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2012.02.08
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カテゴリ:書籍・雑誌
 歯医者通いを始めて早2ヶ月余。先日、治療の合間に読書が好きだという話をしたところ、先生が愛読書を数冊貸してくださった。サマセット・モーム(Somerset Maugham)、北 杜夫さん、角田光代さんの作品である。
 食べ物にしろ何しろ、まずは嫌いな順から片付けて好物を最後に取っておくタイプなので、とりあえずは苦手な女性作家の女性主人公モノ、角田さんの「八日目の蝉」から読んでみることにした。
 以前ドラマ&映画化されて話題になった作品なので、女性が子供を誘拐してどうのこうの…という大まかな内容は知っていた。が、元々母性が乏しいのかその手の話には全く興味が湧かず、ちょっと面倒だなぁなどと思いつつ(すみません、先生)読み始めた。

八日目の蝉.jpg

 “逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか…。
東京から名古屋へ、女たちにかくまわれながら、小豆島へ。
偽りの母子の先が見えない逃亡生活、そしてその後のふたりに光はきざすのか。
心ゆさぶるラストまで息もつがせぬ傑作長編。第二回中央公論文芸賞受賞作。(文庫本裏表紙より)”

 小説は、主人公・希和子が不倫相手だった男性宅に忍び込み、男と妻の間に生まれた赤ん坊と対面する短いプロローグの0章。その赤ん坊を誘拐して薫と名付け、二人で千葉の友人宅から名古屋へ、そしてヤマギシ会をモデルにしたと思われる怪しい女性団体・エンジェルホームへ逃げ込み、更にそこで知り合った女性の故郷である香川県小豆島へと逃亡を続ける1章。かつて社会を賑わせた誘拐事件の被害者で、今は女子大生になった薫こと秋山恵理菜と彼女にまつわる人々の話と誘拐事件の加害者・希和子のその後と現在が語られる2章からなり、1章でのスリリングな逃亡生活に思わず引き込まれて一気に読んだ。意外と面白かった。

 そういう書かれ方なので素直に従い、1章では完全に希和子を応援していた。逃げて!頑張って逃げ通して!美しい自然に囲まれた小豆島での束の間の平穏な日々が一瞬にして崩れ去ろうとした時、高松行きのフェリーで無事に逃げ延びてほしいと祈るような気持でページを捲った。
 そして2章では夢から覚めたような気持になった。そうだった、希和子はとんでもない犯罪を犯していたのだ。薫と勝手に名付けられた恵理菜や彼女の家族に多大なる精神的苦痛を与えたうえ家庭を大きく歪ませて。希和子の不倫相手・秋山が如何に自分勝手な言動で彼女を傷つけようとも、秋山の妻が如何に酷い嫌がらせを彼女にしたり罵声を浴びせたとしても、希和子がとった行動は到底許しがたいものであろう。
 我が子に置き換えて考えてみる。生後6ヶ月から4歳くらいまでといえば、それはそれはもう可愛い盛りであった。ハイハイをし、やがて歩き出し、歯が生え、言葉を発し…どれも初めてづくしで、些細なことにも一喜一憂した。あの喜びや感動を他人に全て奪われてしまう悲しみ。いや、それ以前に生死すらも不明で、ただただ日々の無事を祈ることしか出来ない毎日など、想像するだけで気が狂いそうになる。
 だがこの小説では希和子の母性が強く描かれ、実母は若い男と浮気をしたヒステリーな女性として登場しているので、ついつい希和子に同情してしまった。映画では芸達者だといわれている永作博美さんが希和子役を演じているそうなので、もしいつの日かTVで放送される機会があればちょっと見てみたいな、と思う。

 個人的な感想としてタイトルにもなっている八日目の蝉の話は、言いたいことは分かるが不要な気がした。希和子をはじめ恵理菜の両親、恵理菜の恋人、そして恵理菜も…と主要人物が皆揃いも揃って不倫をしているというのはどうかと思う。ただ、余韻を残すラストはよかった。美しい思い出が詰まった小豆島へ行きたいと願いつつも海を渡れず、結局岡山に留まった希和子。岡山港のあのフェリー乗り場に行けば今日でも希和子の姿を見つけられそうな気がする…船

 この作品を読み終えた翌日、大分で行方不明になっていた女児の母親が死体遺棄容疑で逮捕された。まだ詳細は不明だが、毛布をかぶった状態で死亡していた娘さんを翌朝発見した母親が、パニックになって埋めたと供述しているとか。どうもそのあたりの心情がスーパーでの自作自演も合わせてさっぱり理解出来ないけれど、まぁひょっとしたら何か止むに止まれぬ事情があってのことかも分からないので何ともいえないものの…。母性について考えさせられる今日この頃であーる。 





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Last updated  2012.02.08 09:06:58
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Re:「八日目の蝉」 角田光代(02/08)   gundayuu さん
歯医者と聞くだけでイタタというイメージが先行して、歯医者通いをしなければいけなくなると、どうも憂鬱になってしまいます。(好きだという人も、まずいないでしょうけど)

女性作家は苦手とは、常々言われていますが、それでもこの作家はまだ良いという作家さんはいますか?
私の場合、少ない読書量ではありますが、永井路子と宮部みゆきがお気に入りですね。
永井路子は「炎環」、宮部みゆきは「蒲生邸事件」が特に印象に残っています。
(2012.02.08 23:36:46)

歯医者といえば   lavender80 さん
クイーンのロジャーや福島の覆面バンドGReeeeNが浮かびます。
「八日目の蝉」は夕刊で連載していた頃、読んでました。
地味な印象でしたが、映像化で話題になりましたね。
テレビの再放送を録画して見たけど、数年前なのでストーリーをすっかり忘れてました(^^;)
たしかに、不倫相手のおじさんはトホホで、生みの母も印象薄かったです。

映画版は未見ですが、個人的には、演出とはいえ、親父向けとしか思えない金麦の媚びたCMが苦手なので壇れいさんより永作さんの方がいいかな。

最近はまとまった文章を読む気力や集中力がなくなり、小説からすっかり遠ざかっています(>_<)
読み返したいのは井上ひさし「吉里吉里人」かな。 (2012.02.09 17:37:39)

恋愛体質   楊ぱち さん
gundayuuさん、おはようございます。
>歯医者通いをしなければいけなくなると、どうも憂鬱になってしまいます。
>(好きだという人も、まずいないでしょうけど)
歯医者は痛いのも確かに嫌ですが、何度も通わなければならないのが面倒です。
でも祖父が歯科医、姉が歯科衛生士だったせいもあるのか、歯医者はそんなに嫌いじゃなかったりします。
今まで10件以上の歯医者に通いました…ってちっとも自慢になりませんが(^^;
(どんだけ歯ぁボロボロやねん!)

>女性作家は苦手とは、常々言われていますが、それでもこの作家はまだ良いという作家さんはいますか?
女性作家の作品は、その多くが恋愛をテーマにしているので苦手です。
(恋愛する機会を失ったおばはんの、僻みによるところが大きいのですが)
女性作家では澤田ふじ子さんや杉本苑子さんの作品がよかったです。
澤田さんの「土御門家・陰陽事件簿」シリーズが好きです。
杉本さんは「永代橋崩落」と「落とし穴 鎌倉釈迦堂の僧たち」の二つしか読んだことはありませんが、どちらも心に残る作品でした。
>永井路子は「炎環」、宮部みゆきは「蒲生邸事件」が特に印象に残っています
どちらもお噂はかねがね…(^^;
どんな小説なのかちょっと調べてましたが、2作品とも何やら面白そうで興味が湧きました。
ぜひ近いうちに読んでみようと思います♪ (2012.02.10 08:49:34)

GReeeeNといえば志村けんさん…   楊ぱち さん
ラベさん、おはようございます。
>歯医者といえばクイーンのロジャーや福島の覆面バンドGReeeeNが浮かびます
ロジャーって歯科医の勉強をしていたんでしたっけ?
GReeeeNは人も曲も全く知りませんが、昨年の震災で被災者の身元確認をされるというニュースだけは見ました。
歯医者さんバンドなんですね。
グリーンといえば志村けんさんのビールのCMを思い浮かべてしまいました(^^;

>親父向けとしか思えない金麦の媚びたCMが苦手なので壇れいさんより永作さんの方がいいかな
おッ!ビールCMつながりだ!
壇れいさんといえばミッチー王子の奥様になられた方ですな。
私も希和子役は永作さんの方が見てみたい気がします。
壇さんのようなパーッと明るいイメージ(CMしか知らないけど)はちょっくら違う気が…。

>最近はまとまった文章を読む気力や集中力がなくなり、小説からすっかり遠ざかっています(>_<)
あららら…140文字に慣れちゃいましたか?
かく言う私も昨年末に西森作品(「今日から俺は!!」、「天使な小生意気」等が大ヒットしたマンガ家さん)に出合ってからは、マンガばかり読んでおります。
>読み返したいのは井上ひさし「吉里吉里人」
井上さんは何冊か読んだだけですが凄くいいですね♪
「吉里吉里人」は読んだことがないけど、常々一度は読んでみたいと思っています。
新聞配達をやめたら一晩通して読み耽りたい、と今から楽しみにしているのであります(^^)

追伸
新ブログにてリンクしていただき、どうも有難うございます。
こちらでもリンクを是非とも貼りたいのですが、○天の機能改悪にて出来なくなってしまい、心苦しいかぎりであります。
本当に申し訳ありません…m(_ _)m
My PCのお気に入りには入れさせていただきましたので、これからもちょくちょく遊びに伺いまする♪ (2012.02.10 09:34:42)

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