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2007.04.10
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カテゴリ:回想
旅の途上

cranepond

米・インディアナ州ジャスパーブラスキ公園 1991年9月



公園とはいっても、ここはカウンティ(郡)の管轄にある自然公園だ。

ふつう日本人が「公園」と聞いてイメージするものは、たいてい遊戯場(playground)と呼ばれるものの類だろう。

アメリカ人の多くが“PARK”から連想するものは木々や花、それに湖や野鳥、まさに「自然が楽しめる場所」ということになる。



湿原地帯にいろんな種類の鳥が飛んでくるので、この公園はバードサンクチュアリ(野鳥保護区域)に指定されているらしい。

週末になるとたくさんのバードウォッチャー達が双眼鏡やカメラを持って集まってくるという。



小さなせせらぎが音も立てずに流れている。

それは青空が映し出されるくらい透明で、だだっ広い湿原の中央部をゆったりと蛇行していた。

名も知らぬ黄色い花がそのせせらぎの両脇に群生している。

花びらはそよ風に揺れ、ほんのりと甘い香りが漂ってきそうな気がした。



太陽の光は、真夏のそれとは違ってどこか弱々しく、やや翳りが感じられた。

午後の縁側で座布団を枕に寝そべっていたいような、そんな暖かくてやさしい光だ。

この辺り一帯だけが、まるで時間が止まってしまったかのように静まり返っている。

僕は野鳥観察台の上に一人立ち、静寂の中で自分の息遣いをうかがっていた。



グレーの羽根をした1羽の大きなツルが飛び立ったのはそれからしばらくしてからのことだった。

ツルはか細い足で水を蹴り、宙に舞ったとたん羽を大きく広げ、真っ青な空へと飛び立っていった。



その華麗な舞いは僕だけのためのものだったのかも知れない。

ツルの姿が小さくなっていくにつれ、物悲しそうな鳴き声は湿原一帯に響き渡った。



静寂が破られるやいなや止まっていた時間に生命が吹き込まれたかのように、僕は我に返って、次の目的地へとペダルを踏み始めた。



あのツルもまた旅の途上だったのだ。


harvest






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Last updated  2007.04.10 06:07:35
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