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テーマ:日々自然観察(9876)
カテゴリ:昆虫(アブラムシ)
クローズアップ・レンズの5番と3番の2枚をレンズの先端にねじ込んで撮影すれば、撮影倍率は約2倍になる。だから、テレプラス×2とクローズアップ・レンズ2枚を併用すれば、倍率は凡そ4倍になる筈である。 実は、先日の写真を撮った時に、一寸これをやってみたのである。しかし、焦点深度が浅過ぎて焦点合わせは殆ど不可能、と云う感じで、余り真面目に考えずに「無理だ」と思ってしまった。
だが、手持ちで焦点合わせが殆ど不可能でも、据え物撮りならば、テーブルに肘をついてカメラを安定させることが出来る(一眼レフは機動性が最大の特徴なので、三脚は使わない主義)。考えている内に段々とその気になって来て、遂にその実験をしてみることと相成った。 4倍もの撮影となると、被写体に何を選ぶかを考えなくてはならない。細微な構造を持つ被写体(当然生き物)である必要がある。手近にいる生き物で思いついたのは、写真家の糸崎公朗氏のWeblog「路上ネイチャー協会」に載っていたヤノイスフシアブラムシの幼虫(或いは無翅成虫)である。これならば、我が家の外庭のコナラにゴマン、どころか10万も20万も居る(今年は猛暑のせいか捕食者が非常に少ない。特に暑さに弱いテントウムシは殆ど居ない)。 拙Weblogでも、ヤノイスフシアブラムシ(Nipponaphis yanonis)の有翅虫と幼虫を3年前に掲載している。成虫も幼虫も普通のアブラムシとはかなり違う形をしているが、アブラムシ自体についての話は3年前の記事を参照して頂きたい。
さて、この幼虫の何処が面白いかと云うと、その刺毛(毛)である。これが、何と毛状ではなく管状をしているのである。このことは糸崎氏のWeblogで初めて知った(こんなアブラムシは他に知らないが、残念ながら全農教「日本原色アブラムシ図鑑」の解説には何も書かれていない)。今回の約4倍の接写装置を使って、この管状の毛を見てみよう、と云う訳である。 今回は、倍率の変化を実感して頂く為に、全て原画からの拡大率を同一にした。何れの写真も原画で横幅1000ピクセル、記事の写真は全て横幅500ピクセルに縮小してあるので、最大に拡大するとピクセル等倍、丁度記事の2倍(面積では4倍)となる。 尚、被写体の幼虫は少し小さめで、体長約0.97mmである。
各写真の解説に書いてあるが、最初の写真は100mmマクロレンズ単体の等倍接写写真。倍率は当然1.0倍である。周りがゴチャゴチャしているせいもあって、虫に生えている毛が良く見えない。変なアブラムシの幼虫なので分かり難いが、頭は左側である。 2番目はテレプラス×2をレンズとの間に挟み、最大倍率にして撮影したもので、倍率はスケールを撮影した別の写真から計算すると1.8倍、毛が管状になっているのが一応分かる。絞りをF6.3にしてあるせいか、解像度が高い。 3番目は、F8に絞って撮影した。解像度はF6.3に比してかなり落ちる。F11では、解像度の低下が著しく、高精度の写真としては使用に耐えないと判断した。
最後の2枚が、クローズアップ・レンズの5番と3番を重ねて前に付け、テレプラス×2と併用した写真である。撮影倍率はスケールと比較すると4倍ではなく、3.5倍であった。4番目の写真はF8で撮影。毛が管状になっているのが良く分かる。頭部(左)は深度外になって良く見えないが、まァ、虫全体の雰囲気は分かる。 最後の写真はF6.3で撮影。虫体に焦点を合わせた写真は深度が浅過ぎて使い物にならなかった。其処で、少し手前の管状の毛の先端に焦点が合っている写真を載せることにした。断面が円形をしているのが良く分かるであろう。虫体は完全に焦点深度外で、ボヤボヤである。 F11でも撮影してみたが、明らかに解像度が低下しており、掲載する必要なしと判断して、省略した。 こうして実験してみると、このマクロレンズ+テレプラス×2+クローズアップ・レンズの組み合わせでは、F8辺りで撮るのが最適と言える(F8の1/3前のF7.1、1/3後のF9では実験していない)。 なお、クローズアップ・レンズを使用すると、絞り込みによる焦点移動が生じる。テレプラス×2と併用した場合は、F8に絞るとファインダーで焦点の合っていた面より約1mmほど後の面に実際(CCD上)の焦点が合う。撮影する際は、焦点が合ったと思った位置から1mm引くか、或いは、1mm手前に焦点を合わせてシャッターを切らなければならない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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超接写システムの解説がとても判り易く、ぜひやってみたいと思いました。100ミリマクロにテレプラス、さらに接写レンズですと手ぶれが大きそうです。それをフラッシュでカバーされているのでしょうか。
焦点がずれるというお話は、うかがわなければ諦めてしまうところです。ファインダーをのぞいて焦点を合わせても、実際画像がずれるということなのでしょうか。不思議です。 (2010.11.28 17:06:00)
ヤスフロンティアさん
> 超接写システムの解説がとても判り易く、ぜひやってみたいと思いました。100ミリマクロにテレプラス、さらに接写レンズですと手ぶれが大きそうです。それをフラッシュでカバーされているのでしょうか。 ----- 等倍でもストロボなしでの撮影は不可能です。 > 焦点がずれるというお話は、うかがわなければ諦めてしまうところです。ファインダーをのぞいて焦点を合わせても、実際画像がずれるということなのでしょうか。不思議です。 ----- 所謂球面収差に拠るものです。即ち、レンズの周辺から入った光は、中心部から入った光よりも手前(レンズ寄り)に結像することに因ります。 実際的に焦点の合った状態と云うのは、これらの色々な部分から入った光の一番多くの光がCCD或いはフィルム面に集まった時です。絞り込みにより、周辺からの光が入らなくなると、中心部の光は少しCCDより後に結像しますから、CCD上に結像している被写体の面は絞り込む前よりも少し後になる訳です。従って、絞り値を大きくすればする程より後に焦点が合うことになります。 クローズアップ・レンズが非球面ならば、こう云った問題は起こり難くなる筈です。また、普通のレンズでも絞り込みによる焦点移動は少しは存在します。その点を良く理解している人は、接写でない普通の撮影でもその調整(体を5cm位引くとかする)をしながら撮影しています。 超接写をする場合は、光学的な知識や、それに基づいた実験をして最適条件や補正必要性の有無などを調べてみる必要があります。 (2010.11.29 09:17:53)
管状の毛の働きは、何かを吸収したり排泄したりでしょうか。アブラムシの幼虫でも いろいろなカタチがあるのですね。。
(2010.12.01 17:08:41)
アーチャーンさん
その点を良く理解している人は、接写でない普通の撮影でもその調整(体を5cm位引くとかする)をしながら撮影しています。 そうしますと、ファインダーを覗いてしっかりと焦点が合っても、フイルム面では合わないという、赤外線フイルムを使うようなことが起こるのでしょうか。 (2010.12.01 21:52:09)
るる555さん
>管状の毛の働きは、何かを吸収したり排泄したりでしょうか。 ----- この管状の毛については何も情報がありません。機会があれば、専門家に訊いてみたいと思っています。 >アブラムシの幼虫でも いろいろなカタチがあるのですね。。 ----- アブラムシにも色々な形態の種があり、カイガラムシの様な種も居ます。このヤノイスフシが属すヒラタアブラムシ亜科(科とする人も居る)の幼虫や成虫は、他の典型的なアブラムシとは一寸違っています。 (2010.12.02 07:55:21)
ヤスフロンティアさん
>アーチャーンさん >>その点を良く理解している人は、接写でない普通の撮影でもその調整(体を5cm位引くとかする)をしながら撮影しています。 > そうしますと、ファインダーを覗いてしっかりと焦点が合っても、フイルム面では合わないという、赤外線フイルムを使うようなことが起こるのでしょうか。 ----- 赤外線の場合は光の波長による屈折率の違いに拠る訳で、謂わば色収差の1種と言えます。高級なレンズで、ホタル石(人工ホタル石)や超低分散のガラスを使うのは、波長による屈折率の差を少なくする為です。 このクローズアップ・レンズの場合は球面収差です。赤外線の場合は、絞りの値に関係しませんが、この場合は絞れば絞る程焦点が開放時の焦点面より後にずれることになります( http://www.lensya.co.jp/009/index.php/%E7%90%83%E9%9D%A2%E5%8F%8E%E5%B7%AE )。 (2010.12.02 08:08:10) |