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投資の余白に。。。

投資の余白に。。。

January 5, 2013
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カテゴリ:YOUTUBE
林光がいなくなって1年がたつ。

こんにゃく座での日本語オペラ、本人は「ソング」と呼ぶことを好んでいた歌の数々は、神経過敏症のクラシック音楽ファンではなく、生きるための歌や音楽を求める人々のところへと広がっている。音楽ホールの薄暗がりではなく、地域のコミュニティで鑑賞され、青空の下でよりより世界を求める人たちが歌いついでいる。

YOUTUBEでしか聴けない林光の幻の歌がある。佐藤信作詞の「すたこら階段」である。

すたこら階段

1968年2月に「自由劇場」が上演した「ヴェト・ロック」の劇中歌で、ヴェトナム反戦のブロードウェイ・ミュージカルの日本語版初演にあたり、新しい歌を入れようということで作られた歌だという。合唱用の編曲がNHKで放送される話が持ち上がったが、歌詞の「コカコーラ」を変えろといわれ破談になったというエピソードもある。

ここにアップされているのは2010年7月24日、こんにゃく座スタジオでの上演。

最後の2行「コカ・コーラよりはましなやつを せめてゲップじゃ終わらないやつを」の部分がビートルズの「マジカル・ミステリー・ツァー」のパロディであることに気づく人は多いだろう。何度か聴くうちに、もしかしたらこの曲のほとんど全部が当時の流行歌のパロディなのではないかと思うようになった。

というのは、林さんがこの歌を作曲した1967年から68年はちょうど音楽に関心を持ち始めたころで、ラジオで聴いた欧米のロックやポップスが記憶の鍋の底にこびりついている。同窓会でのクラスメートとの再会のように、すべてのフレーズがどこかで聴いたことがあるような懐かしさを感じるのである。

冒頭の「すたこら階段登るんさ 休まず一気に登るんさ」の2行は、ウォーカー・ブラザーズの67年の大ヒット曲「ダンス天国」のパロディに間違いないと思う。ちょっと聴いただけではわからないかもしれないが、最初の3音を省いてみるとわかる。そっくりだ。

「ちょいと気になるミニドレス 粋に構えたビートひげ」も聞き覚えがあるが、顔は思い出しても名前を思い出せない同窓生のようでもどかしい。「地下鉄降りてまっしぐら 押し合いへし合い大賑わい」の部分はアニメ「狼少年ケン」の主題歌からの引用ではないかとにらんでいる。

「そこで一本コカ・コーラ てんで安いよたったの三十五円だ」のフレーズは、このころの歌謡曲やCMに詳しい人なら出典がわかるのではないかと期待している。

しかし引用だとはっきりわかるのは「マジカル・ミステリー・ツァー」だけで、ほかはまるで一筆書きのように即興で一気に作られた曲のように感じる。才気煥発という言葉はこの曲のためにあるような言葉だ。

この演奏は、とりわけピアノ伴奏がすばらしい。

ピアノ伴奏といえば、ここでは林さんのピアノ伴奏を見聞できる。

うた

やや上品に取り澄ました合唱に対して、林さんは中間部で激しい演奏を繰り広げている。

歌をどこでおぼえた、石を投げながらおぼえた、闘いを知っておぼえた・・・こういう歌詞の歌を、品格を失わないように、しかも激しさや強さを損なわずに歌うのはきわめて難しい。この合唱は悪くはないが、言葉にリアリティを感じさせない。機動隊に向かって投石した経験のない人に、こういう音楽は不可能なのだ。林さんの伴奏は、そういうジレンマにややいらだっているようにも聞こえるが、これほど音楽的に豊かな、というか「音楽のある」ピアノ伴奏のできる人は、世界じゅうを見渡しても数えるほどしかいない。

このアンコールソングはアマチュア合唱団のコンサートでよく聴く。しかしいったいぜんたい歌詞を意味をわかって歌っているのだろうかと思う演奏がほとんどだ。ヘルメットにゲバ棒で歌うくらいの演出がなぜできないのかといつも思う。

林さんは類まれなユーモアの資質の持ち主だった。ユーモアといえば武満徹を思い出すが、武満徹とはまったく異なっていた。どこが違っていたかうまく言えないが、人間の愚かしさを笑いとばすようなエピソードを必ずと言っていいくらい語った。ベートーヴェンやモーツァルトについて語った講演会に行ったことがあるが、ベートーヴェンやモーツァルトがいかに愛すべき資質を持った人間だったかに目を啓かれる思いがした。それ以来、クラシック音楽に対する見方が根本から変わったほどだ。

そのユーモアはしかし真摯な社会批判から生まれている。その批判の視座がどれだけ鋭く深く、あえていえば「過激な」ものかは、ユーモラスな音楽が愉快な「夢へ」に端的に表れている(2曲目、2分ちょうどからの歌)。黒い鉄の箱(国立歌劇場)がさびて崩れ落ち、廃墟からオペラがよみがえるというヴィジョンは美しい。

注文の多い歌劇場

それにしても「すたこら階段」のピアノ・パートは痛快だ。もし生まれ変わることがあるなら、この曲だけを演奏するピアニストになりたいと思っている。







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最終更新日  February 9, 2013 12:39:30 PM
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