春の花の季節も終わりに近づき、今は常緑樹の若葉が清々しい。我が家ではトベラの新梢が伸び盛り?である。
このトベラ、家を引き継いで庭を整備したときに、真っ先に植えたものである。何故、こんな何の変哲も無い木を一番に植えたのか?
トベラは、最近では都心の道路の分離帯等にも植えられおり極普通の植物になってしまったが、本来は海岸性の植物でこの辺りでは珍しい植物であった。
私は、子供の頃、否、今でも海が好きで、小中学生の頃は臨海学校には必ず参加していた。場所は何時も伊豆の下田で、伊東から埃道をバスで3時間も揺られて行ったものである。土埃で髪の毛は勿論、眉毛まで真っ白になった。
学校(在東京都世田谷区)から伊豆方面に向かうと、その内トベラが現れて来て、海が近いことを知らせてくれた。私にとって、トベラは海岸の象徴的植物であり、それが転化して憧れの植物になっていたのである。
毎年、トベラが新梢を伸ばす頃になると必ず葉裏に何かアリマキの様な虫が付く。別に気にもしていないのだが、今年、初めてキチンと見てみた。すると、アリマキも居たが、多くは体長3mm程度の極小さなウンカの様な虫であった。

トベラの葉裏に潜むトベラキジラミ.幼虫は葉を巻いてその内側で
生活する.脱皮殻が見える(2007/05/03)
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拡大して見ると、中々模様の綺麗な虫である。しかし、ウンカの類は種類も多いし同定は無理と思っていたのだが、「トベラ ウンカ」で検索したところ、ウンカではなくキジラミで、トベラキジラミと言う種類らしいことが分かった。一般にキジラミやアリマキは付く植物が限定されている様なので、まず間違いないであろう。

トベラキジラミ.ヨコバイ類に似るが触角が長い(2007/05/03)
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外見はセミやヨコバイ、ウンカに似ている。しかし、この写真の様に背中側から撮ったのでは見えないが、セミやヨコバイの口吻は頭部の基部下部から出ている(頚吻群)のに対し、キジラミではアブラムシ(アリマキ)やカイガラムシなどと同じく、口吻が前肢の付け根の間から出ている(腹吻群)。キジラミを生きたままひっくり返して撮影するのは難しいので、残念ながら、写真では御見せできない。

トベラキジラミ.色の薄い方は脱皮後余り時間が経っていないものと
思われる.一寸複雑な綺麗な模様をしている(2007/05/03)
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このキジラミ、沢山付くと虫の出す甘露に黴が生えてスス病を発生させる事があるという。
しかし、今のところこのキジラミを退治するつもりはない。毎年発生しているにも拘わらずスス病は発生していないし、トベラの生長が良過ぎて困っている位なので、少しキジラミ君達に頑張って貰い、養分を吸い取ってトベラの生長を抑えて貰った方がかえって良いのではないか、とさえ思っている。