短所は長所に置き換える
岸見一郎氏のお話です。自分を好きになりたければ、現状のままで、この私のいいところを見つけていく努力をしていくしかないのです。カウンセリングで、「今の自分が好きでない」という人に対しては、何とかして自分のことを好きになれるよう、援助します。どういう話をするかというと、まず短所だと思っていることを長所に置き換えることです。例えば、私は勉強でも、ピアノの練習でも、テニスの試合でも、ことあるごとに「もっと集中しろ」と注意されてきました。岸見氏は、こういう人はいろんなことに興味を持てる、好奇心があると置き換えることはできませんか。つまり分散力があるということです。今の時代、いろんなことが同時にできるということは大事なことでしょう。一つの仕事しかできないとか、静かな部屋でなければ仕事が手につかないというのではダメなのです。同時にいろいろなことができるというのは長所です。森田先生も、集中というのは無所住心といって四方八方に注意が分散している状態であると言われています。また、「私の子どもは飽きっぽいです」という親は多いです。岸見氏は、飽きっぽいのではなく、決断力があるといういい方をします。「これはじぶんに向いていない」とわかった時に、柔軟に別のものに移れるというのは長所になります。今の仕事が自分には合っていないと思っても、決断力のない人はなかなか辞めることができません。今のままなら生活に困らないからです。嫌だ、嫌だと思いながら会社にそのまま居続けます。その結果、ミスや失敗で会社に損害を与えたり、ストレスでうつ病になったりします。こんなふうに、中途退職や、転職を考えているけど、自分に根性がないのではなどと悩んでいる人は、飽きっぽいのではなく決断力があると考えると、今の自分を好きになれます。(絶望から希望へ 岸見一郎 大和書房 194ページ参照)神経質者は心配性です。他の人が気にならない小さなことでも不安になります。外向的な人で、小さな不安をまったく気にしない人を見て、そんな性格の人間に生まれ変わりたいと考えることもあります。森田理論学習をすると、それは考え違いをしていたことが分かりました。心配性な人は感性がとても豊かな人であると学びました。音楽、絵画、彫刻、文学、演芸などは感性が豊かな人でないと、人を感動させるような作品を作り上げることはできません。仕事をする場合でも、細かくリスク管理をすることができますので、成功により近づくことができます。ないものねだりをするよりも、自分がもともと持っている神経質性格を鍛えていくほうが有益であることが分かりました。弱点や欠点を目の敵にするよりも、両面観で考えると意外にも強みや長所に変身する可能性があるという視点を忘れないようにしたいものです。