映画・海外ドラマ・本 ひとこと言いた~い

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海外の作家が書いた歴史小説

April 28, 2022
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みなさん、こんばんは。池袋の名画座「新文芸坐」が4月15日にリニューアルオープンすることが発表されましたね。今日も西太后の伝記を紹介します。

西太后秘録 近代中国の創始者 下
Empress Dowager Cixi The Concubine Who Launched Modern China
ユン・チアン
講談社

日清戦争後半から清の滅亡までを描く。下巻では悪女イメージが全くの誹謗中傷によるものとは言えない事件が登場。浅田次郎さんの著作『珍妃の井戸』で描かれた珍妃殺害が西太后の命令で行われた事がいともあっさりと明かされる。また皇帝の死もあらかじめ計画されたものだった。

 一度戦争に負けてしまうと、たとえ君主がいようと、好きなように、とことんむしられてしまう。日本も経験したが、かつて大国だった中国が日本に敗北した後、西欧列強の好きなように領土を蹂躙される様はすさまじいを通り越してえげつない。西欧は日本の侵略主義を批判するが、いやいやロシアもドイツも強欲さにおいては負けていない。「そちらが取るならこちらも」とさして戦争に参加したわけでもないのに、文句の言えない相手から根こそぎ奪っていく。だから戦争に負けてはいけない。負ける戦争はしてはいけない、とつくづく思う。

 悪名高い纏足と、志こそ優れていても、今ではすっかり腐敗の巣と化した科挙を廃止するなど、なるほど本書に書いてあることが真実なら、女性ながら近代的な視点を持っていた西太后がいたからこそ、頼りない皇帝が続いても中国は命脈を保ったと言える。葬儀こそ荘厳かつ豪華であったが、中国建国にあたり、死後彼女の墓は暴かれてしまう。今の中国共産党が綺麗な行為ばかりしてきたわけではないのだ。



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最終更新日  April 28, 2022 12:00:20 AM
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April 27, 2022
みなさん、こんばんは。フランスでマクロン大統領が再選されましたね。
今日から2日間西太后の伝記を紹介します。

西太后秘録 近代中国の創始者 上
Empress Dowager Cixi The Concubine Who Launched Modern China
ユン・チアン
講談社

官僚の家に生まれ、父の失脚後は長女として一家を支えた慈禧。16歳で清朝第9代皇帝の咸豊帝の側室となり、やがて幼い息子が帝位を継ぐと後見として政治家の頭角を現していく。しかし、息子は若くして病のために崩御してしまう。妹の子供を養子に迎えた慈禧は、光緒帝となったその息子の後見として返り咲き、宮廷内の政治に手腕を発揮する。革新派の上級官僚の李鴻章や曾国藩らを重用し、ヨーロッパ技術を取り入れて近代化に邁進する慈禧を、やがて日清戦争での致命的な敗北が襲う!

 ライバルの側室の手足を切り取ったなど、すっかり世界三大悪女という評判が行き渡っている西太后。それでも日本では浅田次郎さんの『蒼穹の昴』の影響で少しは評価が高まっている方だ。中国は国を称えることは遠慮しないが、君臨した女性を称えることはしない。我が国と同じく未だ女性の為政者が誕生しておらず、根本的な男尊女卑思想を感じる。敵を排除していったというイメージとは裏腹に、正后とも関係は良好で、自分が不利と見ると敢えて争い事を起こさないように振る舞う理想の為政者である。

 彼女は守旧派で、改革派の光緒帝と対立したというのが通説だが、本書ではむしろ外国との貿易を推進し、優れた技術を取り入れることを奨励した改革派に属している。夫は薬に逃げ、息子もまたまともではない。指名した甥は教師の影響で古い考えから抜け出せない。悲劇は光緒帝が成人して親政を行い、ちょうど西太后が政治に関われなくなった時に日清戦争が起こってしまったことだ。この戦争はいわば日本のジャイアント・キリングだが、中国の様子を見ると「いやこれはさすがに負けるだろう」という体たらく。トップに情報が行き届かず追従ばかりを並べ立てる家臣を周囲に置くので、本当の戦況がわからない。たまりかねた西太后が乗り出した所で上巻幕。


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最終更新日  April 27, 2022 12:00:20 AM
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January 9, 2022
みなさん、こんばんは。
HIS子会社による給付金不正受給が最大6億8300万円余だそうです。
今日もヒラリー・マンテルの小説を紹介します。

鏡と光 下
The Mirror and The Light
ヒラリー・マンテル
早川書房

 下巻は1537年から1540年までを描く。ジェーン・シーモアが妊娠し、待望の嫡男を産むが亡くなってしまう。クロムウェルの分岐点があるとしたら、まずここだ。もし、ジェーン・シーモアがずっと生きていたならば、ヘンリーは慌てて次の妃を迎えることはなかった。史実では、クロムウェルが積極的に勧め次の妃となったアン・オブ・クレーヴスが、ハンス・ホルバインの肖像画とあまりにも違っていたことから王の不興を買い、クロムウェルはあっという間に転落するのだ。

 読み進めていたが、下巻半分以上読んでもまだ寵愛と信頼は変わらない。一体どうやって急転直下の状態に持っていくのだろう?と思っていたが、何のことはない。きっかけなど何でも良かった。

 ヘンリー8世の父リッチモンド伯ヘンリーから始まったチューダー朝は、“悪逆王”リチャード3世を倒して始まった。しかし、そもそも本当にリチャード3世が“悪逆”かはわからない。所詮は勝者側の言い分であり、“悪逆”をことさら強調せねばならぬほど、王権が脆弱だった証拠である。証明するには、できるだけ長く王統を繋げ、真実を覆い隠すことだ。そして繋げられるかどうかは、王一人にかかっていた。その前に彼はアン・ブーリンとの結婚を巡って教皇や旧教を信じる外国とも険悪になっており、味方は少ない。若さが失われれば、王の自信も揺らぐ。

 それに、もともと王は気紛れだった。今までは、気紛れな王をクロムウェルがうまくあやしてきた。しかし元の性格は所詮変わらない。
「なあ、クラム、余はときどきそのほうを非難することもある。貶すこともある。乱暴な口をきくこともある。それはみせかけなのだ。だから、連中はわれわれが仲違いをしていると考える。しかしよい点もある。国内外でそのほうがどんなことを耳にしようと、余の信頼はぐらつかない」

と何度甘い言葉を囁いていても、一旦気が変われば、その人の全てが嫌いになり信じられなくなる。機を見るに敏な政敵がたきつければ、これ幸いと乗っかるだけだ。そして不幸な事に、甘い言葉に馴らされていたクロムウェルは、ちょうど不穏な兆候が次々と出てきても、見過ごしてしまうターンに入っていた。感覚が鈍くなっていくのか、それとも王の移り気も、自分だけは例外だと思っていたのか。

 何度も刑場で後ろを振り返り抗弁するアン・ブーリンを見ていたクロムウェルが、身分を剥奪され、尋問を受け、財産を奪われ、たった一人で死んでゆく。しかし彼の刑死を見ていた貴族達の何人かもまた、数年後に同じ運命を辿る。我々はいつも、ダモクレスの剣の下にいる他人を見る。しかしその他人とは、鏡に映った自分かもしれないのだ。



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最終更新日  January 9, 2022 12:00:19 AM
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January 8, 2022
みなさん、こんばんは。
5日に開催予定だった、第97回天皇杯全日本バスケットボール選手権大会の準々決勝、川崎ブレイブサンダースvs.アルバルク東京と琉球ゴールデンキングスvs.信州ブレイブウォリアーズの試合がアルバルク東京と琉球ゴールデンキングスに、新型コロナ感染症陽性と判定された選手が出たため中止となりました。広まってますね。
今日から2日間ヒラリー・マンテルの小説を紹介します。

鏡と光 上
The Mirror and The Light
ヒラリー・マンテル
早川書房

物語はアン・ブーリンが処刑された前作ラスト直後から始まる。前作より間を置かずに出版されたならともかく、八年後の刊行だ。「アンが亡くなってX年」という始まりでもよかったはずだ。しかし一つ考えられるのは、アンが処刑されてからクロムウェルが同じ断頭台の露と消えるまで、わずか四年しかない。スパンを置いてしまうと、それだけ彼の生涯が描けないのだ。

 よって“彼”たるクロムウェルも含めて皆ざわざわしている。大使シャピュイはこれでヘンリー八世が教皇のもとへ戻ってきてくれるのかと期待。何よりも当の王が
「余は正義をくだしたのか?」
とクロムウェルに尋ねるほど落ち着かない。次の相手と結婚するためではなく、不貞を働いた女性を罰した正義と敢えて言うことで、アン・ブーリンの処刑を自分の中で綺麗事に収めてしまおうとする。これから何人も妻をとっかえひっかえする青髭の異名も持つ王なのにこの不安は何だと言いたくなるが、少なくともこの時点では前妻キャサリンは処刑したわけではなく病死であり、妻だった女性を処刑したのは初めてだ。
聞かれたクロムウェルも正義だったという確証がない。
「正義?その問いかけの大きさが、腕に置かれた手のように彼の思考を停止させる。」

答えが出なかったクロムウェルは聞き方を変える。
「国のために最善のことをしたか?した。」
そして王に言う。
「すんだことです」
それでも王の気持ちは収まらない。
「しかし、どうして“すんだこと”と言えるのだ?まるで罪などなかったかのように?悔悛などなかったかのように?」


 ウルジー枢機卿、トマス・モア大法官、アン・ブーリン。“彼”の前に立ちはだかる壁は次々と消えていく。これでクロムウェルが“皆は失敗したが自分は轍を踏まない”と自信満々であれば、歴史を知る読者は「ほらみたことか」と言い放つことができる。ところが、そうではない。

 王もかつての王ではなく“自分は(が)息子を作れないのでは”という不安と、双肩に担ったチューダー朝存続の責任のために「取り扱い注意」人物となっている。重々承知しているクロムウェルは、LINEのメモよろしく王についての覚書を書きまくっている。これほど細心の注意を払ったとしても、尚逃れ得ぬ運命に向かってゆくトマス・クロムウェルが、エモくてたまらない。


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最終更新日  January 8, 2022 12:00:21 AM
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March 21, 2021
みなさん、こんばんは。昨日の地震怖かったですね。
初代ローマ皇帝を主役に戴いた小説を紹介します。

アウグストゥス
Augustus
ジョン・ウィリアムズ
作品社

アウグストゥスとは、実は本名ではない。本名はガイウス・ユリウス・カエサル・オクタウィアヌスという、えらく長いものだ。しかし歴史上でアウグストゥスといえば彼しかいない。アウグストゥスとは尊厳者という意味だ。となれば、アウグストゥスとは、オクタウィアヌスでもあり、オクタウィアヌスでもない、独り歩きした名称になる。だからこそ、本書のタイトルにふさわしい。ここに書かれるのは、今まで誰も知らなかった男だからだ。

 とはいえ、少しは知っている。歴史は悉く勝者の記録であるから、負けることのなかった彼の生涯はローマの歴史そのものだ。養父カエサルを継いで地中海世界を統一し、ローマ帝国初代に皇帝となった。世界史に名を刻む英傑として散々語られた彼を主役に据えるのは、敗者に対してフェアではないとさえ思える。だが、どうやら彼は“勝者“ではなさそうだ。

 本書は三章構成である。第一章は目立たない若者が先駆者の陥った罠をすり抜け第一人者になる過程を側面から追った成功の軌跡になる。本書のベースとなるものだ。そしてこのベースを揺るがしていくのが、次章からだ。公的には成功者だったが、私的にはただ一人の娘ユリアしかいなかったため、皇統を継ぐ使命を課せられた彼女は何度も結婚させられる。彼女の意思は介在しない。歴史的にはオクタヴィアヌスの定めた法によって裁かれる不肖の娘であるが、本書での彼女は、男に比べてあまりに不自由な生を生きる犠牲者であり、かつフェミニストの視点も持つ現代風味付けがなされている。

 ここで揺らいだオクタヴィアヌス=“歴史の勝者”像は、満を持して登場した第三章によって突き崩される。語り手はオクタヴィアヌス本人だから、崩すのを阻む者はいない。かつての友が次々に亡くなり、時には友を葬り、唯一の肉親もまた遠く離れた島にいる。同じ地平に立ってくれる者は誰もいない。第一人者に与えられるのは、顔を一人一人見分けられない民衆からの尊崇の念と、果てしなく続く孤独である。この両方を引き受けても尚、何事かを成そうとする者だけが、時代を越えた存在になれる。さて、そのような存在になれた者は、歴史が始まって以来何人いるだろうか。


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最終更新日  March 21, 2021 12:00:20 AM
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February 21, 2021
みなさん、こんばんは。菅総理長男との接待問題で総務省の秋本局長ら総務省幹部2人が異動へ 事実上の更迭だとか。やれやれ臭いものにふたですね。
実在の首きり人の伝記を紹介します。

サンソン回想録:フランス革命を生きた死刑執行人の物語
Les Memoirs de Sanson:Memoires pour servir a l’histoire de la Revolution francaise
オノレ・ド・バルザック
訳安達正勝
国書刊行会

『死刑執行人サンソン ―国王ルイ十六世の首を刎ねた男』を著した安達正勝が訳を担当する本書は、文豪バルザックが著したサンソン家の四代目、シャルル・アンリ・サンソンの回想録。漫画『イノサン』で、日本での知名度を一気に上げた彼の別名は、ムッシュ―・ド・パリと言う。

 冒頭のエピソードではマドレーヌ寺院を歩く“ちび伍長”ことナポレオンの後を尾けていたシャルルがマムルーク兵に誰何される。最初はナポレオンと部下に押され気味だったシャルルだが、素性を明かすが早いか彼等が驚きと恐怖に満ちた表情を浮かべる。“後に皇帝となるナポレオンにも恐れられていた男”としてシャルルを描く事で、当時の死刑執行人がどのように見られていたかを読者に知らしめる。

 何度も述べられるのは、死刑執行人という立場の理不尽さだ。
「普通の市民になることができず、町では敵対的扱いを受ける。立法者は彼らの社会的境遇を改善しようとするが、偏見が彼らを突き落とす。理性は一つの声しか持たないが、偏見は千の声を持っていて、こちらのほうが影響力が大きい。大多数の者は闇であり、少数の者だけが光である。」
「私は裁判所によって下される犯罪判決の執行人であるが裁判所は十分かつ長い時間をかけて自分達の信条と照らし合わせた後にしか判決を下さないとされている。その私が汚辱に印づけられ、一方、拙速で軽率ないしは横暴なことも多い判決を遂行するために大勢の人間を殺めた兵士たちのほうは、軍隊のあらゆる階級に昇進し、一般のあらゆる役職に就き、君主や国家によって与えられるあらゆる名誉を受けるのが適切とされているのは、まったくもって奇妙なことではないだろうか?」

死刑執行が法で定められた刑罰というならば、なぜ民衆はまるでスポーツ観戦でもするかのように処刑場に群がるのか。刑を決めた裁判官や、戦争で敵兵を倒した兵士には尊敬の眼差しを送られるのに、執行する者は忌み嫌われるのか。皆が嫌がる仕事であるが故に、高額の報酬が得られるが、しかし一たび職業を明かすと、自由な結婚もままならない。文字通り職業に縛られた一生となる。その悲劇的な人生は『アンリ・サンソンの手稿』で紹介される。

 イタリアの死刑執行人を描いた三章に亘る物語もまた、職務を遂行しているだけなのに死刑執行人が恨まれる姿が描かれる。それほど忌避する思いがあるならば、いっそ死刑を止めれば良いのに、なぜ死刑はなくならないのか。

「もし犯罪判決の執行人が忌み嫌われるならば、もし彼がすべての人間の中でだれにとってもいちばん忌まわしく嘆かわしい人間であるのならば、もし彼の同胞が身内の中にしか存在しないならば、もし世論が彼を社会関係の外に放逐するのならば、現今の刑罰制度はどうにも正当化され得ないということである。」
 シャルルの言葉を借りたバルザックの主張は、現在でも十分頷ける内容である。



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最終更新日  February 21, 2021 12:00:19 AM
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August 4, 2020
みなさん、こんばんは。Jリーガーにも感染者が出てしまいましたね。
ケン・フォレット作品も今日が最後です。

火の柱(下)
A Column of Fire
ケン・フォレット
扶桑社ミステリー文庫

 上巻表紙のエリザベス王女(当時)と対をなす、下巻表紙はスコットランド女王メアリー。フランスで名高い聖バルテルミーの虐殺以降、カトリック勢力による支配を強めたフランスは、スペインと組んでイングランド侵攻の計画を練る。その鍵となるのは、幽閉されている前スコットランド女王メアリー・ステュアートの存在。ネッドは、女王エリザベスを守るため奔走するが、スペイン無敵艦隊の脅威は日々高まる。

 スペインの無敵艦隊アルマダとの決戦には船乗り、メアリーの最期には付き従っていた親友、ガイ・フォークス・デイの元になった陰謀にはネッドの兄ロロなどこれまで配されてきた架空の人物視点で史実が描かれる。最も皆に知られていて、歴史の教科書に登場する出来事が多いので、「歴史ものはどうも」と思われる読者も馴染みやすいと思われる。

 主役カップルのネッドとマージェリーも、苦難を乗り越えてようやく結ばれる。そのためにネッドの前妻シルヴィーがあんな事になるのは残念だが、王道を護るために仕方がないのか。善人が報われ、悪人がとことん報いを受ける大団円に、今まで不満を溜めていた読者も大満足だろう。海洋小説、陰謀飛び交う政治にメインの主役の恋愛と、複雑なストーリーをまとめ上げるケン・フォレットの剛腕。


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最終更新日  August 4, 2020 12:00:19 AM
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August 3, 2020
みなさん、こんばんは。療養ホテルが不足しているとか。GOTOトラベルをやるからですよ。
今日も引き続きケン・フォレット作品を紹介します。

火の柱(中)
A Column of Fire
ケン・フォレット
扶桑社ミステリー文庫

原題火の柱=A Column of Fireは、エジプトで虐げられていた民がモーゼにより脱出した際に、夜は神が火の柱となって人々を見守った故事に基づく。宗教は人々の心の拠り所として、本来権力とは無縁のはずだった。しかし権力者が人々にとっての宗教の影響力に気づいた時、宗教界もまた一つの権力として無視できない存在になる。最大の権力者である国王が宗教のバックについたらどうなるかが本編で描かれる。

 本作では善と悪の狭間で苦悩する人はあまり登場せず、悪役は最後まで悔い改めることはなく、わかりやすい。とことん極めた悪人を、善人(といっても揺らぎはする)が倒すカタルシスを楽しむ構造である。しかし簡単に悪を倒させてはくれない。というか、簡単に倒れると話が終わっちゃう!

 中巻は悪役の一人、ピエールに父親を殺されたシルヴィの再起から始まる。ギーズ家を名乗るためにギーズ家の御曹司が妊娠させた女性と偽りの結婚をし、生まれた赤ん坊をすぐ修道院に捨てに行こうとするなど、悪役ぶり全開だ。彼の悪事はこれに留まらないので、たとえどんな酷い目にあっても良心の呵責を感じることがなさそうだ。

もう一人の悪役は主人公カップルを引き裂いたヒロイン、ネリーの兄ロロだ。ネリーの恋人ネッドと幼い頃から反目し、ひょんな事からもう一人の悪役ピエールと結びつく。

 良いイメージのないカトリーヌ・ド・メディシスは、プロテスタント排除に向って先鋭化するメアリーの伯父達を制止するなど、理性的なキャラクターとして描かれている。エリザベスも立場上プロテスタントを庇護しているが、だからといってカトリックを敵視しているわけではない。女性の為政者に、融和を望むキャラクターが多いのが特徴だ。

 さて次は下巻。メアリーとエリザベスの対決は皆周知の事実だから別として、出会っては離れ離れになる(これもお約束!)主役カップルはどうなるのか。


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最終更新日  August 3, 2020 12:00:20 AM
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August 2, 2020
みなさん、こんばんは。8月になりましたね。
またアベノマスク配るらしいですよ。何考えてるんでしょうね。

今日から3日間ケン・フォレットの作品を紹介します。

火の柱(上)
A Column of Fire
ケン・フォレット
扶桑社ミステリー文庫

 冒頭は名乗らない人物の独白である。何者かは途中でわかるので、実際の所なぜこの独白を入れたのか不明だ。なくてもいいのでは。入れるのなら、できるならば最後まで語り手を謎にしておくべきだ。

 ドラマにもなった『大聖堂』の続編。前作の主人公トム・ビルダーやジャックは名前だけ登場。本編の表紙は若きエリザベス。まだ巨大なレースの襟をクジャクみたいに首にまとわない。それはそうだろう。まだ彼女は、女王になれるかどうか定かでなかった。彼女の異母姉-ブラッディ・メアリーという恐ろしい綽名のヘンリー8世の娘メアリーが女王で、良人はスペイン国王。ばりばりのカソリックだ。同じ父の血を引くというだけで辛うじて生き延びてきたエリザベスだが、未だ子供がいない女王の後継者として常に危険視されており、カソリック以外を認めない女王の方針に反対する民衆の希望の星でもあった。

最初の方は彼女のライバル、スコットランド女王メアリーの方が圧倒的優勢だ。それなのに立場が逆転していくのは、周りについた者の差か。エリザベスには既に能臣ウィリアム・セシルがついているのに、メアリーにはいいブレインがいない。生まれついての女王で、フランス王太子の妃、アンリ4世の急逝後王妃となる。背も高くて美人となれば、ちやほやする者達に事欠かない。カトリーヌ・ド・メディチや叔父のギーズ公のパワーゲームを近くで見ていたのに、学ぼうとする姿勢が見られないのは、決められた道がその通り進んでいくと信じて疑わないからだ。メアリーを責めるわけにはいかない。その頃の王族なんて大概がそんなものだ。死の恐怖に晒されていたエリザベスが特殊と言える。

 将来的には二人がトップに立つイギリスとフランスを巡る宗教絡みの争いに巻き込まれるのが主役カップルだ。マージェリーの実家フィッツジェラルド家はばりばりの旧教で、一方のネッドは父亡き後母が商売をして稼いでいる進歩的な家柄で宗教にも寛容。マージェリーの兄ロロはネッドを敵視して何かと衝突する。この主役カップルだけではフランスの事情が書けないので、架空の人物としてメアリーの幼馴染アリソンと、フランスでギーズ家に取り入ろうとする若者ピエールが配されている。歴史上の人物と架空の人物が程よくブレンドされながら物語が展開する群像劇。

 キングズブリッジという架空の街以外の前作との共通点は
1.主人公とヒロインはなかなか結ばれない。すぐ結ばれてしまうと波乱の人生にならずドラマにならないから!?
2.主役の周囲には歴史上の有名人が登場し、彼等を通じて有名人の心境や意外な面を浮き彫りにする。
3.ヒロインは必ず望まぬ相手に乱暴される。
などである。

3はどうかと思うが、苦しみを乗り越える女性の逞しさを表現したいのか。上巻ではメアリー女王が亡くなりイギリスはエリザベス女王の時代へ。一方のフランスもアンリ4世が亡くなりメアリーの夫フランソワの時代へ。これから歴史的イベントが山と待っていてわくわく。


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最終更新日  August 2, 2020 12:00:19 AM
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October 28, 2018
みなさん、こんばんは。
イタリアルネサンスといえば、歴史で一度は習ったことがあると思います。
その時代を生きたチェーザレ・ボルジアをご存知ですか?
知る人ぞ知る存在ですが、知っている人の中では織田信長みたいな存在で人気が高いのです。
モームも彼についての作品を書いています。

昔も今も
Then And Now
サマセット・モーム 
ちくま文庫

今でこそ惣領冬実さんの未だ完結していない連載『チェーザレ』があるが、日本で一気にチェーザレ・ボルジアの知名度が上がったのは、塩野七生さんの『チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷』とフランソワーズ・サガンの『ボルジア家の黄金の血』あたりか。毒殺、謀略なんでもござれの一族が何とカソリックの総本山のトップの座についた、生涯がまるでドラマのような(ドラマになったが)イタリアの一族、ボルジア家の長男坊。

 サマセット・モームも彼に魅せられた一人のようだ。モームは書きたい人物その人を語り手にしない。なぜならチェーザレをほめちぎりたいのに、本人がほめまくっていたらただの自慢しいだからだ。そこで、周辺の人物からチェーザレを描く『月と六ペンス』と同じ方式を採った。今回の語り手はニッコロ・マキアヴェリ。後世の我々からすれば、マキアヴェリ自体有名人なのだが、当時の知名度を比べれば、法王の庶子ながら公爵で軍事責任者でもあるチェーザレの方が断然上だ。物語は、無理難題を言いつけられたフィレンツェが、交渉権のない使節としてマキアヴェリを派遣するところから始まる。フィレンツェは共和制で、イタリア統一を図るチェーザレとは水と油。
「人間の性はいつの世も同じであり、同じ情熱をもっているから、状況が同じならば、同じ原因は同じ結果をみちびく。したがって、古代ローマ人がある状況におかれて、どのように対処したか、ということを心に銘記するならば、後代の人間とても、すこしは思慮分別をもって行動できるにちがいない」
と、古代ローマに憧れているマキアヴェリは、自分の知力をもってすれば、チェーザレを転がすことなど簡単だと思っている。余裕のマキアヴェリは人妻に懸想してイタリア男らしく恋のアプローチも欠かさない。

 ところがしょせん机上の空論、操っていると思い込んでいたマキアヴェリこそ、チェーザレの手の平の上で転がされていたにすぎなかった。ネット上では「マキアヴェリがチェーザレにぴーぴー泣かされる話」と書かれていたが、そこまでは。マキアヴェリは次第にチェーザレに魅了され、そして
「人間界では、ひたすら権力の獲得に力をつくし、それを維持することが必要なんだ。そのために用いられた手段は、もしうまくいったら、世の人々がすべて高潔であると見なし、口をそろえて賞賛する。」
と後のマキャベリズムを口にする。後世のモームが書いたチェーザレは
「共和国体制においては、能力ある者はつねに疑いの眼をもって見られる。だから要職につける者は、同僚の嫉妬の対象にならないぼんくらにかぎる。それが民主主義国家というもんだよ。能力抜群の人物ではなく、誰にも、警戒も心配もされないお人好しが統治するんだ。」
などとのちの民主主義国家の弱点まで指摘して、聡明な事この上ない。

 しかし向かう所敵なしに見えたチェーザレにも破滅が訪れるのは史実通り。「法王が死んでも後処理は全て考え済み」と豪語したチェーザレもまた、シミュレーション通りの未来を描いたマキアヴェリと五十歩百歩だった。そう、昔も今も、英雄も凡人も天才も、自分だけはと思いつつ、道端の石ころにつまずくのだ。初めてつまずいたような顔をして。何人もがつまずいてきたことなど知らぬような顔をして。


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最終更新日  October 31, 2018 12:46:49 AM
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