不安にどのように対応すればよいのか。
森田理論の「あるがまま」を身に着けるためにどんなことを心がければよいのでしょうか。「あるがまま」の第一の要点は、症状あるいはそれにともなう苦悩、不安を素直に認め、それに抵抗したり、否定したり、あるいはごまかしたりしないで、そのまま受け入れることだと言われています。これに対して、不安を受け入れられないから神経症のアリ地獄に落ちたのに、不安を受け入れなさいというのは酷な話だという話を聞きます。もっともな話だと思います。森田理論では、初期段階の不安は取り除いたり、逃げたりしないできちんと向き合いましょうと言っています。神経症に陥る人は、初期段階の不安を異物視して取り除こうとしたり、逃げてしまいます。そうすると精神交互作用によって不安はどんどん膨れ上がってしまいます。そしてたちまち自分の一生を左右するような化け物のような不安に増幅させてしまっているのです。いくつ体があっても足りないような状況に追い込んでいるのです。問題は小さな不安をつつきまわしてどんどん大きくしてしまうことにあります。不安を発生した時の大きさのままに保つことができれば、パニックに陥ることはないという考え方です。森田理論の行動の原則の冒頭の部分には、森田療法は心を外に向けるテクニックを用いますとあります。不安や症状で苦しいときは、周囲のことが見えていません。心の状態を行動によって内向きから外向きに変えることが、神経症の克服の第一歩です。行動の原則①に「見つめ、感じる」というのがあります。「森田理論学習の要点」では、不安でいっぱいの時でも、まず自分の周囲の状況に視線を向けるだけでいいのです。「感じ」が湧いてくるまで目をとめてみましょうとあります。これは最初に取り組みたいことです。不安への対応方法として、「不安を受け入れる」という方法は大変難しくなります。次善の策として、精神交互作用によって、自分の一生を左右するような大きな不安に増幅しないという方法もあるのです。