新型うつ病について
従来うつ病は「メランコリー親和型」といって、真面目である、責任感が強い人がかかりやすいといわれてきた。つまり神経質性格を持った人が人間関係の悪化、転居、仕事の失敗、就職、進学、子どもの出産、昇進、昇格、親族の死や病気などをきっかけとして発病する例が多かったのである。これに対して「新型うつ病」になる人がいる。「新型うつ病」の場合は、自己内省性がなく、他責の人であるというのが特徴だ。例えば名門大学を卒業し、有名企業に就職した人が開発部門から営業部門に配置転換された。それをきっかけにしてうつ病になった。欠勤が続き、退職にまで追い込まれるような人もいる。こういう人たちは、主治医に「私が病気になったのは、私を飛ばした会社のせいだ。前の職場に戻らないと病気は治らない」「配置転換しないと病気が治らないと診断書に書いてください」と訴えることがある。公務員は2年から3年おき、普通の会社でも配置転換や転勤はよくあることである。このような処遇や些細な言動を、自分に対する批判や非難、場合によっては無視や拒否のように受け取って反撃するのである。こうした人たちも「かくあるべし」はかなり強いものを持っている。それは我々と一緒である。しかしもう一つ忘れてはならないことがある。「自己内省力」がない点である。ここを見極めないといけない。うまくいかない原因を他人に求めているのか、自分に求めているのか。原因を他人に求めて、相手を一方的に非難したり、強要したりするのは、もともと神経質性格の人ではない。「自己内省力」を持っているのかいないのかは、森田理論が役に立つかどうかの分かれ道である。うつ病の人で森田理論学習をされている人が多い。その中でも「自己内省力」を持っている人が森田理論学習適応者なのである。