岡部誠騎手のありがたいお話
ミツオーです。今年もお世話になりました。…途中、長くサボってしまって、申し訳ありませんでした。さて、岡部誠騎手にお話をうかがいました。先日、デルマルーヴルで制した名古屋グランプリについて、「3コーナー手前くらいでちょっと手応え一杯になったんですけど。前回の浦和の競馬見てても、しまいは割りとシュッときてたんですが、おんなじように伸びてくれた感じですね。最後も思い切って一番外まで出して、たぶん真ん中より外くらいが一番伸びると思ってたので、そのへんもうまいことハマりましたね」とレースを振り返ってくれたのですが、このあとの言葉をぜひみなさまにお聞かせしたかった。「まあ、マーフィーにはないモノを、名古屋競馬場ならオレのほうが持ってるってことですよ。マーフィーはマーフィーでいろいろ持ってるけど、名古屋ならオレのほうが持ってることもあるってことですね。でもそういうことだと思いますよ。馬場のどこがいいなんてことも。マーフィーも世界的な若き天才だろうけど、やっぱり地元である以上、いろんなこと知り尽くしてて自信もあったし、それがいい結果に結びついたんでね」さすが岡部さん。そういうことを聞きたいんですよ。っつか、そういうことを言ってくれると、聞いてるほうが嬉しくなっちゃうわけです。岡部さんを起用する側としても、当然、そこ(楽しいこと言ってくれるという意味でなく)を期待して乗せてるわけですしね?「そうそうそう!そういうことも考えると、一番いいカタチで締めくくれたかなと」してやったり、という顔で笑ってくれました。とはいえ、この方、ほとんど常に笑顔でして、いつお会いしてもニコニコしています。この日も終始笑顔で対応してくれました。(胸のマークがカワイイ!…これ、サインではなく、目印だそうです)以下、今年を振り返って、さらに競馬・騎手談義となるわけです。「今年もいろいろ全国で勝たせてもらいました。そういう時代なんでね。今までやってきたことが実になってきたかなあと思いますね。最初は全てがうまくいくわけじゃないですけど、心が折れそうになることもありますけど、結果が出ないとね。でもそうやって人脈なりスキルなりを重ねてきて、カタチになってきたなっていうのはありますね。技術云々じゃなくて、上手く乗りたいっていう気持ちは、自分はそこらへんの若いやつよりは強いつもりですし、自分でもわかります。いつも競馬のことばっかり考えてますし、いろんな競馬場のレース見てるし、常に頭の中に競馬のことしかないから。若手見てても、競馬のことあんまり興味なさそうだし。知らないですよ、普段は知らないですけど、『どこどこでこんなレースあった』『そうなんですか』『カタールでこのレースでどうだった』『あ、そうなんですか』世界中、調べて調べて、世界のどこで誰がどんな乗り方してるのかとか、それが日本国内でもいいですけど。そういう意味でもっと競馬に熱い若い子が出てくるべきじゃないのかなと、競馬に対する熱さっていうのはまだ全然負ける気がしないです。勝ちたいとかじゃなくて、普通にたぶん負けてないな~って。勝つとか負けるとかじゃなくて、だいたいまだレベルが違うな~って思いますよ。技術とかじゃなくて、競馬が好きで好きで仕方ないと思うから、逆になんで若手がそうでないんだろうなあ?って」先日ご紹介した、名古屋リーディング2位の村上弘樹騎手は、岡部騎手を「バスの幅くらいある分厚い壁」みたいに言っていましたが、もしかしたらもっとうんと分厚く高いかも。その岡部騎手が、「目の前のレース勝ちたいだけですし、それがたまたま数字になって表れたということであって。いろんな挑戦して失敗もしましたけど、そういうのが今になって実を結んでるんじゃないかと思います。競馬、何が正解かわからないので難しいですけども。全国にはもっと上手いジョッキーたくさんいるんでね、少しでも近づけるように」なんておっしゃるわけです。「南関東だとめぐり合わせなんかでチャンスが与えられない、眼の出てない若手なんかもいるだろうし、たまたまオレはそういう意味でチャンスを与えられやすい東海という場所にいるからというのもあって、それがたまたまいい風にかみ合って結果を出せていると思うので。そもそも乗れるジョッキーっていうのは、そこまで技術の差なんてのはオレはないように思えるんですよね。細かい位置取りポジションもそうだし、仕かけるタイミングもそうだし、そこまで変わらないと思うんで。それこそ自分が南関東でデビューしてれば、最初から与えられるチャンスは少なかっただろうし、それがいい風にかみ合って。結果出してるから向こうでも乗せてくれるんであって、最初から向こうにいたらわかんないし。だから若手がもっとどんどん技術なり競馬に対して熱くなって、いい成績残してくれれば」このくだりは、ちょっと中川雅之調教師(金沢)のお言葉に通ずるものがあります。中川師は常々、「騎手という立場になれたひとたちなんだから、全員どれほども変わらないハズ。プロ野球選手ならプロ野球選手、プロのジョッキーならプロのジョッキー。そのステージに立った以上、みんな同じハズなんですよ。…まあ中にはイチローみたいなのも混じってるわけですけどね」という意味のことをおっしゃる。それに似てますな、少し。全国を飛び回り忙しい日々を送る岡部誠騎手。気の休まるときがないのでは?「まあこの仕事してる以上ね。人間なんでたまにホッとしたいと思うこともありますけど、現役である以上、逆にそれを楽しみながら。忙しくいさせてもらうっていうのは、それこそ依頼がなけりゃできないことなんで、嬉しいと思わなきゃ損ですしね。ひとに経験できない経験させてもらってると思えば、そこまでは苦にならないですけど」このあたりは、森泰斗騎手も同じようなこと言ってます。けど、なかなかそう徹底できないのが人間だと思うんですが。ニコニコ笑顔でシビアなことをサラッとおっしゃる、岡部誠騎手なのでした。