先月脳出血で倒れ意識障害になった実母は、
鼻に呼吸をするチューブと栄養を摂りこむ
チューブを入れて、命を長らえていました。
経鼻チューブがもう限界になった時、
医者から決断を求められた弟は、
気管切開と胃ろうの手術を了承したそうです。
かねてより人工呼吸器はつけないと決めていた
弟でしたが、 現実を目の前にして
母親の死を自分の一言で決定することは
さすがにできなかったのです。
そんな弟を責めることは、もちろん私にはできないし、
また権利もありません。
気管切開を受けた10日前に見た母は、
目を閉じたままでした。
その後、母が目を開き人の動きを目で追うようになったと、
弟から連絡が入ったのが4日前。
そして、今日胃ろうの手術をしました。
気管切開や胃ろうは、本人にとっては
苦痛だろうと思います。
母が話す事が出来るのなら、拒否したかもしれません。
胃ろうの手術後目を覚ました母は、
目をひらき私たちをじっと見ていました。
その様子は、弟が言うように、母は
私たちのことを認識しているのではないかと
こちらが錯覚してしまうほど、何か不思議な印象でした。
しかし、お医者が言うには、
実際に意識が正常に回復するのは奇跡に近いのだそうです。
目で追うだけの物言わぬ母でしたが、その瞳は黒く、
光をたたえている様に、私には感じられました。
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