強迫観念とは何か
森田先生の著作は多いが大きくまとめると次のようになる。1921年(大正10年) 神経質及神経衰弱の療法1922年(大正11年) 神経質の本態と療法1922年(大正11年) 神経療法講義1926年(大正15年) 精神衰弱及強迫観念の根治法1928年(昭和3年) 迷信と妄想1934年(昭和9年) 生の欲望1936年(昭和11年) 健康と変質と精神異常1935年(昭和10年) 精神療法への道 第1巻1937年(昭和12年) 精神療法への道 第2巻1938年(昭和13年) 精神療法への道 第3巻1975年(昭和50年) 森田正馬全集、森田正馬評伝、形外先生言行録この3冊は森田正馬生誕100周年記念事業として編纂されました。森田正馬評伝は伝記です。とても詳しいです。形外先生言行録は森田先生にゆかりのある人たちの追悼文集です。精神療法への道は、森田正馬全集第5巻にまとめられています。我々の先輩の三重野悌次郎さんは、森田正馬全集第5巻、神経質の本態と療法、精神衰弱及強迫観念の根治法を300回くらい繰り返して読んだと言われていました。私は森田全集第5巻は3分冊にして繰り返して読みました。そして気に入ったところを抜き書きして整理しました。これが私の貴重な財産となりました。今日は「神経衰弱と強迫観念の根治法」から強迫観念を森田先生がどのようにとらえておられたのかをご紹介します。強迫観念とは、自ら思うことを思うまいとする心の葛藤のことに名づけられたものである。詳しくいえば、自分が何かにつけて、ある感じまたは考えが起こる。それが自分に不快でありあるいは自分に考えようとし、しようとすることに対して邪魔になって困るから、なるべくこれを感じないように、思わないようにしようとする。そうするとなおさらにそのいやな感じなり考えなりが起こってきて、しつこく自分に付きまとうようになる。こう思うまいとする考えがしつこく強迫的に起こってきて自分を苦しめるのであるからこの強迫観念という名が起こったのである。いわゆる「煩悩の犬追えども去らず」であって、われとわが心の内の狂犬に絶えず脅かされているようなものである。ここに強迫観念ということについて必要な条件は、ある感じまたは考えに対して、感じまい、考えまいとする反抗心のあることであって、この反抗の心がなければ、それは強迫観念ではない。またもし強迫観念の場合に、この反抗の心さえ没却すればすでに強迫観念はなくなり、煩悶は消失するのである。(90ページ)