プレッシャーにどう対応するか
元陸上競技選手の為末大さんのお話です。プレッシャーにはどのように取り組めばよいのでしょうか。試合に失敗して何かを失うかもしれないと恐れるのは、思い込みなんですね。自分が勝手につくり上げた恐れが大きくなってパニックになってしまうわけで、そういう思い込みと本当の危機とを混濁しないことが重要なんです。じゃあ現実にどうすればよいかというと、多くの場合、上手くやろうとし過ぎることが緊張の原因となります。でも自分は自分でしかないから、いまある力しか出しようがない。ですから月並みですけど、それまでにちゃんと修練を積んでおくこと。そうすれば、ある種の諦念に至るんです。これでダメならしょうがないとか、選んだのは俺じゃないとか(笑い)自分の出せる力を一所懸命出すところまでが自分の仕事で、その結果は後々受け止めればいい。そういう思いに至った時が、僕の場合一番よい結果が出せた気がしますね。力みとか、大き過ぎる期待にとらわれてしまった時は、あまりいい結果を得られませんでした。(致知 2017年6月号)一所懸命練習するということですが、これが意外に難しい。例えば楽器の演奏でいえば、暗譜で間違えなく演奏できるようになることが第一段階です。これができない段階でお客様の前で演奏するのは失礼になります。ただし、この段階に持っていくのも時間がかかりかなりしんどいです。しかしこれだけでは本番ではいろんなことが起きますから心もとないのも事実です。その間隙を縫って前頭前野がお節介をやきに出てくるのだと思います。前頭前野が「小さな親切、大きなお世話」をしてくるのが厄介です。本番における前頭前野はラグビーのコーチのようにスタンドから見ていてくれるだけでよいのです。私の体験では、本番で演奏する曲を何も考えないで100回繰り返すというのが一番効果があるように思っています。根拠はないのですが、それを後ろ盾にして本番に臨むとぶれない安心感があります。