森田理論を世界に向かって発信しよう
私は最初に集談会に参加し始めた頃、「あなたの症状はなんですか」という先輩会員の質問を受けて困惑した経験があります。私を精神を患った病人としてみているのだなと思いました。そのように取り扱われると、私もしだいに器質的な精神疾患にかかっているような気がして、なんとか元通りに修復しなければならないと考えるようになりました。症状というと器質的な病気に罹っているということです。たとえば、うつ病、統合失調症、双極性障害などは器質的な病気です。ところが私たちが普段使っている神経症というのは、MRIの検査をしても異常が見つからない。しかし、時として、器質的な精神疾患にかかっている人よりも、重大な心の病を抱えているように見えます。うつ状態、抑うつで苦しいという面はありますが、大うつ病を発症しているわけではありません。ですから私は集談会の場で、安易に「症状、神経症」という言葉を使うことは反対です。対人恐怖症、不安神経症、パニック症、強迫神経症、普通神経症などです。これに変わる言葉は、次のようなものです。あなたが不安に感じていることは何ですか。あなたが心配していることは何ですか。あなたの悩んでいることは何ですか。あなたがとらわれていることは何ですか。あなたが抱えている生きづらさは何ですか。症状という言葉を、不安、心配事、悩み、とらわれ、生きづらさという言葉に変換することです。それらは人によって様々です。集談会では自分の問題を出し合って、参加者の助けを借りながらカタルシスを得る。そして水を得た魚のように活き活きと生きていくようになることが目的です。・不安にとらわれやすい。・小さな問題がすぐに一生左右するような大きな問題になる。・ギャンブルやアルコールやネットゲームなどから抜け出せない。・本能的、衝動的な行動で重大な事件を起こすことが心配だ。・生きがいが持てなくて、生きていくことが苦しい。・人が恐ろしい。人間関係に問題がある。(夫婦、子供、親、祖父母、兄弟姉妹、仕事関係、友達、親戚、ご近所など)・結婚したい。子どもが欲しい。・離婚したい。人生をやり直したい。・仕事が面白くない。やりがいがない。退職したい。転職したい。・健康問題、介護や認知症、障害児、不登校、問題児など。・女性特有の悩み、男性特有な悩み。若い人特有な悩み、年配者特有な悩み。・経済的な悩み。自立困難な悩み。対人関係の悩み。・不平等な社会に対する怒り。例え集談会で解決できない事でも、解決につながる貴重な情報を得ることができます。これらの悩みは認識間違いをしているために発生していることも多い。一人で悩んでいるだけで、解決の糸口さえ見いだせない。解決のためのヒントや誤った考え方の修正、自分に合った適切な自助組織を知ることによって、明るい展望を見つけることが大切です。神経質性格を持ち、このような不安、心配事、悩み、とらわれ、生きづらさを持っている人は、集談会という自助組織が役に立ちます。生活の発見会は、現在全国100か所余りで開催されています。努力はしているのですが、活動が停滞しているところが多い。さらにコロナが追い打ちをかけましたね。しかし生活の発見会がZOOMなどのノウハウを蓄えたのはとても大きいです。今後の起爆剤になる可能性が高い。私は好奇心旺盛で最初から関わってきました。おかげで様々なノウハウを身に着けました。ZOOMの勉強会に参加すれば懇切丁寧に教えてもらえるのです。素晴らしい仲間が全国各地にいるといった感じです。これからは、同じ年代、性別、同じ悩み、とらわれ、森田初心者、同じ生きづらさを抱えた人、森田理論の活用方法、応用例、同じ目的を持った人同士が全国的規模で交流できます。今は始まったばかりですが、ジャンル別に様々なグループができることと思います。これはリアルタイムの交流会とほとんど変わりません。私にとっては森田の新しい世界に参画できた嬉しさで一杯です。さらにこれを使って世界展開できるかもしれない。何しろ同時通訳のソフトがある時代ですからね。世界で注目されて逆輸入で日本で森田が見直される。そういう見方を視野に入れて活動する時代に差し掛かっているのかもしれません。日本で生まれた柔道、空手、将棋などが世界で認知されているではありませんか。どうも日本人は自分の持っているもののすばらしさを過小評価する傾向があります。生活の発見会も世界にその魅力を発信したらいいと思います。そして逆輸入で森田が日本で認知されることをねらうのも一つの方法です。これはメンタルヘルス岡本記念財団の創始者の岡本常男氏が力説されていました。中国で森田療法が盛況なのは、岡本さんの力が大きいですからね。岡本さんは優れた経営者でしたから目の付け所が違うように思います。この方法が今後森田の自助組織が生き延びていくかもしれませんね。森田英語版、森田の海外進出を画策したら大当たりするかもしれませんね。レイノルズ先生がアメリカで森田ファンを獲得されているではありませんか。昨年の森田療法学会でも、海外からの普及活動はとても新鮮でした。期待値が大きいのが魅力です。森田を井の中の蛙状態で満足している時代は過ぎ去ったのではないでしょうか。