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カテゴリ:測量
国土地理院が平成27年10月1日現在の国土の面積を公表した。
面積の公表は毎年恒例で、昭和35年から国土地理院が発表するようになったが、明治15年に太政官統計院によって発表されたのが最初とされ、人口統計と並ぶ古い歴史を持っているのだという。 発表された平成27年の国土の面積は377,970.75km2。 前年が377,972.28km2なので、何と1.53km2国土の面積は減少していることになる。 そもそも国土の面積の増減はなぜ起きるのだろう。 西之島のように新しい島(自然島)ができることもあるだろうが非常に稀で、多くの場合は埋立により、それまで海であった場所に土地ができることによる。 かつて日本の都道府県で最も面積が小さかったのは大阪府だったが、1985~1990の間に香川県を逆転している。 その要因の一つが埋立であることは現在の大阪湾の様子を見れば納得できるだろう(他にも陸海の境界が満潮界に改められたことで、香川県の入浜式塩田跡地などが海の扱いになった影響もあるとのこと。そのあたりの変遷はこちらのサイトに詳しい)。 こうして面積が増えるのは理由として分かりやすいのだが、ではなぜ減少が起きるのだろうか。 普通に考えれば陸地が海になってしまうケースだろう。 実際に東日本大震災により一時的に海中に没してしまった土地もある。 その際には国土地理院が被災地の通常の地図の更新を停止したが、震災による面積の変化が直ちに反映されないように配慮したものとされる。地方交付税の算定に影響を与えてしまう可能性があるからだ。 この話から分かるように、面積の算出は国土地理院の地図から行っている。 そして今回見られたような減少も含めて、面積の変化には実は地図が少なからず影響を与えているのだ。 かつて面積の算出には全国を同一縮尺で網羅する2万5千分1地形図が使われていた。 その後国土地理院では図面単位の地形図から、シームレスな地図データベースである電子国土基本図へと基本図の形態を変更した。 電子国土基本図は地理空間情報活用推進基本法で定義された基盤地図情報がベースとなっているのだが、この基盤地図情報は従来の地形図の体裁をある程度受け継ぎながらも、都市計画区域などでは縮尺レベルを2500としており、従来より大縮尺となっている。 この「地図の縮尺が大きくなった」ことが面積に影響を与えている。 これについては国土地理院が公表している説明図が分かりやすい。 <国土地理院HPより引用> 縮尺が大きくなると、それまでの縮尺では反映できなかった海岸線の細かい凹凸が表現されるようになる。 この図からは、これまでの縮尺でのざっくりと引かれていた海岸線が、大縮尺の図に比べて、実は海の部分を多く丸めこんでしまっていたことが見てとれる。 このような部分が、大縮尺地図ベースで算出した場合、海となるため面積に含まれず、結果として面積が減少するということが起きることになる。 いわゆるフラクタルの罠というやつだ。 面積はまだいい方なのだが、海岸線の計測においては、縮尺が大きくなるほど細かい海岸の凹凸が表現されるので、結果として海岸線が長くなってしまうことになる。 そうなると海岸線の長さを計測すること自体があまり意味を持たなくなってしまう。 地図の性質のひとつとして認識しておきたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016.02.25 01:49:53
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