アールヌーボーな壁画に埋め尽くされたロット商会の建物。もともとは鉄鋼を扱う商社だったらしい。今はロットクリスタルというお土産屋になっている。
ティーン聖母教会が見えてきた。ゴシックの尖塔に小尖塔が突き出した独特な屋根のスタイル。小尖塔の先には金色のオーナメントが明るく輝いている。もうすぐ旧市街広場だ。
旧市街広場の旧市庁舎にある天文時計。12使徒像で有名だが、正直、あまりよく見えない。それよりも、路面の石畳が天文時計と呼応したデザインになっているのが面白く思えた。
ヤン・フス像。プロテスタントの宗教指導者、というぐらいのことしか知らなかったが、チェコでは大きな存在のようだ。ホントはこの像を見て、「えっ、フスってドイツ人じゃなくてチェコ人だったの?」と思ったのだが、それは内緒にしておこうっと。ついでに内緒だが、Mizumizuはフランツ・カフカもずっとドイツ人だと思っていだのだ。カフカはチェコで生まれたユダヤ人、そして母語はドイツ語… ううむ、島国の日本人には想像つかない環境だなあ。カフカの小説もまったく理解不能だし…
昔、高校の先生や大学の先生には、カフカフリークみたいな人がわりと珍しくなく存在していた。たいていはサルトルあたりとセットで、ときにはカントなんかに飛び火しつつ、ウザい哲学論を繰り広げていた… というか、うら若い生徒に彼ら自身の「存在に対する思索」なるものを押し付けていた。
今の世の中で哲学は影響力を失ったようにみえる。だが、かつての日本は、哲学が学問として、あるいは人生を生きるうえにおいても、重要な位置を占めている、あるいは少なくとも重要な位置を占めるべきだと考えられている時代が確かにあったのだ。その潮流に乗って――かどうかは知らないが――ドイツ哲学の世界に「逝」ってしまった高校時代の伝説の優等生の先輩もいる。彼はいまごろ何をしているのだろうか。ってたぶん大学の先生だろう。ドイツ哲学の行き場が他にあるとは思えない。