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2023.03.14
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扇千景さんがお亡くなりになったとのニュース。 89歳でらしたんですね。  こういう方は100歳になってもお元気だろうと思ってましたから、 なんとも残念です。力強い女性がまた、一人、逝ってしまいました。 扇さんと、一度だけお食事したことがあります。 夫がリオデジャネイロの総領事をしていた時、議員団の団長として、 夫の坂田藤十郎さん共々、リオを訪問されたのでした。 議員の海外視察に夫がついてくるって、本来は許されないのでしょうけど、 参議院議長の総仕上げ的時期でしたし、なにしろ人間国宝の藤十郎氏でしたから、 誰も文句を挟まなかったのでしょうね。 暑いリオなのに、総領事公邸にご夫妻は キリリと和服姿で現れました。 迎える側は緊張しきりだったのですが、お二人揃って、 気取らずざっくばらん、お話は面白く人をそらさない。 凄いなぁ、さすがだと唸りましたよ。 あの時は実に楽しくご一緒させていただきました。 日系人会の会長さんが「議長より、人間国宝の方が上だよなぁ」とか おっしゃってましたが、臨席されたリオ在住の方々は、坂田さんのお話の方を聞きたがり、 扇さん、そこはちょっとカチンと来たみたいで 「団長は私ですよ」などとチクリと釘を刺していらっしゃいました。 でもご夫婦が交わす会話が、いいリズムで、 一方で扇さんは、細々藤十郎氏に気を遣われて、 いい夫婦の形を目の当たりにする印象でした。  お客様にはいつも記帳していただくのですが、 扇さん、備え付けのサインペンなど目もくれず、 すっと万年筆のような物をだして、 「自分のでないと書きにくくて」とスラスラ、お書きになる。 それ、筆ペンだったんですね。 いつも持ち歩いてらっしゃるのだと教えていただきました。 そういうの「いいなぁ  」と思って、扇さんのはおそらく特注だろう、美しい漆塗りのペンでしたが、私もあやかりたいと、 帰国したときに安物の万年筆型筆ペンを手に入れ、インクのカートリッジを探し出し・・。 でも、それから二十年近くを経て、一度も使用する機会がなかった  。この間、のし袋に名前を書こうと探し出したら、 インクはすっかりひからびて、使いものになりませんでしたっけ。 人間、無駄な背伸びはしないことです。  扇千景さんのご冥福をお祈りいたします。 お気に入りの記事を「いいね！」で応援しよう
Last updated
2023.03.14 12:00:11
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