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長編時代小説コーナ

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Jun 15, 2007
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カテゴリ:暗闘
「速水さん、相変わらずの毒舌ですな」  小山田伝四郎が苦い顔をした。

「ところで黒河内さんが居られませんね」  茂吉が険悪な雰囲気を察し、割って

入った。  「藤原口で戦死しました」  「惜しい方を亡くされましたね」

「中堅指揮官が戦死いたす。だが補充も、ままならない我等の任務は敵の前進

を喰い止めるにある」  小山田伝四郎が断固とした口調で述べた。

「それは間違った考えかと思います。鶴ヶ城は敵の包囲下にあります、我等は

損害を最小として、一日も早く会津に駆けつけることです」

  茂吉が会津藩軍事奉行の小山田伝四郎の言葉に反論した。

「伝令ー」  騎馬で本営に着いた斥候兵の緊迫した声が聞こえる。

「何事じゃ」  「敵先鋒隊約八百名、一里ほどに迫っております」

「すでに来襲せしか」  小山田伝四郎が大刀を手に立ち上がった。

「小山田隊長、直ぐに撤退を命じて下さい」  茂吉の進言に珍しく素早く反応

した。  「全軍撤退する。非常呼集じゃ、大内に引き徹底抗戦いたす」

本営が騒然とし各隊に伝令が駆けてゆく。唐木隊長が騎馬で近寄ってきた。

「朝比奈隊長、あなたのお蔭で存分な戦いが出来ました。礼を申しあげる、だが」

「いかが成されました?」  茂吉が不審そうに唐木隊長を見あげた。

「負傷されていた隊士の方が亡くなられた、我等で弔いを済ませました」

「菅沼隊士が亡くなりましたか、・・・・お世話をお掛けいたしました」

「我等は急ぎます。大内でお会いしましょう」 一礼した唐木隊長が駆け去った。

  茂吉が茫然と虚ろな眼差しで立ち止まっている。

「隊長、悲しんでおる時ではござらん、直ちに命令を、隊士が待っておりますぞ」

  坂田副長が心を鬼にして叱咤した。

「全員整列」  悲しみを飲み込み命令を下した。四十名に減った凌霜隊士が

整然と並んでいる、全員が菅沼隊士の死を知っているようだ。

「我等も大内に撤退いたす、会津の地に足を踏み入れたのじゃ。鶴ヶ城への

入城も近いじゃろう、一人も死んではならぬ。これは命令じゃ」

  速水参謀長が厳しい風貌をみせ厳命した。

  八月二十九日、会津藩兵と凌霜隊は大内村で合流し一泊した。この大内は

街道ぞいに左右から、山襞が迫り出し守備には絶好の地形をもっていた。

  小山田隊の兵士が未明から、左右の山腹で胸壁を構築している。ここで政府

軍を釘付けにする作戦であった。相変わらず小雨が降り続くなかで兵士たちは

懸命に工事を急いだ。冷気が身体の体温を奪ってゆく。

  突然、砲声が轟き爆風と土砂が、村の中央に吹き上がった。にわかに政府

軍が攻め寄せてきたのだ。 「左右に散り防戦」  茂吉の命令で凌霜隊士が

坂田副長と速水参謀長に率いられ、胸壁から街道を見下ろし果敢に応戦を始め

た。本隊の戦闘準備が整うまでの時間かせぎと頑強に抵抗する。

  なんせ一本道の街道を見下ろす高地である、敵勢が攻めあぐんでいる。

  この攻撃で本営の兵士が飛び起き、決められた持ち場へと駆けつけて行く。

「それにしても早い攻撃じゃ」 本営で小山田隊長が士官に命令を伝達している。

  敵勢は芸州藩、宇都宮藩、肥前藩で昨日、さんざん叩かれた復讐戦とし夜間

に横川陣地を襲ったが、あんに相違して陣地は空っぽと知り、そのまま田島を経

て寝ずに進撃してきたのだ。

「我等は川を渡河し前方の山に陣を敷きます」  その伝令が坂田副長の許に駆

けつけて行った。凌霜隊士は全員濡れ鼠で対岸の山腹に取り付いた。

  眼下に敵兵の散開する様子が手に取るように見下ろせる。

「弾薬が心細くなりましたな」  「会津に行けばなんとかなるでしょう」

  茂吉と坂田副長が打ち合わせを終え、命令が伝達された。

「わたしが撃ったら、それが合図です」  茂吉が愛用のスペンサー銃を構えた。

松の大木の翳から、さかんに指示を送っている士官が見える。あれが隊長だな

と感じ、無造作に引き金を絞った。銃声と敵兵の倒れるのが同時であった。

  隊士たちの射撃がはじまった、面白いように良く当たる。街道に散開した兵が

中腰で銃を構えている、坂田副長の銃が火を噴き絶叫があがった。

「南無っ」  副長が念仏を唱え、隊士たちが猛然と反撃に移った。

  敵勢に動揺が見られる、突然、本営より喚声が沸きあがった。

秘録 凌霜隊始末記(1)へ





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Last updated  Jun 15, 2007 08:51:29 AM
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