映画・海外ドラマ・本 ひとこと言いた~い

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ローズマリー・サトクリフ

February 5, 2020
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みなさん、こんばんは。恵方巻食べましたか?
今日もサトクリフ作品を紹介します。

銀の枝
The Silver Branch
ローズマリー・サトクリフ

 キリストの死後200年が過ぎて、ローマ帝国は壊れていた。
ローマ本国と海を隔てたブリテンに「われわれの小さな皇帝」と呼ばれるもう一人の皇帝が存在し、統治する状況を、ローマ最盛期と比べるならば。辺境に生きるブリテン皇帝や、地位もなき人々が、最もその事を察知していた。その中で彼等は「ローマ」ではなく「ブリテン」が生き残る術を探っていた。ブリテンを生かそうとする人達は、反対勢力に次々と殺される。
ブリテン皇帝も、ブリテンからローマに人を逃がしていたユーモラスな風貌の男ポウリヌスも。

 同著者の「第九軍団のワシ」の主人公アクイラの子孫である軍人フラビウスと、医者である彼のいとこジャスティン。三部作の「ともしびをかかげて」「第九軍団のワシ」では軍人が
主人公だったのに、今回医者のジャスティンがメインに置かれている。どもりがちで、自信なげなしゃべり方になってしまうジャスティン。軍人にならなかった事で父に負い目を感じていた弱々しいジャスティンが、第二次大戦下のフランス・レジスタンス活動を思わせる地下組織の頭領、され、真の勇気とは何かを学んでゆく。医師として働き、またブリテンからローマに人を逃がす仕事と、「ブリテンを生かす」ために情報をローマに送る仕事を引き継ぐうち、
自信を得、責任感を身につけてゆく。歴史に名を残すことのないジャスティンと、ローマの庇護下にあった「ブリテン」が自立を目指して闘っていく、いわば国と個人との
成長過程をリンクさせた作品である。


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最終更新日  February 5, 2020 12:00:17 AM
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February 4, 2020
みなさん、こんばんは。新型肺炎は非常事態宣言が出ましたね。
今日もサトクリフ作品を紹介します。

太陽の戦士
Warrior Scarlet
サトクリフの歴史ロマン 岩波の愛蔵版26
ローズマリサトクリフ
猪熊葉子

サトクリフ作品は概して男性は女性の扱い方がヘタである。

サトクリフの作品中、最も甘えさせてもらってない主人公ではないだろう
かと思う。サトクリフ自身身体が不自由だった事を解説で読んで知っている
ので、彼女が自分を投影して描いた部分が多いのではと感じるからだ。
彼女の作品に出てくる「異なる階級同志の友情」も本作では影を潜め、
クローズアップされ続けるのはドレム一人。
たった一人で、自分の望むものを手に入れてゆかなければならない状況
にドレムは何度も追いやられる。時代が青銅時代に設定されていることも、
偶然ではないだろう。
古代の人々は、中世やローマ帝国の時代よりもはるかに多く、個人の能力
で自らの生命や財産を守らなければならない場面に遭遇したことは、想像に
難くない。そして、災難や事故は、自分がハンデを持った存在だから
といって避けて通ってくれるような親切さを持ち合わせていないし、
そんな状況では、誰かが助けてくれることを当てにはできないのが
現実だ。
ドレムは何度も悔しい思いをする。
しかし、他人の手を当てにするより、まず自分の手で勝ち取って初めて、
皆の称賛を得ることができる事を知っている
ドレムはくじけない。たった15才の少年が、ここまで強いとは。 
同年代の子供達ならずとも、その精神の強靱さには頭が下がる。
共に彼が、戦士の証である「緋の衣」を身につけられるよう、祈らずには
いられない。


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最終更新日  February 4, 2020 12:00:25 AM
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February 3, 2020
みなさん、こんばんは。最近地震が多くて心配です。
今日もサトクリフ作品を紹介します。

落日の剣上下 王の苦悩と悲劇 真実のアーサー王の物語
Sword at Sunset
ローズマリ・サトクリフ
原書房

 人生は自分の手でつかみ取るもの。人から与えられるものではない。
このメッセージを絶えず送り続けたサトクリフが、アーサーを、なぜ主人公にしようと思ったのか?アーサーは、伝説の剣を岩から抜き取ったことで、周りから王と認められた、いわば与えられた人生を生きた人なのに。そんな疑問を抱いた私の前に現れたのは、熊を意味するアーサーのケルト名、アルトスという名を持つ若き武将。
「この人は?」
驚く私に、サトクリフは言う。
「彼こそが真実のアーサー。」と。

 そう、ここに出てくるアーサー、いやアルトスは、長いマントを羽織り、
宮廷の奥深くに鎮座している穏やかな王ではない。
いつも戦の最前線で動き回っているエネルギッシュな男。
彼のためにならいつでも命を投げ出す男達に囲まれている男。
キリスト教的要素の強い聖杯の部分をごっそり抜いた分だけ、
サトクリフの本領発揮である戦場描写が多くなる。
楯に当たる剣の音。ずぶ、と剣が身体に刺さる音。
馬のいななき。読んでいるだけで、自分も戦場にいるみたいな気分に。
す、と風が。誰か通った?え?アルトス?うわぁ、かっこいい!
なあんて。
これじゃあサトクリフ・オリジナルで『アーサー王シリーズ』を書いていた時
さぞやお尻がムズムズした事でしょうね、レイディ・サトクリフ?

彼の伴侶たるギネヴィア役も、かなりイメージが違う。
深窓のお姫様では、もちろんない。勝ち気で奔放。長い冬で食料がなくなり、
救助を求めに行く前夜のアルトスのふところに、忍び込んでくる大胆
な娘、グレンフマラがその人。例えるならば、
『風と共に去りぬ』のレットとスカーレット、『嵐が丘』の
キャシーとヒースクリフのようなカップル。そしてランスロット
の役回りであるアルトスの親友、ベドウィルも、『アーサー王物語』
でいえば、トリスタンに近いイメージ。『風と共に去りぬ』で
いえばアシュレイ。アルトスが武張っている分、バランスを取ったのだろう。
アーサーの息子にして敵であるモルドレッド。本作での彼は、
メドラウトという名前である。
事もあろうに、アルトスとグレンフマラの愛児の葬式に初登場、という
今後の運命を予感させるような不吉な登場をする。
野望の大きさ、したたかさにおいて、モルドレッドに優る所多し。
そしてまた、『ともしびをかかげて』の懐かしい人々も友情出演で顔を出す。

そういえば、『ともしびをかかげて』のアンブロシウスも、本作では
やがて訪れる死を待たないで、自ら大鹿に向ってゆく。
長い冬を耐え忍ぶ中で、自らの命を犠牲にして
救助を求めていくレヴィンも、自らの伴侶を決めたグレンフマラも、
運命に立ち向かい、自らの手で自分の人生をつかみ取ろうとする。
アルトスと同じように。
大筋は『アーサー王伝説』と変わらないのに、まるっきり印象が違う
のは、もしかしたら、そんな力強く前進する人々の生きざまと
関係があるのかもしれない。
語り部サトクリフの力量のほどを、再認識させられた一冊である。


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最終更新日  February 3, 2020 12:00:29 AM
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February 2, 2020
みなさん、こんばんは。ついに湖北省の人入国拒否になりましたね。でも遅いような。
今日もサトクリフ作品を紹介します。

第九軍団のワシ (岩波の愛蔵版 29)
The Eagle of the Ninth
ローズマリー・サトクリフ
岩波書店

主人公マーカス・フラビウス・アクイラは「ともしびをかかげて」のアクイラの先祖。マーカスの父は第九ヒスパナ軍団の第一大隊長で、悪名高い軍団として有名だったが、最初に指揮した軍団として父はこの軍団を立て直そうと決意していた。そして北方氏族の反乱に赴き、軍団自体が姿を消した。母も死に、マーカスは叔父夫妻の元で育てられる。もともと軍人肌のマーカスは官吏の叔父とうまがあわず、18才で百人隊長になると同時に叔父の家を出る。マーカスが初の大役として、大隊司令官の筆頭百人隊長の任務についていた地で反乱が起き、彼は足を負傷し、カレバの地に住むアクイラ叔父の元に身を寄せた。マーカスは奴隷エスカを買い取り、狼の子をチビと名付けて飼うことにする。隣家に住むコティアという少女はイケニ族だったが、叔母からはローマ風のカミラという名で呼ばれていた。

足が元通りにならないマーカスには軍人としての未来はない。絶望したマーカスはローマ帝国の象徴である「第九軍団のワシ」を探したいという司令官の言葉を聞き、志願する。消えた父の行方を探す目的とも一致したからだ。奴隷の身でなくなったエスカも志願し、二人がローマ帝国の象徴である「第九軍団のワシ」を奪い返すためにあえて挑戦した困難な冒険の旅。負傷し、一切の夢と希望を断たれた青年とその友とがどのように心の苦しみを乗り越え再び前途に生きる意味を見い出すかを語る。

たいていの場合聞くことができる父の最期の言葉を、マーカスは聞くことができなかった。だから彼は、父と同じ軍人という職業を選ぶ事で生前の彼を知ろうとした。ところが、それも戦闘による負傷でだめになる。ワシ捜索の話は、この先何をすればいいかわからなかったマーカスにとって、やっと見い出した光明だった。これならば、軍人とならなくても、父の生きた道を辿れるではないか!

なぜここまで彼の気持ちを言い切れるか?
私もまた、父の最期の言葉を聞き損ねた一人であるからだ。
私は、幼くして父を亡くし、最期の言葉を理解できなかった。
成長し、父の死んだ年令に近付くにつれ、父を知りたいという思いは強くなる一方だった。最期の言葉だけを知りたかったわけではない。彼の性格、考え方をもっと知りたかったのだ。うまく言えないが、そうしないと、父を乗り越え、先に行けない気がした。

マーカスにとって、「第九軍団のワシ」は、自分が仕えるローマ帝国の象徴であり、亡き父の軍団の形見の品である以上に、目で見ることのできる、「越えることのできた父」ではなかったのか?「ワシ」を得るために取った行動、知り合った人々、奴隷だったエスカと
の間に育まれる友情によって自身も成長した事を確認でき、やっとマーカスは父と同じ人生から解放され、自分独自の生き方を選択する事ができた。
 
誰もが自分の「第九軍団のワシ」を持っている。
そして、それは誇らし気に見せびらかすものではなく、山中に埋められるのが妥当であるかもしれない。



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最終更新日  February 2, 2020 12:00:16 AM
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February 1, 2020
みなさん、こんばんは。二月になりましたね。新型肺炎の蔓延が心配です。
今日からイギリスの作家ローズマリー・サトクリフの作品を紹介します。

辺境のオオカミ
Frontier Wolf
ローズマリー・サトクリフ
岩波少年文庫

​ ローマの百人隊長アレクシオスは反対を押し切って撤退したため、多くの部下を失う。北ブリテン最高司令官の叔父マリウスの配慮により辺境の地、カステッルムの辺境守備隊の指揮官に左遷されたアレクシオスは、辺境のオオカミと呼ばれる部下達と出逢う。皇帝はアレクシオスに選択肢を示す。皇帝の護衛として士官候補生としてのキャリアを摘むか、アタコッティの捕虜達からなる一団をりっぱな軍団に育てるか。アレクシオスは彼等を辺境のオオカミに育てる事を選択。ヒラリオンも彼に従うと表明する。

 アレクシオスは「郷に入っては郷に従え」のタイプ
なので、仲間達とはぎくしゃくしつつも、最終的にはうまくやって
いける資質を持っているだろうことは最初から窺える。何せ、
「郷に入っては郷に従え」の英語訳は「When in Rome,do as the Romans do.」
なのだから。その諺を逆にすれば、アレクシオスの生き方になる。
塩野七生さんの「ローマ人の物語9 賢帝の世紀」にはこの物語に
登場するハドリアヌスの防壁の事が書かれているので、この本を読んで
その成り立ちなり知りたい場合は参考にどうぞ。でも、事前にローマの
なにがしかを勉強しておかなくてもこの物語は十分楽しめる
ので安心を。
ぶっちゃけて言えば、苦労知らずの坊ちゃん、アレクシオスが、
現場に放り込まれ、荒くれ者達を馴らして(または自分が馴らされて)
人間的に成長を遂げていく物語だからだ。
またもや塩野さんの著作「ローマ人の物語10」ではローマ人がいかに
人や設備のインフラをうまく行ったかについて述べられているが、
結果は「うまくいった」にせよ、そこに辿りつくまでには、アレクシオス
のような数え切れないローマ人達の苦労としいたげられた非ローマの人々の哀しみもあっただろう
歴史書の中では1行か2行でしか綴られないだろう出来事、
343年スコットランド低地地方で起こった闘争
を元に描かれたフィクション。
アレクシオスとヴォダディニ族の族長クーノリクス。
かつては民族の違いを越えて心を通いあわせる親友だったのに、
運命の皮肉でそれぞれの抱えるもののために戦わなくてはならなく
なる。とても残念だ。
敵同士ながら相手をどこかで認めあっているという図式は「ケルトの白馬」
でも描かれた。
彼等の祭りの様子、戦いの様子を描いた文章はテンポも
よく、まるで目の前で行われているかのように頭の中に浮かんでくる。

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最終更新日  February 1, 2020 12:00:21 AM
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February 28, 2018
みなさん、こんばんは。
羽生君の外国人記者クラブの会見を見ました。
堂々としていてさすがですね。

さて、本日はローズマリー・サトクリフの作品を紹介します。

イルカの家
The Armourer's House
ローズマリ・サトクリフ

 サトクリフといえば、やはり『第九軍団のワシ』『銀の枝』『ともしびをかかげて』が有名である。ローマン・ブリテン三部作と呼ばれるこれらの作品の主人公達は、イルカの紋章がついた指輪を次世代に渡してゆく。だから、タイトルに「イルカ」が使われている本作は、てっきりその指輪を受け継いだ子孫が、活躍する物語だと思っていた。

 なのに今回は十六世紀のイギリスが舞台で、しかも主人公はタムシンという女の子。これでは冒険譚はあり得まい。

 そもそも男の子と女の子は、日々の生活からして違うのだ。
両親を亡くしたタムシンは、ロンドンで鎧師をしているギディアン叔父一家と暮らしている。従兄ジャイルズは朝食を済ませると、セント・ポール学校に行き、タムシンと従姉のベアトリクスは家でデボラ叔母に勉強を習う。クラヴィコードの練習があり、最後に刺繍をしながら聖書を読んでもらう。それが終わると買い物。
普段の生活が違うのだから、しぜん、男の子と女の子では、「なれるもの=将来」が違ってくる。
自分の船を持つタムシンの叔父・マーティンが、彼女に言う通りだ。
「きみが男の子だったら、(略)きみをロンドンにやろうなんていう変わったことを思いつかなかっただろうよ。きみはぼくの家に住んで、大人になったら、<冒険のよろこび号>の船長になれたんだ。」

しかし男性であっても女性であっても、「なれるもの」に枷はかけられても、「なりたいもの」を望む心には、誰も歯止めをかけられない。一緒に夢を育ててゆける仲間と出会えたなら、尚更だ。衣食住の面倒を見てもらいながらも、タムシンは、「自分は家族の一人ではない。」と疎外感を感じていた。しかし、意外な所で夢を共有できる相手と出会って、お互いに逞しくなってゆく。
今までのサトクリフ作品の男性主人公が、同年代の少年達と友情を育みながら、成長していったのと同じようにだ。そして、これもまたサトクリフ作品の特徴の一つだが、歴史上の人物との出会いも果たす。ヘンリー八世と王妃アン・ブリンがグリニッジからロンドンへ、川を昇ってくる所を見る事ができたタムシンは、誰も好意的な目で見なかった王妃に対して、「王妃さま、ばんざい!」と声をかける。他が「悪い王妃」と言おうと、自分の目と心を信じるタムシンは、もう孤独と自信のなさに怯えている、昔の彼女ではない。そこには、自分の強い意志によって、無謀に思われる望みに向かって一歩一歩近づいていった、歴代サトクリフ主人公に勝るとも劣らない、凛としたヒロインがいた。イルカの指輪に託された冒険への飽くなき思いは、時代を越えて、ちゃんと受け継がれていたのである。



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最終更新日  February 28, 2018 12:01:10 AM
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April 1, 2017
みなさん、こんばんは。一年の四分の一が終わってしまいましたね。
ところでみなさん、愛って怖いところもありますよね。
たとえばこんな話の場合は…。

トリスタンとイズー
Tristan and Iseult
ローズマリ・サトクリフ
沖積舎

コーンウォール王マルクの妹と、ロシアンの王リヴァリンとの間に子供が生まれた。しかし母親がその子を生んですぐ死んだため、父親はその子を「悲しみの子=トリスタン」と名付けた。16歳になったトリスタンは、父王に旅に出る許可を求めるのだったが…。

本作は、『アーサー王物語』の一逸話として語られる事の多い『トリスタンとイゾルデ』の悲恋を、全く独立した形で描いているので、トリスタンを主人公にした貴種流離譚のイメージが強くなっている。中世ものというと、韻を踏んだ言葉で愛を語るなど、近寄りにくそうな印象が強いが、どうしてどうして、既知の作品との共通点は多い。
まず、トリスタンが最初にアイルランドの王族モロルトと対決するシーン。二人は小島で一対一の果たし合いを行うわけだが、その際後からやってきたトリスタンは、自分の乗ってきた船を海に放置する。モロルトが理由を訪ねると、トリスタンはこう答える。
「この島に来たのはわれら二人。だが、舟に乗ってもどるのは一人のはず。」
どうだろう?孤島・厳流島で、「小次郎、破れたり!」とまず言葉で前哨戦をしかけた宮本武蔵に似ていないだろうか?

 アーサー王伝説の中に含まれると、ランスロットとギネヴィア王妃の影に隠れてしまいがちだが、トリスタンとイズーもまた、王妃とその夫である王の信頼厚き臣下というカップルだ。男同志の友情を男女の恋愛感情が凌駕し、禁じられた恋路に踏み込む理由として、大概の場合、媚薬が用いられてきた。つまり、媚薬を二人が飲んだ事で、許されぬ恋に落ちてしまったというわけだ。道徳面を厳しく取り締まる教会サイドの制約もあって、さだめし中世時代に付け足されたのだろう。しかしサトクリフはこの説を排し、恋はあくまでも彼等自身の自然な感情によるものとした。そして実際この選択の方が、登場人物達の恋愛感情が生々しい。流行の韓流にも、友情と愛情の板挟みになる、この種の組み合わせは、何度も出てくる。しかし勿論理由に媚薬なんぞ出てこない。それでも人々の共感を得るのは、恋愛とはそもそも理屈で制御できる性質のものではない類いのものである事を、現代人は良く知っているからだ。

 クライマックス、瀕死の床で、必死に身を起こそうとするトリスタン。愛する王妃イズーの乗る船を、一目見んがためである。しかし彼の側には、これまでずっと看病してきたもう一人のイズーがいる。彼を深く愛している妻イズーが。それなのに彼は、自分を愛する人の目の前で、自分が愛する人への愛を見せてしまう。この時のイズーの心中は、察するにあまりある。知っていて、知らないふりをずっとしてきた。それなのに、一番知らせて欲しくない時に、一番知らせて欲しくない人に、一番残酷な形で知らされてしまう。この人は私を愛してなぞいなかった、と。一瞬、ほんの一瞬、今までの愛が、別のものに変わる。その危うさ、その脆さ。

 トリスタンと二人のイズー。皆それぞれに愛しているのに、その愛は、必ず誰かを傷つける。眼前に浮かぶ風景は、美しいどころか、恐ろしい。
でも、人をこんなに変えてしまうものが、愛なのだ。



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最終更新日  April 1, 2017 12:00:14 AM
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February 12, 2017
みなさん、こんばんは。
エリザベス一世はあまりにも有名なイギリス女王ですね。そんな彼女が生涯愛した男性がいました。その人には妻がいて…という実話です。


女王エリザベスと寵臣ウォルター・ローリー(上下)
Lady in Waiting
ロ-ズマリ・サトクリフ

 ケイト・ブランシェットがエリザベス女王を演じた映画『エリザベス』の続編『エリザベス ゴールデンエイジ』。本作の前半は、まさにこの時代を舞台としており、上巻の表紙はヴァージン・クイーン、エリザベスだ。下巻の表紙がウォルター・ローリーならば、内容はてっきり二者の禁断の恋かと思われるが、さにあらず。本書は黄金時代を極めてからまでの英国を縦糸に、もう一人のエリザベスー女王の女官エリザベスとローリーの恋愛物語を横糸に描いた作品であり、原題の『Lady in Waiting』(待つ女)とは、彼の妻となったベスのことだ。

 ウォルター・ローリーは、イケメンで文才もあり、冒険心に燃えている、そして映画に描かれているように女王の寵愛を一身に受ける、とても魅力的な男性だ。そんな男性は、家族との安定した暮らしになど、とどまってなどいない。「ベスを抱きしめながらも、その向こうにあるものをもぎとろうと、手をさしのべ」るローリーは、永遠の夢追いびとで、少年時代夢見た黄金郷(エル・ドラド)を求めて、何度も航海に出る。一方ベスは「楽しみの果実は一時に少しずつ、自分のせいで誰も傷つかないように気づかいながら、そっと優しくもぎとる」控えめなタイプだ。

 だが、彼女はただ大人しいだけの女性ではない。女王陛下の嫉妬を買っても、誰もが恐れるロンドン塔に送られても、ベスはローリーに「あなたの生き方を変えてくれ」とはただの一度も言わず、ひたすら夫を支え続ける。「ローリーがローリーである事」を誰よりも-おそらくは女王よりも-愛し認めていた懐の広い女性だ。彼女がたった一度ローリーを責めるのは、自分の分身である息子を失った時だけだが、そんな時でもお互いへの愛は揺るがない。夢を追う夫を待つ妻、どんなにさまよっても一部は君の元にあると妻に告げる夫。夫婦の数だけ、二人だけにしかわからない愛の形があるのかもしれない、と思わせる、サトクリフ若き日の歴史小説。


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最終更新日  March 24, 2017 10:05:09 PM
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June 25, 2016
みなさん、こんばんは。今日はまさかのイギリスEU離脱にびっくりしました。
誇り高き英国なんですね。円高が進んでどこまで行くのだろうと思いました。
こちらもイギリスが舞台の小説です。

ケルトの白馬
Sun Horse,Moon Horse
ローズマリ・サトクリフ
ほるぷ出版

オックスフォードまでは列車で行ったけれど、そこから30キロ離れたアフィントンには、行った事がない。訳者後書きを読むと、車でしか行かれないような所らしい。ならば、そこを通る観光バスでもあるかと以前集めたパンフレットを見たが、その名はなかった。観光地としてもメジャーではない、辺鄙な所なのだろう。辺鄙。巨大な白馬の地上絵が、二千年もの年月を生き残った理由の第一は、それだろう。交通の便が悪い所には、産業革命の際に工場が建てられる事はない。戦争中の空襲でも、破壊すべき建物もない。しかし、もっと以前の時代、槍や剣を持った武将達は、なぜここに城を作らなかった? それよりも、天変地異は、どうしてこの絵を避けたのか?

 紀元前1世紀頃、イケニ族の族長ティガナンの末息子として生まれたが、先住民の血が流れているしるしの褐色の肌をしている少年、ルブリン。何らかのハンデのために、仲間から疎外される少年は、サトクリフ作品に良く登場する。彼等は大抵の場合、ハンデをものともしない行為によって皆の尊敬を集める。そして、仲間として認められ、真の友情を築く。ところが、ルブリンの場合は違う。狩りをして一人前とされる部族の中で、絵を書く事が好きなルブリンは、自分が本当に好きな絵への想いを、親友で義弟のダラとさえ、共有できない。そして、彼の力量と想いを唯一理解し得た存在は、彼の父や部族を殺した、いわば仇であるアトレバテース族のクラドック。部族の中の『黒い子犬』呼ばわりされていた彼は、戦の後、まずクラドックから部族の代表と見なされる。一方、捕えられた同胞は、ルブリンを敵に寝返った男と見る。敵から受ける尊敬と共感。味方から受ける敵意と軽蔑。時に入れかわる、このねじれた関係が、ルブリンを一層の孤独へと追いやり、そして一方で、かつて見た白馬への想いが純化されてゆく。研ぎすまされた2つの想いが頂点に達するクライマックスに、ルブリンの抱く喜びと悲しみ、二つの思いがぶつかる。

 あ、この力だ。
この力こそが、白馬に命を与えたのだ。

 ただ一頭、力強く前足を大きく踏み出して、どこまでも駆けてゆきそうに見える白馬。自由を得る代わりに孤独を引き受けた馬は、褐色の肌をした少年と逢う。我々の目には見えないけれど、同じ魂を持つ少年と馬は、きっと今もあの緑の丘を、共に駆けているに違いない。



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最終更新日  March 24, 2017 10:07:11 PM
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June 23, 2016
みなさん、こんばんは。選挙始まりましたね。
それにしても舛添さんの出張費凄かったですね。他人のお金だと思ってまあ使い放題だこと。
一般市民とは感覚が違うのでしょうか。

さて、こちらも一般人とは感覚が違う伝説の英雄の話です。

ケルト神話 炎の戦士クーフリン ケルト神話
The Hound of Ulster
ローズマリー・サトクリフ(著者),灰島かり(訳者)


太古のむかし、太陽神ルグとアルスター王の一族の姫デヒテラとのあいだに生まれた少年は、クランの猛犬-クーフリン-と呼ばれる。勇者ぞろいの赤枝戦士団の中で、『アルスターの猛犬』と呼ばれ、
そして「アイルランド一の戦士」とうたわれた彼の辿る数奇な運命。
灰島かり訳。

「黄金の騎士フィン・マックール」と対を成すケルト神話の英雄譚。
少年の頃に運命を予言される事、親友と相争う羽目になる事、人間と神の血を引く事、そして外見は少女と見まごう美しさながら、自分でも持て余す程の凄まじい破壊力を秘めている所は、竹宮恵子さんの
漫画「イズァローン伝説」の主人公・ティオキア王子を思わせる。

 異なる所は、世界全てを相手にするティオキアに対し、舞台がアイルランドに限定される事と、自らの葛藤よりも、仕える王への忠誠心や名誉の方に重きを置く点。ただ、自ら招いた友の死に際しては、彼は唯一身もはりさけんばかりに慟哭する。

 「この娘のせいで多くの戦士が死ぬ」と予言された美女ディアドラの逸話は、王の婚約者に恋するという点で「アーサー王物語」の「トリスタンとイズー」、予言を怖れ、成長するまで他人との接触を断って育つ点ではグリム童話の「眠り姫」、クーフリンが庶子と対決する構図は、後の「アーサー王物語」のアーサーとモルドレッドの関係等々、後の物語への萌芽がいろいろ見て取れた。

 また、キャラクター自体においても、来る日も来る日も一騎討ちを続け、川の浅瀬をたった一人で守り続けるクーフリンの姿は、長坂橋で仁王立ちする「三国志」の張飛と重なり、アルスターと争う強引なメーブ女王は、同じサトクリフ作品の「闇の女王に捧げる歌」の主人公・ブーディカと共通の匂いを持っていた。友との友情、犬、馬などサトクリフ作品お馴染みの要素が登場しても、いつもの、主人公の気持ちに寄り添った読み方はできなかった。それよりも、各地の昔話との繋がりを感じ取りながら、
神話の中の神達のような超越した存在として、遠くから眺めるようなつもりで読んだ。


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最終更新日  March 24, 2017 10:07:23 PM
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