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カテゴリ:都内散歩
練馬区立美術館は我が家から近いのと老人は無料なので ほぼすべての企画展に出かけている。 練馬区在住だったり、ゆかりのある工芸・美術家の作品展が多いが 今回は人間国宝・桂盛仁、《金工の世界-江戸彫金の技展》である。 金属工芸には彫金・鍛金・鋳金(ちょうきん・ たんきん・ちゅうきん)の三つがある。 彫金は文字通り硬い金属の鏨(たがね)やヤスリを使って 金属板を彫り図を描く方法。 鍛金は槌・鏨などを用いて金床の上で金属板を限りなく打ち続けて 一定の造形を作る方法で工芸品の他刀打ちなども含まれる。 鋳金は文字通り鋳型に溶けた金属を流し込み成型する方法で 掌に乗る小物から大仏像までこの方法で鋳造される。 今回の展示品は彫金・鍛金を組み合わせた金族工芸美術品である。 常に断捨離を心掛けている身とてカタログは購入できず 上の写真の会告パンフレットの写真を記録しておく。 拡大写真故ボケは仕方がないが、印象を記憶にとどめる ため敢えて記録にとどめておく。 会場では桂さんの工房での作品作りが映像で紹介されていたが 地金の合金作りから作業が始まる。 《バッタ 香盒》 赤銅二金の象嵌 香盒とは香料を入れておく小さな蓋つき容器。 銅と金の合金である赤銅をたたいて伸ばし容器に仕上げてゆく。 《蟹 盒子》 金、銀、赤銅、銅、四分一と多彩な材料を用いたもの。 盒子とは小さな入れ物。 《みみずく 香炉》 《蛙 水滴》 銀の生地に金の蛙を打ち付けたもの。茶道具だろう 《象嵌花瓶》 銀、赤銅、銅を用いた象嵌作品。 素材のわりに多彩な色彩が表現されている。 堂に数パーセントの金を混ぜた合金の赤銅はそのものは銅より 黒みがかった色をしているが薬品処理をすることによって 紫がかった黒色になる。 また銅に銀を混ぜるとその比率によって色調が変化し、 銀が増えるにしたがって白っぽくなる。 《印伝革縁取り腰差し煙草入れ》 <刻みたばこ>は今はほとんど見かけないので 若い人は分からないのではないだろうか。 雁首・ラオ・吸い口からなる雁首に刻みたばこを手でねじ 込んで火をつける。竹製のラオにやにがたまるので時々 ラオ屋に頼んで取り換える。 なぜか遊郭の大夫が長いラオのキセルを吸う時代劇の パフォーマンスが有名である。 《赤い実 金具》和装の帯留め金具 (やぶこうじ 金具》帯留め金具 私が感心したのは鍛金の技法で金属の配合比で色の多様性を作ったり 加熱しては叩いて伸ばして成型して行くことで、 例えば上の写真の《みみずく 香炉》の蓋とみみずくが一枚の 金属板をたたいて作り上げたとはとても思えない。 板をたたいて伸ばすと薄くなってしまうそのためには熱いうちに 根気強くたたいて薄い部分に周りから金属を寄せて行く。 一つの作品を仕上げるためには何十万回も打ち続けるのだという。 江戸期まで鍛金は主として刀のつばに用いられたようだが、 明治以降は工芸品として作られ続けられたそうだ。 現代ではとてつもない費用と労働を要する芸術で その費用を負担できる人も労働に耐えられる人もいなくなるであろう。 残念ではあるがすたれ行く分野ではなかろうか、 そう思うと貴重な展覧会である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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目の保養になりました。
練馬区立美術館でこのような企画展が行われ、それを身近に見られるとは羨ましい環境です。 鍛金というのは、どういうものかわからなかったのですが、勉強になりました。金属工芸の世界をもっと知りたくなりました。 ありがとうございました。 (2019.02.03 21:13:58) |