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May 24, 2007
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カテゴリ:暗闘
  大鳥圭介は翌日、幕軍を二方面に分け壬生にむけ出撃させた。あいにくの

小雨の中、伝習第二大隊は雀宮まで南進し途中から南西へと進路を変える。

伝習第一大隊と七連隊、新選組は宇都宮街道を南進し幕田村の坂本藤三郎の

屋敷を本営と定め、総勢九百名が布陣を終えた。

  凌霜隊と貫義隊は主力軍と別行動で進撃を命じられた。目標は安塚である。

大鳥は陽動作戦として大川正次郎率いる、伝習小隊を間道から壬生に派遣し

た。この日は稀に見る悪天候となり、壬生に進攻した大川小隊は薩摩兵と戦闘

をまじえ民家に放火したが、猛烈な豪雨にあい火の回りりが悪く攻略半ばで撤退

した。大川小隊の撤退を知らず、幕軍は雨中行軍で第一目標の壬生と第二目標

の安塚に向かっていたが、安塚で政府軍の主力部隊と遭遇し戦端をひらいた。

  ますます風雨がつのるなか幕軍有利で戦闘がはじまったが、政府軍は壬生

から続々と新手の兵力を投入し、予備軍をもたぬ幕軍は敗退し宇都宮城に後退

した、この会戦で両軍とも甚大な損害をだした。一方の壬生攻略軍も悪天候に

勝てずに兵を宇都宮城に引いていた。

  この頃、凌霜隊と貫義隊は風雨の中、安塚に向かっていた。猛烈な横殴りの

豪雨のなかでも砲声の音は聞こえる。

「隊長、神経痛が痛みますな」  禿頭の坂田副長が悲鳴をあげ傍らに付き添っ

ている。  「すぐに安塚ですが、大丈夫ですか」  茂吉が心配し声をかけた。

「敵勢を見たら痛みなんぞ吹っ飛びます」

  両隊は泥まみれとなって安塚に到着したが、戦場には一兵も見当たらない。

死体が転がり容赦ない雨が降り注ぎ、敵情も味方の情勢も皆目判らない。

  茂吉と坂田副長が貫義隊を訪れ、隊長の松平兵庫頭と会談した。

「すでに戦闘は終ったようですね」  「左様」  松平兵庫頭が短絡に答え、

全身ずぶ濡れであたりを見渡している。時々、散発的な銃声が轟く。

「朝比奈隊長、味方が敗れたようじゃ」  「判りますか?」  「見なされ」

松平が指をさした。累々と死体が横たわり旗印が散乱しているが、いずれも味方

のものである。  「ここで敵と遭遇したようですな」

  坂田副長が硝煙の臭いを嗅ぎながらつぶやいた。

「味方の精鋭が敗けたのでしょうか」  「その死体は土佐兵じゃ」

「なんと」  見ると間違いなく土佐兵である。とうとう勇猛で鳴る土佐兵が政府軍

に加わったのだ、茂吉の胸に闘志がふっふっと湧き上がってきた。

「敵は壬生に引きあげ激戦の疲れを癒しておろう、奴等が油断している隙をつき

我が隊は殴りこみをかける」  流石は抜刀隊の隊長である。

「我等も同道いたします」  「これは心強い、目にもの見せてやりましょう」

  両隊、百五十名が黙々としのつく雨のなかを突き進み壬生城下に近づいた。

案の定、敵勢は民家の軒下に避難し声高な噺声が聞こえる。幸運にも哨戒兵の

姿はみえない。

「遠巻きに兵を散開させましょう、貴隊は我が隊の援護を願いたい。我等は敵に

忍び寄り肉弾突撃をいたす」  貫義隊の松平兵庫頭が不敵な笑みをみせた。

「判りました」  凌霜隊はぬかるんだ畑に身を伏せ匍匐前進(ほくふぜんしん)を

はじめた。  「銃口に気をつけて下さい、泥が詰まったら機関部が破裂します」

  茂吉が慎重な注意を与える。  「ちくしょう、身体中が泥だらけだ」

 山田惣太郎と矢野原与七が泥亀のような姿で茂吉の前を這っている。

「合図で一斉射撃です。その隙に貫義隊が突入します、我等はその援護です」

  小隊長が持ち場に散った。敵兵は全く油断した焚火で濡れた身体を温め、

眠っている者もいる。茂吉の視線に敵兵の動きがはっきりと見える。

「撃てー」  茂吉が大声で下知し、スペンサー銃の引き金をしぼった。

  悲鳴をあげ敵兵が焚火に倒れ伏した。軽快な銃声が轟き、すぐに一斉掃射

に変わった。  「かかれー」  松平兵庫頭の鋭い声がする。

  猛然と貫義隊が突撃にうつり、白刃が煌き血飛沫があがっている。

「副長、半隊を率い民家に火を放って下さい。我等が援護します」

  禿頭から雨の雫を滴らせ坂田副長が隊士を引き連れ突撃してゆく。

「援護を怠るな」  隊長の茂吉が仁王立ちとなり連続射撃をした。山田熊之助と

斉藤巳喜之助も真似て立ち撃ちで連続射撃を行っている。

  城下の所々から紅蓮の炎が吹き上がり、続々と隊士が駆けもどってくる。

「引きあげのラッパじゃ」  速水参謀長が檄をとばしている。

  ラッパの音が響き、貫義隊士も畑に飛び込んでくる。

「貴隊から、お引き下さい」  「かたじけない」

  貫義隊を先頭に全員が泥水を跳ね上げ、引きあげにかかった。

秘録 凌霜隊始末記(1)へ





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Last updated  May 24, 2007 09:30:00 AM
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