こんぱすコーチの全方位日記

2016年の夏季オリンピック開催地は、
接戦の末にブラジルのリオデジャネイロに決まりましたね。
東京はあえなく落選しました。

僕の予想がまさに「リオ」だったので、
日本人のくせに、深夜にしたり顔でいたことです。

東京誘致推進派の方には申し訳ないのですが、
僕的には「もう日本に誘致する時代じゃないだろう」
というのが正直なところ。

この半世紀足らずの間に、冬季五輪も含めると
このちっぽけな日本国内で、３回も開催しているんです。

十分じゃないでしょうか。

ここまで日本国内で開催実績があると、
国内の都市間での牽制しあいっこが生じます。
今回の東京誘致に至るまでも、
福岡、大阪、名古屋と、国内で候補地の綱引きがありました。
だから候補地が東京に決まっても、他の都市は面白くない。
結果、誘致に向ける全国的な情熱も散漫になります。

日本の大多数の人は、
何となくそういう感覚でいるんだと思います。
だから全国的に盛り上がらなかったわけで。

それよりもまだ１回も開催していない南米で行う方が
どう見ても意義が大きいし、挙国一致になりやすい。

そういうことになるのが僕には見えていました。

さらに、東京誘致のコンセプトに
僕は無理があると感じています。
『環境重視のオリンピック』といううたい文句ですが、
メインスタジアムの建設地は東京港内の埋め立て地。

皮肉にも海を埋め立てることで
周辺海域の生態系に大きな影響を及ぼしているわけで、
これが『環境破壊』と言わずして何と言いましょう。

厳密に分析すれば、
そもそもオリンピックと『環境を守る』というのは
両立しないもの、と僕は思います。

そういうわけで、
日本とオリンピックの関わり方というのは
単純に開催を誘致するのではなく、
もう少し知恵を働かせた方が良い。

「３回も開催した」という実績を元に、
他国の開催地に対して徹底的にサポートをする、
ということに徹するのはいかがでしょう。

たとえば今回開催の決まったブラジルでは、
オリンピック開催にあわせて
2016年までにリオデジャネイロ－サンパウロ間に
高速鉄道を建設するプランがあります。

むろんブラジルには高速鉄道を
建設・運営するノウハウがないので、
国際競争入札になることは必至。

ここに日本の新幹線を売り込もう、
という動きがあるんですが、
どうも欧米勢に押され気味と聞きます。

フランスのTGVやドイツのICEよりも
技術力は圧倒的に日本のシンカンセンがダントツなんです。

確かにフランス・TGVは時速320km/hで世界最高速ですが、
これは国土全体がほとんど平坦なフランス国内だから
実現できていることであって、条件が違います。
おまけに1時間に数本しか走れない。

そこいくと日本の新幹線は最高時速は300km/hと、
TGVには及ばないものの、
急峻な山をうがち、長大な橋を架けて、土木技術は高水準。
さらに言えば、３分おきに時速300km近い列車を
続行運転できるという運用技術は日本しかありません。

そして何と言っても、開業以来45年が経つも
未だに営業中の衝突・脱線事故が、
ただの１件も起きていない。
それだけ安全性が高いシステムを構築しています。

台湾の新幹線は、当初は欧米勢が一時落札しましたが、
紆余曲折を経て最終的には日本チームが落札しました。
日本と同じく台湾も地震・台風等自然災害の多い地域。
しかも南北の流動は日本の東京－大阪間に匹敵します。
つまり、ロケーションが日本とほぼ同じ。
だからこそ日本が関わって成功しました。

片や韓国のKTX・京釜（キョンプ）新幹線は
フランスのTGV方式を採用したために、
車両は小ぶりで列車増発もまま成らず、
あまり成功しているとは言えません。

そうは言っても、欧米勢は何せプレゼン能力はすばらしい。
韓国もそうですが、中国の高速鉄道も結局はプレゼンの巧拙で
欧米勢が落札しました。

全世界を見渡しても、
日本のシンカンセン技術はダントツなのに、
プレゼンのヘタさで後塵を拝しています。

聞けば、リオデジャネイロ－サンパウロ間は、
人の流動も多く、しかもルート上は
けっこう起伏に富んだ山がちな地形だと言うことです。

まさに日本の新幹線技術が効果を発揮するロケーションです。

オリンピック開催地誘致の本来の目的が『国威発揚』であるならば、
日本の新幹線技術を世界にあまねく広げ、
ご当地の発展に寄与する、
というのも立派な『国威発揚』だと思います。

欧米勢に押され気味、と聞きますが、
ここぞ日本の意地を見せる場面。
官民挙げてのアピールを展開してみてはいかがか。

奇しくも日本の新幹線は、
東京オリンピックに合わせて開業しました。
リオデジャネイロ・オリンピックも
日本の新幹線技術で高速鉄道が開業するならば、
これはブラジルにとっても日本にとっても感慨深い。

日本とオリンピックとの関わり方は、
こういう間接的な方法もアリなのではないでしょうか。


図解・TGV vs．新幹線