くれーじーくえいる　ぶろぐ

　先日13日、東京のホテルオークラにて『ゴルゴ13』の連載40周年＆単行本150巻記念を祝うパーティーが催され、原作者のさいとう・たかを先生をはじめとして、北見けんいち・黒鉄ヒロシ・高井研一郎・ちばてつや・つのだじろう・永井豪・藤子不二雄Ａ・古谷三敏ら錚々たる顔ぶれの漫画家仲間が一堂に会しました（一部敬称略）
　一つの作品を休載もなく40年に渡って精力的に描き続けているさいとう先生のタフさに敬服。しかし、"ゴルゴ13の最終回"についてはあくまではぐらかすのね（笑）

〔Target.32：殺意の交差〕　　原作：リイド社ＳＰコミックス第５巻収録（1969年初出）

CAST　　ジョナサン・アープ：柴田秀勝　　アルバー：川久保潔　　チャック：檜山修之　　アン：小清水亜美

　アメリカ・シカゴのとあるスポーツジムでトレーニングに勤しんでいたゴルゴ13は、ジムの客の一人であるジョナサン・アープという男から声をかけられる。アープは彼の鍛え上げられた肉体に賛辞を送りつつ、彼を街のショーパブに食事に誘う。アープはここ一週間の間の彼のジムでのトレーニングぶりを事細かに観察、特に腕を鍛える運動に着目し、彼が射撃にもかなり通じている人物と見込んで５万ドルを報酬にある狙撃の依頼をする。お膳立てはすべて自分がする、貴方はただトリガーを引いてくれるだけでいいと言う・・・
　後日、ゴルゴ13はとある邸宅の前で車椅子の老人と会う。その人物はジョナサン・アープが彼に接触してくることをすでに知っており、ゴルゴ13にとってもすでに承知のことだったようだ。老人はゴルゴ13の口座に報酬の300万ドルを振り込む約束をすると、後の手筈はアープがすべてするはずだという。それは、ブラウンなる人物の暗殺計画――――――

　ジョナサン・アープはシカゴを拠点とする大規模レジャー企業であるABCレジャーコンツェルン社のシカゴ支部を任されていた。ゴルゴ13を自社の経営するボウリング場に招待したアープは、そこの自室で自分の計画について説明する。彼がゴルゴ13に依頼した標的はABCレジャーコンツェルン社のブラウン社長。ABC社は会長のアルバー、社長のブラウン、副社長のクレイターの名前の頭文字から付けられたものだが、クレイターは自動車事故ですでに亡く、アープはアルバー会長を後ろ盾にブラウン社長を抹殺して自身が社長に取って代わろうと企んでいた。ブラウンは毎日17:00きっかりに小型機で飛行場を発ってカナダの自宅に帰っており、アープはこれを利用して17:15に別の飛行場から離陸、ミシガン湖の上空で待ち受けて空の上でブラウンを狙撃しようと計画していた。飛行機と使用する銃はアープが用意し、仕事が片付いたら飛行機と銃を処分して証拠隠滅を図る手筈となっていた。アープは愛用のマイボールを車に積み、ゴルゴ13と共にボウリング場を後にする。
　そんな中、ボウリング場の従業員のチャックは度々アープから叱責されたのを逆恨みし、彼が車に積ませたマイボールをこっそり偽物にすり替えていた。その偽物のボールの中にはある仕掛けが・・・

　そして夕方、アープは自ら操縦する小型ジェット機にゴルゴ13を乗せて飛行場を離陸した。誰も目撃者のいない遙か上空での狙撃、しかも数少ない物的証拠である飛行機と銃さえ始末してしまえば今度の完全犯罪は成功するとアープは自信満々である。やがて、空の彼方にブラウン社長の操縦する小型機を発見、アープは乱気流に手こずりながらも機体をブラウンの小型機へと向ける。そして、両機が擦れ違ったその一瞬、ゴルゴ13は窓から僅かに突き出させたライフルを２連射して見事ブラウンを仕留めた！　ブラウンの小型機はミシガン湖へと墜落、アープは計画成功に歓喜しつつ脱出先の飛行場へと向かう。
　夜、とある飛行場に到着したアープはゴルゴ13を用意した車に案内しようと機を降りるが、そこへ例の車椅子の老人が現れた。実は彼こそがアープの後ろ盾であるアルバー会長だった。アルバーの狙いはアープがブラウン社長を殺すよう仕向けて彼を自らの支配下に置くことであり、そのための駒としてゴルゴ13を雇ったのだった。まんまと会長の掌の上で踊らされたことを知って愕然とするアープを尻目に、ゴルゴ13は一人場を後にして立ち去っていく――――――が、次の瞬間、アープが手にしていたマイボールがアルバー会長を巻き添えにして突然大爆発を起こした！　実は、アープを恨むチャックがすり替えた偽のマイボールには時限爆弾が仕込まれていたのだった。
　現場に先回りして様子を窺っていたチャックは、狙い通りアープが爆死したのを見て狂喜するが、思わぬ形で命の危険に晒される格好となったゴルゴ13は彼を容赦なく射殺したのだった。

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　原作初期のエピソードの一つである本作は、常に冷静沈着且つ用意周到な行動と鋭い洞察力で自身に降りかかる様々な危険を事前に察知して回避するというイメージの強いゴルゴ13が、本当に自分の与り知らぬ所で偶発的な命の危険に翻弄されかかるという珍しいパターンの話です。原作の『ロックフォードの野望　謀略の死角』で、プロとしての条件について問われたゴルゴ13は「10％の才能と20％の努力、そして30％の臆病さ・・・残る40％は"運"だろうな・・・」と含蓄ある言葉を残していますが、今回はその"40％の運"に救われた格好といえます。
　原作のラストは突然背後で起きた大爆発にゴルゴ13が心底ビックリした顔をしているのが印象的で、まだキャラクターの固まっていない原作初期らしいエピソードといえますが、アニメ版はやはり"今の"ゴルゴ13に置き換えたという感が強く、突然の爆発に一瞬驚くものの後は冷静、おまけに爆弾の張本人の青年チャックをその場で撃ち殺すという原作にはない情け容赦なさまでプラスされています（笑）この辺は突然の爆発に危うく巻き込まれるところだった腹いせなのか（笑）、あるいは自分と依頼人の接触を目撃した可能性＆理由はどうあれ自分の命を脅かす形になったチャックに冷徹に報復したということなのか・・・しかし、このシーンを付け加えたせいか、原作のラストのゴルゴ13の台詞「俺の知らないところで、何かが起こっていたようだな・・・」がカットされたのはちょっと残念かも。
　ちなみに、原作の作中ではゴルゴ13が車内で葉巻に火を付けようとするも手持ちのライターの火が点かないというこれまた彼らしからぬマヌケなシーンがあり（笑）、それを見たアープが「古いものは新しいものに交換しないと」と自分のブラウン社長抹殺計画にかこつけるように言うシーンがありますが、アニメ版ではゴルゴ13自身が喫煙していない設定のためか、アープの腕時計の調子が悪くなるシーンに改変されています。他にも、作中でアープがゴルゴ13を乗せて飛ぶ飛行機は原作では双発プロペラのビジネス機なのがアニメ版ではガルフストリーム系っぽい小型ビジネスジェット機に変わっているほか、ゴルゴ13が使うライフルの名前も原作ではスイスの名門競技用銃ブランドであるアンシュッツなのに対して架空らしき名前に変わっています。

　さて、今回の声優陣も相変わらず豪華。アープ役に柴田秀勝、アルバー役に川久保潔とベテランを据える一方、チャック役の檜山修之がアブナい小者男を怪演していい味出しすぎてますね（笑）さらに、本筋にはほとんど関わらない端役の女性アン役に小清水亜美という何とも勿体ない起用も・・・

　ところで、今回は原作者のさいとう・たかを先生の誕生日を記念してファン必見のスペシャルゲストが登場するとのことでしたが・・・

　ちょｗｗｗ先生自重ｗｗｗｗ何でそんな所にｗｗｗｗｗしかも３回ｗｗｗｗｗｗ

　というわけで、正解は冒頭のジムとボウリング場に何気に客として顔を出し、さらにアイキャッチでゴルゴ13とダンディに背中合わせまでしていたさいとう・たかを先生ご本人なのでした（笑）