自殺予防は鬱病対策から
9月10日は世界自殺予防デーです。今年から9月10日からの一週間が自殺予防週間と定められました。日本における自殺者数はバブル崩壊に伴い急増し、2万5千から3万人を超えるようになり、現在も3万人を超しています。 バブル崩壊により中年男性の自殺者が急増しました。倒産、リストラによる経済的な原因によるものですが、雇用状況が改善しても労働強化による30代の自殺が増えています。自殺者の多くは鬱病にかかっていたと推測されています。 世間では「死ぬと言っている人間は自殺しない」と言われていますが、多くの自殺者は自殺する前に周囲の人に「死にたい」と言っているそうです。社会は自殺者に対して関心を払いませんでしたが、自殺を防げる場合もあります。 北欧の社会ぐるみで自殺対策に取り組み、自殺者数を減らした経験からすれば、日本も自殺対策を進める必要があります。東神大時代に生命の電話に関わったことがありますが、民間のNPO法人などが地道な活動を積み重ねています。 しかし、行政の関心は薄かったのですが、10年間も3万人の大台を超し続ける現状に危機感を抱いたようです。自殺希望者への相談窓口を拡げ、自殺者への理解を訴えていますが、現実に自殺しそうな人に対する対応が分かりません。 私たちに考えられる手段の第一は精神科の受診を進めることでしょう。自殺者の多くは鬱病ですから専門的な治療が必要です。鬱病に励ましが禁物なのは常識ですが、励ましの言葉をかけてしまいますますから、素人療法は危険です。 患者の視点から見れば、鬱病は脳の病気であり、心の病気です。ストレスに心が耐えられなくなり、脳の機能が侵されてしまうからです。鬱病は心の風邪とも言われるように誰もが罹る病気ですから、早期発見、早期治療が肝要です。 脳が正常に機能しないのですから、薬により脳の機能を正常に戻さない限り何をしても無駄です。現在では入院を選択肢に入れながらも、外来通院による薬物治療、投薬も可能です。脳の機能が回復すれば全く違う世界が開けます。 私は6年前に抗うつ剤パキシルに出会いました。脳の機能が質的に改善しました。寝たり起きたりの生活、毎週2~3回も点滴に通う生活が劇的に変わったからです。毎日の生活が規則正しくなり、1000冊を超える本を読破しました。 脳の機能が改善されるにつれて肉体も改善されてきました。幽霊のような生気のない姿から現在のような気力に溢れた姿に変わりました。脳が生命の源であることを実感させられました。錠剤一個により人生が変えられたのです。 私にはアルコール依存は鬱病の症状の一つのように思えます。脳にアルコールの薬理作用が刷り込まれるからです。半年間ぐらいの断酒なら何回も実行しましたが、鬱になると体がアルコールを求め、再飲酒をしてしまうからです。 主治医は「病が飲ます」と庇ってくれましたが、その言葉に甘えてしまいました。抗鬱剤はアルコールを飲んでいる限り効きませんから、断酒ができなければ治療は難しいと思います。鬱病、薬物依存、自殺は相関関係が高いのです。