Pastime Paradise

　「Mr.Boo! マイケル・ホイ（許冠文）祭」第2夜となる今宵から、マイケルの出演した映画を順に御紹介していく。
　まずは72年に公開された、マイケルの記念すべき映画デビュー作「大軍閥」である。
　元々主役には台湾の俳優・崔福生が予定されていたがビザが下りず、TVでマイケルを見た李翰祥（リー・ハンシャン）監督が興味を持ったのだとか。
　この大胆な起用が功を奏し、72年の香港映画年間興行収入第3位の大ヒットを記録した。
　映画初出演とは思えぬ堂々とした演技っぷりが素晴らしい！

　マイケル演じる土匪（土着の匪賊）の龐大虎は、ロシアと日本の戦いを助けたため、北方の大軍閥になった。
　あるとき、北方で深刻な干ばつが起こった。雨乞いも出来ずに龍王を叱責し、砲兵に龍王に向けて砲撃を命じた結果、誤って雨が降ってしまったので、彼は更に慢心した。
　ある日、彼は暴行事件の審理に呼び出された。胡錦（フー・チン）演じる高家酒坊の未亡人・高白石が孤独を嫌って従業員の季伯常と寝ていたところを、林偉圖（リン・ウェイツー）演じる叔父の高正白に踏み込まれたため、高白石はその機会を利用して叔父を暴行の罪に陥れようとしていた。龐大虎は信憑性を試すため、2人の兵士に法廷で高白石を暴行させてみたが、兵士たちが成功しなかったので、高白石が叔父を陥れたと判断。高白石と季伯常は引き出されて射殺された。
　何莉莉（リリー・ホー）演じる京劇一座の娘・小蘭芳を気に入った龐大虎が嫌がる彼女を強引に抱こうとしたところ、彼女が悲鳴を上げた。階下にいた彼女の父親らが駆けつけたものの、龐大虎に撃たれて死んでしまい、小蘭芳は悲嘆にくれた。
　その後、民国18年の北伐で国民党が全国を統一すると、日本軍は中国統一を破壊するため、辞任していた龐大虎の復帰を支援した。
　ある葬儀（だか告別式だか何か）に参列していた龐大虎の前に、突然女性が現れた。彼女は理由もなく殺された一座の主人の娘・小蘭芳で、家族の仇と国の憎しみからこの国賊（龐大虎）を射殺したのであった。――多謝、維基百科（Wikipedia）＆Google翻訳様。

　吹替・字幕なしで見たのではっきりした内容は分からなかったが、まぁこういう話らしい。
　タイトルの軍閥というのは、国内の各地方に割拠し、ある程度の地域を実効支配する複数の勢力（派閥）のこと。清朝末から辛亥革命、中華民国成立と中国の権力闘争の中心にいた袁世凱が根拠としていた軍事力を起源とし、袁没後の北京政府（北洋政府）を支配し、または政権を争った中国の地方軍閥の総称を北洋軍閥というそうで、北洋軍閥は根拠地とする地方と背景勢力の違いにより各分派に分裂していたのだとか。（まるまるWiki参照）
　「大軍閥」は中華民国の多くの逸話や興味深い歴史を基に作られており、龐大虎の人物像や行為は以下の方々がモデルとなっているらしい。
　北洋軍閥の奉天派の有力者で、雨乞いのため大砲を撃った張宗昌。彼の部下で、民国18年に張宗昌の敗北後に慌てて蒋介石に降伏し、国民革命軍の軍長となって乾隆帝と西太后の陵墓を盗掘した孫殿英。張宗昌の部下である施從濱の娘・施劍翹によって暗殺された直隷派の孫傳芳等。上には書かなかったが、龐大虎の部下が西太后の棺を抉じ開けて装飾品を盗掘するシーンもちゃんと描かれている。

　ちょっと驚いたことに、高白石の暴行シーンや、龐大虎の愛人役を演じた狄娜（ティナ）と溫桑役の宗華のベッドシーンでは胸やお尻が丸見え！特に狄娜は胸やお尻は勿論、美しい全裸後姿も大胆に披露していて、おかげでそれ以来 “艶星（ポルノスター）” だの “肉弾” だのという嬉しくない称号を与えられたそうな。
　一方、主演のマイケルもちゃんと頭を剃って坊主頭で熱演。本人は当時まだ20代だったこともあり、嫌だったそうだが。散髪時の鋏入れには姜大衛（デヴィッド・チャン）も参加したとのこと。
　龐大虎の父の養子（か何か）で手紙を届けに来たが誤って射殺される気の毒な少年役で董瑋（トン・ワイ）が、でもって群集の一人で袁小田（ユエン・シャオティエン）も出演している。
　「大軍閥」は中国近代史を知っていると楽しめると思う。他国民が理解するのはちょっと難しいかも。というより、字幕なしで見て理解できるはずもなかった……

　　　

　大軍閥　The Warlord　1972年8月17日（香港）
　監製 ： 邵仁枚　導演 ： 李翰祥　編劇 ： 李翰祥　
　制片商 ： 邵氏兄弟公司（Shaw Brothers）ショウ・ブラザーズ
　演員 ： 許冠文、狄娜、姜南、朱牧、王俠、胡錦、何莉莉、林偉圖
　語言 ： 国語（中国語）
　票房 ： HK$ 3,464,724（1972年第3位）

　※ 監製：プロデューサー、導演：監督、編劇：脚本、制片商：制作会社、演員：出演者、語言：言語、票房：興行収入