クモと言う生き物は、世間様では余り評判が芳しくない。確かに、ユウレイグモやゴケグモなどに頬擦りしたいとは思わないし、薄暗い木々の間を歩いていて蜘蛛の巣が顔にベチャッと張り付いた時、それで気分が爽快になるという人も決して多くはないだろう。
しかし、クモの中にも愛らしい種類がいる。その代表はハエトリグモ。脚は長くないし(短足が評価されるのは珍しい)、動作は機敏でピョンと跳ねる。それに何と言っても蜘蛛の巣を張らない。
今日はその中からネコハエトリを紹介する。色々写真を用意したのでハエトリグモの可愛さを大いに楽しんでいただきたい。なお、ハエトリグモの和名には「クモ」を付けないのが習慣だそうで、此処でもそれに従うことにする。
クリスマスローズの葉上を徘徊するネコハエトリ(2007/04/05)
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ネコハエトリは日本全国に分布し、最も普通に見られるハエトリグモである。縁側で日向ぼっこをしていると、何処からともなくクリスマスローズの葉の上にやって来る。長さは1cmに満たない。東京周辺では「ホンチ」と呼ぶそうだが、確かに、子供の頃この名前を聞いた覚えがある。
ネコハエトリ.ハエトリグモはこの様な体を曲げた姿勢を取ることが
多い.前方中央の大きな単眼(前中眼)と横の少し小さい単眼
(前側眼)がよく見える(2007/04/05)
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真上から見ると、毛ガニに似ている。1番目の写真ではよく分からないが、2番目では4対の脚の先に白っぽい剛毛が沢山生えた1対の触肢が見える。これをカニのハサミに見立てれば脚の本数もカニに一致する(タラバガニやハナサキガニはカニではなくヤドカリの仲間なので脚が1対少ない)。
ネコハエトリ.最後方の単眼(後中眼)とその前にある
やや細めの単眼(後側眼)が見える(2007/04/14)
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クモは昆虫とは異なり、複眼は無く、単眼を0~4対持つ。ハエトリグモには4対8個の単眼がある。多くのクモは蜘蛛の巣や地面の震動を感知して餌を捕らえるので余り眼は発達していないが、ハエトリグモは巣を張らず、専ら眼で獲物を見て捕らえるので、目は良く発達している。特に最前方の1対(前中眼)は非常に大きく、まるで双眼鏡で覗いている様な感じ。
真っ正面から見たネコハエトリ.まるで双眼鏡の様な眼が愛らしい(2007/04/05)
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ハエトリグモは歩き回って獲物を探すほかに、獲物の来そうな所で待ち伏せしていることも多い。先日、何気なく西洋シャクナゲの花を見たら中に何か居るので、マクロレンズで覗いてみたらネコハエトリであった。下の写真はその時撮ったもの。御行儀良く待ちかまえているところは、ネコを思い起こさせる。
西洋シャクナゲの花の中で獲物を待ちかまえるネコハエトリ.
中々御行儀が宜しい(2007/04/05)
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如何であろうか?ハエトリグモの可愛さを充分堪能していただけたであろうか。
今年はクモは勿論、もっと奇怪、異様、不気味な生き物も紹介するつもりで居る。閲覧者数が減るかも知れない。