になる。だが被害者は生き返らない。付随する損害や遺族が抱えるトラウマなど、法定や鑑定人や検察官にはどうでもいいことらしい。オリヴァーが正義という言葉で理解していることとは似て非なるものだ。」

いやそんなに冷静でしたっけあなた?というツッコミはひとまずおいといて
これまでの事件において上記のような感想を抱いたオリヴァーは、長期休暇(Sabbatical)を取る予定になっている。次作があるらしいのでオリヴァーが長期休暇の後リタイアするかは不明だが、まるでそうなってもいいかのように、今回は彼のサービス巻と言ってよい。関係者が全員顔見知りの事件が起きたオリヴァーは
「いつもより激しく心がふたつに引き裂かれるのを感じた。一方では警官だ。私情をまじえず、冷静に観察し、情報と事実のピースを集めてパズルを解く。その一方でオリヴァー・フォン・ボーデンシュタインというひとりの人間でもある。情にほだされ、怒りにふるえ、自分がしなければならないことが必要なこと、正しいことなのか疑っている。普段ならこのふたつの顔を難なく使いこなせるのだが、今回は異なるふたつの人格のように背を向け合ってしまった。」

と“公僕たる自分”と“友人としての自分”の狭間で大いに心を揺さぶられながら、事件解決に乗り出す。

 当初違いすぎる相手に対して反発していたピアとオリヴァーの仲も、今ではぴったり合っている。だからピアは、彼が長期休暇を申し出た事で自身が昇進するかもしれない事よりも、現場を離れることが寂しくて仕方がない心境になっている。変われば変わるものだ。また、これまで数々の女性とつきあってもうまくいかなかった理由(単に不器用&女運の悪さだけじゃなかった!)と思われる過去の出来事も登場。トラウマを解き放つことで彼の良さが初めて皆に認知されるという嬉しいおまけもついて来る。更に、長年シリーズを楽しんできた読者には、ピアの昇進が我が事のように思われるのではないか。おめでとう、ピア!


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最終更新日  April 6, 2021 12:00:20 AM
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April 3, 2021
みなさん、こんばんは。田中邦衛さん亡くなりましたね。

さて今日はミステリを紹介します。

暗い暗い森の中で
IN A Dark Dark Wood
ルース・ウェア

作家のレオノーラ・ショーはフローレンス(フロ)・クレイから「クレア・キャヴェンディッシュが結婚することになったのでヘン・パーティに来てほしい」という招待メールを受け取る。ノーラにとってクレアは小学校時代からの親友だったから招待されるのはおかしくないが、二人はある出来事を境に10年間一度も連絡を持っていなかった。突然の招待に戸惑いながらも友人のニーナも参加すると聞いて参加したノーラは、暗い森の中に立つ家に向かう。

 物語は怪我をして走って来る車の前に飛び出したノーラと、ヘン・パーティに招待され会場に向かうノーラの二本立てで物語が進む。前者が時系列としては未来にあたり、何らかの事故が起こったことがあらかじめ明示される。そして読者が原因を探る鍵としてパーティの様子を知るしかないわけである。

 ヘン・パーティとは所謂女性版バチェラー・パーティだ。そもそも森の中の家という会場設定がおかしい。普通はリゾート地などで男性ストリッパーを呼んだり、皆で贈り物を公開するなど結婚前のひと騒ぎをして、花嫁が無事花婿の元に嫁ぐのを悪友たちが見届けるのがセオリーだ。それなのに人里離れた場所では、むしろひっそり寂しくて発散できないし、やる事がクレー射撃や交霊会とは前者は女性の集まりにしては物騒で、後者はおめでたい事の前に何でわざわざ?と、いずれもバチェラーパーティに相応しくない趣向だ。

 次に、レオノーラが来ないと話が始まらないからなんだろうけど、自分が過去に酷い目に遭わされた相手のバチェラー・パーティにわざわざ来るのもMみがある。来てからだって変なゲームで散々心臓を抉られ、バチェラー・パーティと結婚パーティはセットだと不審がっていたのだから、とっかかりがあるならさっさと聞いて帰ればいい。10年も離れていた彼女にどうしてそこまで気を使わなければならないのか。それとも離れていても続いていた支配-被支配の歪んだ未熟な関係がテーマなのか。

 主眼に置きたいのはミステリなのか、女性同士のどろどろした人間関係なのか、どっちつかずに感じた。ツッコミ所は多数あれど一気読みさせる力はあった。まあデビュー作なので構成力はこれからアップしてゆくのでは。


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最終更新日  April 3, 2021 12:00:20 AM
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全482件 (482件中 1-10件目)

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