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龍5777

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Jul 2, 2010
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カテゴリ:伊庭求馬無頼剣
 

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「嘉納殿も内蔵助の死は知っておられぬ、が、貴殿はそれを知っておられたか」

 鈍牛が低く念仏を唱え瞑目している。

「礼を申す。嘉納殿は楽翁様と手を結び、讃岐守の失脚を狙っておられる」

「それがしが讃岐守を狙っておることは、ご坊も承知のこと。内蔵助殿の死を

嘉納殿にお知らせなされ、公儀隠密団はすべて讃岐守の手のなかにござる。

楽翁様とて讃岐守を倒すには、命懸けの覚悟が必要となりましょうな」

 求馬が間を置くように鈍牛の杯を充たし、鈍牛がぐいと飲干した。

「公儀隠密団はすべて敵と思わずはならぬかの」

「左様、・・・ご坊、還俗なされ」 求馬が唐突に勧めた。

「拙僧は武士を捨てようやく人という生き物が見えて参った、今更、もどるの

も面倒じゃ」 鈍牛が苦笑を浮かべた。

「徳川譜代の名家である酒井家が、断絶と為っても構わぬと申されるか?」

 求馬の言葉に鈍牛の顔が苦しげに歪んだ。

「讃岐守は内蔵助殿が極秘任務にあたっていると語っておる。だが既に己の

手で内蔵助殿の命を断っておりますぞ、何時、奴が内蔵助殿の死を公表する

か判らぬ。奴がそれを言い出したら由緒ある酒井家は断絶の憂目にあう」

 鈍牛が唸った。求馬に言われなくとも判ることだ、酒井家には家を継ぐべき

跡目がいないのだ。わしが還俗し武士にもどり酒井家を継げば問題はない。

 鈍牛が眼をつむり考え込んだ。

「渇っ」 凄まじい求馬の一喝が店内を震わせ、亭主が腰を抜かした。

「ご坊の過去は詮索せぬが、この際は僧を捨て還俗なされ。それこそが亡き

内蔵助殿への慈悲というものにござる」

「一喝で眼が覚め申した、しがらみを捨てご貴殿の助言をいれ還俗いたす」

 何時もの染み入るような声にもどり、温顔に覚悟の色が刷かれていた。

「伊庭殿、今宵はご馳走にあずかり申した。この足で楽翁様にお目通りいたし、

酒井家再興のお力ぞいを願う積りにござる。申し遅れましたが、拙者の名は

酒井源一郎と申す」 鈍牛が網代笠と杖を手にし深々と礼を述べた。

「酒井源一郎殿にござるか、またいずれ会う日を楽しみにしております」

 求馬の声に背を押されるように、鈍牛こと酒井源一郎の足音が途絶え、

 求馬も痩身を立ち上げ小便長屋へと孤影を消していった。

                     (その二)

 その頃、堀井邸では求馬の秘剣で重傷を負った刺客が、血塗れで辿りつい

ていた。外記が傷口を改め唸っている、見事な斬り口である。

 刺客の顔には既に死相が浮かんでいた。またもや伊庭に手を掛けられたか、

ここ数日で手練者が数名犠牲となっていた。

 外記にも讃岐守にも求馬の考えは手にとるように判っている。

「外記、目的を達成する前に隠密団が壊滅するぞ」

 讃岐守が巨眼を光らせ叱責を浴びせていた。

「明晩も奴は現われましょう。明日を勝負といたしましょう、手勢を要所に配し、

奴の跡をつけます。奴の隠れ場所を抑えれば岩見の娘も判明いたします。

そうなれば我等の勝ちにございます」 外記が不気味な嗤いを浮かべた。

 外記の計略は一気に糸路の隠れ家をみつけ、彼女を拉致することにあった。

 それにより求馬の持つ証拠の書状と糸路との交換をする、これが彼の考えで

あった。外記が話題を変えて讃岐守に訊ねた。

「ご前、楽翁の申した奥医師の件ですが、誰を推挙するか判明いたしましたか」

「判らぬ、清祥院様の推挙となると益々、ことは面倒となる」

「判り次第お知らせ下され、法眼同様に始末いたします。ついでに清祥院の命

も頂きますか」 外記の言葉に讃岐守が珍しく反論した。

「彼のお方のみは手出し無用じゃ、万一にも暗殺などしょうものなら、楽翁の

猛烈な反撃を覚悟せねばならぬ」

「暗殺にも色々と手はござる」 外記が讃岐守を煽っている。

「伊庭と岩見の娘は何としても探り出せ。お主が豪語してから何日過ぎた、

明晩は必ず吉報を持って参れ」

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Last updated  Jul 2, 2010 11:22:28 AM
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